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刹那の風景 第一章  作者: 緑青・薄浅黄
『 椿 : 控えめな優しさ 』 
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『 僕という人間 』

 27年という年月は果たして長いのだろうか短いのだろうか。

子供の頃から病弱だった僕は、今日27年という年月の幕を閉じた。


親しい友人を作ることもなく、

恋人を作ることもなく、

結婚することもなく、

ただゆっくりと死に向かって生きていた僕。


色々と恵まれてはいなかったけれど、家族には恵まれていた。

僕の両親は医者、それも結構有名な病院を経営していた。

きっと僕が健康ならば、僕も医者を目指していただろうと思う。


僕の27年間の部屋は、両親が経営する病院の病室の一室。

僕のためだけに作られた病室、

病院ということで壁紙は白色だったけれど、

部屋の内装は僕の年齢にあわせて変わっていった。


きっと、世間一般の部屋とそう変わらないのではないだろうか?

ただ、そう違うことといえば、僕はその病室から出られないということだけ。


何のために生まれてきたのかとか、

何故、僕がこんな目にあわなければいけないのかとか、

悩んだ時期もあったけれど、

医者の両親が僕を治すことができないという現実に、

深く傷ついているという事に気がついた時、

僕は僕の病気を受け止めることにした。


行って見たいところも、見てみたいものも、

やってみたいこともたくさんあった。

沢山本を読んだし、沢山勉強もした。


治すことを、両親は諦めてなかったから、

僕は治すことを、諦めなかった。

僕ができることは、努力することだけだったから、

僕は僕なりに27年と言う歳月を一生懸命生きたと思う。


だから、父さん、母さん、鏡花、僕は幸せだったんだ。

だから、泣かないでほしい……。

僕は、幸せだったんだから。



読んで頂きありがとうございます。

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2025年3月5日にドラゴンノベルス様より
『刹那の風景6 : 暁 』が刊行されした。
活動報告
詳しくは上記の活動報告を見ていただけると嬉しいです。



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