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あなたはいないけれど‥‥僕は、君たちの傍にいるよ

 

 家の階下から、車のクラクションの音が響く。

母さんが「岬、秋田のおばさん来たわよ。顔を見せてくれるようになって本当によかったわ。慌てないで、慎重に動いてね」と教科書や何やら入ったカバンを持って、先に父と母は車に積んでくれている。林二がいなくなってから、秋田のおばさんとは疎遠になっていたので、父さんも交えてお互いの近況報告をしている。

「おはよう、岬ちゃんちょっとみない間に少しお腹大きくなったわね」と林二の母はうれしそうに見つめる。

母さんと父さんが車を見送ってくれて、運転席のおばさんはのアクセルを踏む。



少し経ってから、おばさんは話だした。

「私ねあの頃、夫に浮気されて離婚された時とても腹が立っていたし悔しかったの。

でも林二が岬ちゃんのおかげで、2人とも一緒の大学に受かった時に夫を見返した気がした。夫なんていなくても、立派に私たち生活していけるわって。なのにそれからしばらくして、交通事故で林二がいなくなって取り残された私が全部悪い気がしてた。もう生きてることさえつらくなっていた。

あなたの気持ちも、分かってあげる余裕もなかった。

でもあなたのお腹に林二の子が授かっているってことがわかって、大学に臨月まで通い続けるって聞いて一番大変な岬ちゃんが、こんなに頑張っているのに私がこんなんでどうするの?って。少しでも力になれたらとおもって運転手をかってでたのよ。迷惑でなければいいけど」


「そんな、迷惑だなんてとても助かっています。私だって、今だに彼がいないことが信じられなくて。でもお腹の子は順調に育っているし、とにかく目の前のことを一生懸命やるしかないんだって自分に言い聞かせています」

林二が言った言葉‥恋人になって夫婦になって家族になりたいって言ってたのに、肝心のお父さんがこの子を見る前に逝ってしまうなんて‥二人共今までに泣きつくしたはずなのに、また涙が溢れてきていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


(君たちにはみえないけれど、僕はここにいるんだよ)林二は、後部座席の岬の隣にいた。そして、2人の会話を聞いて寂しく微笑む。


僕は、交通事故で死んでから俗に言われている幽霊になった。あまりにも急すぎて理解できなかったため、ずっと岬や母のいる場所から離れられなかった。あれからずっと悲しかったし、寂しかったよ。

何よりも、こんなに近くにいても自分の想いが届かないことが。


僕たちの子供、僕の林二のりんをとって凜と名付けたんだね。きっと、君に似てかわいい娘になるだろうね。ずっと、心配だったんだ。あの頃は、岬も僕の後を追って死ぬことばかりを考えていただろう。母さんだって、自分をせめてばかりいて。こんな2人をとてもじゃないけど残していけなかったんだ。


家の中に籠って泣いてばかりいたのが、日が経つにつれ外出できるようになり周囲の人とも少しずつ会話をするようになったね。岬も、大学に通うんだよね。身重の身体で。

母さんだって、岬の大学の送り向かいや近所のパートの仕事も少し入れたんだろう。

君たちは、逞しいね。

僕は君たちと過ごせて本当に幸せだったよ。できるならもっと、もっと一緒にいたかった‥‥。それが叶わないなら、せめて遠くからでも君たちを見守っているよ。

今までたくさんの愛をありがとう。母さん、岬、岬の家族達。

だから‥‥。僕もそろそろ僕の居場所へ行こうと思うんだ。
















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