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第一章 揺らぎの楽園 【三節】出会いの少女

やほー!

爆発音のした方向に駆けるシナユリとエレユオ。

進むにつれて崩れた民家が目立つようになり、視界が開けた広場にその少女は、いた。


淡い紫のローブをまとい、肩まで伸びた焦げ茶の髪を乱したその少女。

少女の周りには2体、鋭い牙と赤い体毛が特徴的な大きな獣が転がっていた。


「……あと二体。みんな、もう少しもってよね!」


少女がそう言うとその周りに光が集まる

それとほぼ同時に家々の影から赤い獣が―――魔獣が姿を現す。


少女の腕から光が放たれ、紫の炎が魔獣に炸裂した。

その攻撃は一体の魔獣に直撃するが、致命傷には至らなかったのか、呻くような声を上げながら立ち上がり、

その血に濡れた牙を剥き出しにして、猛々しく跳躍した。


「くっ……間に合わな――」


「エレユオ!」


「お任せを」


声が響く。風が唸り、銀の閃光が魔獣の脇腹を貫いた。


ザシュッ!


そのまま斜めに斬りあげ、魔獣は空中で体勢を崩し、少女の手前に激突して土煙を巻き上げ動かなくなった。


「大丈夫?」


「ええ、大丈夫よ。ありがとう」


その声を聞きシナユリは弓を創造しようと手を前に掲げる、その瞬間手から光があふれる。

しかしその光が収束することはなく、そのまま散っていってしまった。

その光景にシナユリは顔をしかめる。

もう一度同じことをするが光が形を取ることは、なかった。


「何故!?また……?」


その隙に魔獣が襲い来るが、それをエレユオは難無く光の刃で受け止め、そのまま力任せに押し返しバランスを失った魔獣を

エレユオの剣が雷のような音を放ち、引き裂いた。


「シナユリ様どうされましたか?」


「創造ができない…」


私の創造の力は、生命以外なら基本的に創造できるはずなのに…いったいなぜ?

その原因を探ろうと思考するがそこである事を思い出した手を前に突き出す。

そうすると空中に、白銀の剣は現れた。それを確認したシナユリは落ちつきを取り戻した。

そのタイミングで少女が声をかけてくる。


「あの…助けてくれてありがとう!でもこの先にもう一体大きな奴がいるの、手伝ってくれる?」


「分かった。乗り掛かった舟だし…手伝うよ」


「御心のままに」


「ありがとう!案内するからついてきて。」


少女が先行し、その後に続いて行く道すがら、シナユリはエレユオに耳打ちする。


「どうやら神技じんぎは扱えるけど、創造の力に不具合があるのか、発動できな――」


いや発動できないとは違う。発動した感覚はあった、どちらかというと……


「初期化された?」


一つの可能性が頭をよぎる。


「あれよ」


そう考えていたところに少女が止まった所で思考を戻す。

指をさされた方向をみると、先程の魔獣より一回り大きな魔獣がいた。


「私が先行するから援護をお願い」


「分かった」


そう返事をすると少女は茂みから飛び出して巨大な魔獣に向かい


「風精ノ契印(ふうせい の けいいん)!」


少女の体の周りで風が巻き上がり目に見えて速度が加速する

そのままの勢いで魔獣の上に飛び上がると顔めがけて手を伸ばし


風刃ふうじん


そう声を上げた少女の手から、風の刃が魔獣を襲い魔獣に大きな傷がつくが、その傷が黒い煙に包まれて回復していく。


「うそ!?」


少女は驚きの声を上げる。刹那、図体からは想像できない俊敏な動きで少女めがけて爪を振り下ろそうとするが、


飛光陣ひこうじん!!」


シナユリの足元から白い光が広がる。

瞬時に構築される創造の魔法陣。そこから生み出されたのは、純白の矢の嵐だった。

放たれた矢が無数に空を裂き、魔獣の身体に突き刺さる。

その攻撃を受け魔獣は体勢を崩す。その隙を逃さず、

エレユオが光の剣をその手に顕現させて首を水平に切り落とす。


そのまま魔獣は静かに地面に倒れた。だが先程の魔獣達と違い

黒い粒子となり消えていった。

その光景に違和感を覚える。


「ありがとう、貴方たち強いのね!私はミヤっていうの、精霊術師よ!」


「私はシナユリ。まぁ神様みたいなものね。でこの子がエレユオ。私の従者よ」


「以後お見知りおきを」


「神様…? 胡散臭いけどまぁいいわ、よろしくね」


そう微笑みとともに差し出された手を握り返した。

創造世界での初めての出会いに新たな旅の幕が上がろうとしていた――

読んでいただき、ありがとうございます。


また次の更新の時に会いましょう

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