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プロローグ

 荒れた大地に巨大な怪物がいた。その見た目を形容することは難しく、あえて言うなら異形の存在。この世界では“魔獣”と呼ばれる(たぐい)である。

 そこに5人の人影が見えた。その中から1人の男が先陣を切らんとして、飛び出してきた。その男はSランクパーティ『グラディウス』のリーダー、ユリウスであり、重厚な鎧に身を包み、長く鋭利な剣を携えている。


「どりゃあ!」


 掛け声とともにユリウスが怪物に向けて剣を振る──しかし、空振りに終わった。

 ユリウスが唖然とするその隙に怪物が腕を振りかぶる。瞬間、轟音が鳴り響いた。怪物の攻撃がユリウスに命中したのだ。その攻撃はあまりに強力で、仲間たちのいる後方まで吹き飛んだ。


「いってえ……んだよアイツ、クソッ!」

「落ち着けユリウス! まずは治療だ」


 激情し、正常な判断が出来なくなっているユリウスを、ハンマーを持った戦士のカニスが制止しようとする。


「そうよ、死んだら元も子もない! ヘレナ、早く治癒魔法!」

「は、はい! 【3級治(テルティア・)療魔法(クラティオ)】」


 それに便乗する形でペルムが治癒魔法を使用できるヘレナを急かす、その時だった。岩。一同の目の前には巨大な岩石があった。おそらく魔獣が投擲したものだろう。


「【打ち砕く者(コンテレンド・サクサ)】!」


 カニスが魔法を用い、ハンマーに特殊な力を乗せて岩を打ち砕く。そうして砕け散った岩で体を隠しながら、魔獣が急激に接近する。瞬時にユリウスが相手取ろうとするが、治癒がまだ完全ではなく、立ち向かおうにもできなかった。

 そこに、パーティの旅路を記録し宣伝する〈記録者(レコルダン)〉のイザヤ・クロウが現れる。

 記録者(レコルダン)であるクロウは、ユリウスのプライドから戦うことを禁じられていた。しかし、この危険な状況を見過ごせず、戦おうとしてしまう。


「オレが行く!」


 そう叫ぶクロウは手に何か持っていた。一言で言えば、剣。ただ、それはあまりに玲瓏(れいろう)で、銀湾(ぎんわん)の様相を呈しており、とても武器のようには見えなかった。

 クロウは剣尖を左に向け、右手をその陰に隠す構えを取る。


「なにやってんだ!  お前は引っ込んでろ!」


 治療が終わったユリウスがクロウに怒号を浴びせ、蹴飛ばす。

 最初先陣を切った時とは比べ物にならない気迫を見せ、ユリウスが突撃する。その後にカニスも続く。が、それも空しく、最初と同じように2人とも吹き飛ばされる。


「もうダメ! ここは引くわよ! 【残された逃げ道(フガ・リミタタ)】!」


 ペルムがこの様子を見かねて、転送魔法を使用した。


 ───


 転送先に設定していた冒険者ギルドで治療を済ませた一同は、1階のホールに集合していた。面々の顔は暗く、ユリウスに至っては苛立ちを微塵も隠せていない。

 そんなユリウスが場の静寂を切り裂くように、一言放った。


「クロウ、お前パーティ抜けろ」

「は?」

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