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第一章 揺らぎの楽園 【四節】つかの間の休息

やっほ!!

ミヤから村人が洞窟に避難していることを聞き、その洞窟へと向かう。


「そういえば精霊術師ってなんなの?」


「神様なのにそんなことも知らないの? まぁ、冒険者の中でも珍しいから知らなくても当然ね」


ミヤは肩をすくめながらも、どこか嬉しそうに微笑んだ。

彼女の歩く速度は早く、迷いがない。どうやら避難先の洞窟はよく知っている場所らしい。


「精霊術師っていうのは、自然に宿る“精霊”と契約して、その力を借りる人のことよ。

火、水、風、土、それに希少な精霊系統まで多種多様。私は火と風精霊と縁があってね」


「精霊と契約……なるほど。」


この世界の自然を司っている精霊と、契約を通して力を借り受ける存在か…


「借りているだけであれだけの力を振るえるなんて、すごいと思うよ」


「ふふ、ありがと。でも精霊たちも気まぐれで……ちゃんと心を通わせないと、力を貸してくれなかったりもするの。

だから、精霊術師って“祈る”ことと“聴く”ことの両方が大事なのよ」


そう語るミヤの横顔は、戦っていた時とは変わって柔らかさがあった。


そうして会話を交わしながら小道を抜け、林を越えたところで、山肌にぽっかりと口を開けた洞窟が現れた。入口の周囲には

小さな石碑や祈祷札のようなものが散見される。どうやらここは元々、村の祈りの場であり、非常時の避難場所でもあったらしい。


「中に人の気配がある」


エレユオが目を細めて告げると、ミヤが前に出て声を張った。


「皆ー!もう大丈夫よ!魔獣は全部倒したわ!」


その声が洞窟の奥へと反響して消えていく。しばらくの静寂の後、数人の村人がおそるおそる姿を見せた。

洞窟の中には老人や女性に子どもばかりで、大人の男性の姿が見えなかった。


「ミヤさん……ご無事で……!」


村人たちは次々と洞窟の中から現れ、口々に礼を述べる。


「所でそちらの方々は?」


「こっちの白いのがシナユリで、黒い方がエレユオ。危ないところを助けてくれて、魔獣退治を手伝ってくれたの。」


そういうと一人の老婆がシナユリに近づき、その手を取り、


「お嬢さん、本当にありがとう……どこのどなたか存じませんが助かりました」


「……いえ。私は、ただやれることをしただけよ」


そのシナユリの言葉を聞き、嬉しそうに老婆は笑った。


**


その後、村人たちと共に村へ戻ることとなった。

その道中で話を聞くと、戦える大人の男性がいなかったのは、ちょうど村を離れていたからだそう。

壊れた家々の修繕にはまだ時間がかかるが、住める家もいくつか残っており、彼らはそこへ再び住まうことにした。


陽が傾き始め、村に静けさが戻った頃。

ミヤと中年の女性がこちらに向かって歩いてくる。


「旅の方、もう遅いし、一晩くらい泊まっていってよ。お礼くらいさせておくれ」


ミヤと共に歩いていた中年の女性――村の世話役らしい人物が、そう申し出てくれた。


「じゃあ、遠慮なく。今夜だけ、お世話になります」


「客室のある建物は無事なはずだから、ミヤさん案内お願いできる?」


「うん、任せて」


ミヤに案内される。


「ここは昔、巡礼者たちのために建てられたらしんだけど、今は客人用として私も使っているのよ」


木の扉を開けて中に入ると、柔らかな藁の香りと、差し込む夕陽の橙色が部屋を包んでいた。


「……やっぱり、この世界にはまだ“あたたかさ”があるんだね」


エレユオは無言でうなずき、ミヤは戸口にもたれかかりながら、ふっと笑った。


「そういえば二人は何をしに、この辺りまで来たの?」


そういうとミヤは疑問を問いかけてくる。


「この世界の異変を追っている。確信はないけど粒子になって消えていった魔獣も、その影響で生まれたものだと思ってる。」


「つまり、そういった異変?を追いかけて旅をしているってこと?」


「まぁそうだね。」


ミヤはシナユリの答えを聞くと、腕を組んで少し考える素振りを見せた。


「なるほどね……確かに、あの魔獣はよくいる個体とは様子が違うって、私も感じた」


彼女の声は少し低く、真剣だった。


「それに精霊たちも、あの存在には怯えている感じだった、そんなこと今まで一度もなかった。」


どうやらミヤもこの世界の自然そのものである精霊を通じて、異変を感じ取っていたようだった。


「これは、ただの魔獣騒動じゃない。何かもっと、大きな流れが動いてる気がする。よかったら一緒に行っていい? 私も何が起きてるのか確かめたいの。」


その言葉を聞き私は思う。

確かに、この世界についての情報は欲しい。だけど…… ミヤの同行するという発言に悩んでいると、


「良いのではないでしょうか?確かに危険な旅路ではありますが、彼女は精霊術に精通しているようなので、そこは問題にならないでしょう」


「でも……」


「精霊達を脅かす存在を放ってはおけないよ」


ミヤの声は揺るがなかった。


「危険かもしれないよ。」


私がそう言うと、ミヤは肩をすくめて笑った。


「危険のない旅なんてないわよ」


シナユリはその言葉を聞いて、目を伏せた。


「……分かった。私たちでよければ、歓迎するよ」


そう言うと、ミヤはようやく安心したように、頬をほころばせた。


「よし、じゃあ決まりね。明日から、よろしくお願いするわ。神さま!」


「……ふふ、そうね、これからよろしく」


神様扱いか… まだ慣れないな


三人の笑い声が、静かな客室にそっと響いた。

また気が向いたら更新するよー

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