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刹那の風景 第一章  作者: 緑青・薄浅黄
『 杜若 : 音信 』

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『 風の旅人 』

* サイラス視点

 ラギさんの家の門の前で、2人の少女が手紙を読みながら

淋しそうに肩を落としていた。


余りにも意気消沈している、2人をそれぞれの恋人が優しく慰めていた。


「約束しましたのに……」


そう呟くのは、少女の1人ソフィア。


「酷いよね」


ソフィアの呟きに、エリーが返事を返す。


「仕事なら、仕方が無いよ」


エリーの言葉に、手紙の主をフォローするように

エリーの恋人の、ノリスが声をかけた。


ノリスが、エリーとソフィアから受け取った手紙を

ソフィアの恋人のジョルジュに渡し

手紙に目を通したジョルジュは、俺に手紙を渡した。


手紙の内容は、急な依頼がはいった為に

昨日のうちに、この国を出る事への謝罪が綴られていた。


「それでもさ、ちょっと顔をみせてくれたらよかったのに」


エリーが、最後に会えなかった不満を口にする。


「……」


ノリスも、エリーと同じ事を思っていたのか口ごもってしまう。


「……もう逢えないんでしょうか」


ソフィアが、顔を俯けて言った言葉に

エリーも、顔を俯けてしまった。


そんな2人の様子に、かける言葉が見つからないのか

ジョルジュもノリスもため息を落とす。

最後に会えなかった事を、淋しいと感じているのは2人だけではないのだ。


「サイラス……」


ジョルジュが俺を呼ぶ。

その目は、俺の事を心配しているような気配がうかがえた。


この中で、一番セツナに世話になったのが俺なのだ。

俺は、ジョルジュの呼びかけには答えず空を見上げた。


この手紙の主の、セツナは旅を目的としている。

仕事も冒険者だ、俺達……騎士の仕事も危険と隣り合わせだが

冒険者というのは、それ以上に危険が付きまとう。


旅にしても、徒歩で道中には魔物も出る。

絶対また逢えるかと問われれば、わからないと答えるしかないのだ。


だが……。

だけど……。


あいつは、セツナは異質だ。そこら辺の冒険者と同じではない。

沈んだ空気の中、俺が軽く笑ったのに気がついたのか4人の視線が俺に向けられた。


「逢えるに決まってるだろう?」


俺は、確信に満ちた目で4人を見回し答える。


「あいつは……セツナは強い。

 簡単には、死なないだろうし……それに」


「それに?」


ジョルジュが、先を促す。

俺は、4人の後ろの家に視線をやり


「あいつ等の家は、ここだろう?

 ここに戻ってくるに、決まってる」


俺の言葉に、ソフィアとエリーが目を丸くして

そして、納得したように微笑んだ。


「だから、辛気臭くなる必要はねぇし

 別れを惜しむ必要もねぇよ。ちょっと出かけただけだからな」


全員が、ラギさんがセツナとアルトの為に残した家を見て

口々に、肯定の言葉を告げた。


ノリスがエリーを促し、馬車に乗り

ジョルジュが、自分の馬にソフィアを乗せて歩き出す。


俺は……セツナとアルトの旅の無事を祈りながら

その後を、ゆっくりと付いて行った。


1度だけ、馬を止め後ろを振り返る。


「俺はまだ、報酬をお前に渡してないんだから

 取りに来いよな……セツナ」


俺の呟きに、風がそっと俺の隣を通っていった。

なんとなくだが、俺の言葉がセツナに届いたんじゃないかと感じた。




読んでいただき有難うございます。


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僕達の小説を読んでいただき、また応援いただきありがとうございます。
2025年3月5日にドラゴンノベルス様より
『刹那の風景6 : 暁 』が刊行されした。
活動報告
詳しくは上記の活動報告を見ていただけると嬉しいです。



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