隣の幼馴染
雛野 岬はいつものように学校から帰ると2階にある自分の部屋に駆け上がり、鞄を床に放り投げてベットに身体をダイブさせる。ああーこの疲労感を優しく包み込んでくれる羽毛布団。
このまま、布団の温かさにうとうととしかけた時‥いつもの声がする。
「岬ー、帰ったんだろう?」その声を遮るように、毛布を頭からかぶるようにして深く潜る。このまま無視をしたら諦めてくれる?いや、そんなやわな奴ではなかった。
「おい、いるんだろう。」また呼んでいる。もう、たまには勘弁してよ。分譲住宅の隣の近さったら最悪。
幼馴染の秋田 林二とは生まれた時からの付き合い。というのも親同士がとても仲がいいので、兄弟のように育った仲なのである。幼稚園、小中学校と一緒で高校は別々になったものの、お互い帰宅部ということもあり頻繁に部屋を行き来する仲。
窓を勢いよく開けて「たまにはほっといて。私これから寝るから」といいすて、次の言葉も聞かずにカーテンを閉める。
だけど‥ベットに目がいくが目が冴えてきて眠れない。それに制服のままだということに気が付き着替える。
今日、学校での親友の井上 カノンとの会話を思い出す。
「今年もバレンタインが近いというのに相変わらず、彼氏なしだあ」カノンが学食のうどんを食べながらいう。
「本当だよね。その日は二人でウィンドウショッピングでもする?」
「なあに言ってんのよ。岬は幼馴染みの彼がいるじゃない」
「えっ、林二 ?!何度もいったけどお互い生まれた時から近くにいすぎて、兄弟みたいなものだよ」
「林二くんだっけ、彼の方は案外そうでもないかもよ」と言うとからかうような表情になる。
「いやー、流石にないない」林二のとぼけた顔が浮かぶ。
制服をハンガーにかけながら(そもそも、林二が近くにいるから彼ができないのかも)さっき冷たく突き放したのも、その会話の余韻がどことなく残っていたからだ。