表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

ep1

サイン会場には、熱気を帯びた空気が渦巻いていた。

机の前に座る私のもとへ、ひとりの少女が駆け寄ってくる。


「愛ちゃん! 愛ちゃん大好きです。応援してます!」


まっすぐで、何の汚れも知らない目。

その視線に真正面から向き合うと、胸の奥が少しだけざわつく。


差し出された両手を握ると、私は自然と微笑んでいた。


「ありがとう」


少女の瞳は潤んでいて、私だけを見つめてくる。


「永遠に好きでいるからね」


——永遠。


その言葉が胸のど真ん中を刺す。

笑おうとしたのに、口元がひきつった。


「う、うん……ありがとう」


ちゃんと笑えていたかな。

分からない。きっと、ひどい顔をしてた。


永遠なんてもの、あるわけない。

心の中でそう呟く。


いつかこの子も、私を好きじゃなくなる。

そんなの決まってる。


――あの日からだ。私は、人を信じるのをやめた。



今から3年前。


「俺、愛のことを大事に思ってる、大切にする。これからも永遠に」


彼はそんな言葉を囁いて、ベッドの上で私の頬に触れた。


「ありがとう。私もずっと好きでいるね」


そう返した瞬間、唇が重なった。


——真実の愛って、本当に一生続くんだ。

あの時は、疑いもなくそう信じていた。


『人気男性アイドルグループdanger13のメンバー・田中大和容疑者が、覚醒剤取締法違反の疑いで逮捕されました。交際相手Aさんによる告発で発覚した模様です。』


永遠を口にした彼は、何も言わずに私の前から消えた。


私は言葉を失い、その場で固まったまま動けなかった。



「はっ——」


私はベッドの上で跳ね起きた。

荒い呼吸が胸を揺らす。


「……夢、か」


あの日の光景は、いまだに私の脳内から消えてくれない。


——私はもう、恋なんてしない。

どうせ裏切られる。信じられるのは音楽だけ。

今も、昔も。


ずっとそう思っていたのに。


彼がもう一度、私の前に現れるなんて——

この時の私は、これっぽっちも想像していなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ