1.渡る世界は鬼ばかり -上-
「おめでとうございます、貴方達は勇者に選ばれました。」
異世界転移や異世界転生───。
テンプレートに従えばチートと呼ばれる能力を身につけ、その力を自在に振るい、世界を救って幸せをその手に掴む。
そんな話は元の世界では当然よく耳にした。
自分の棲んでいた界隈ではもう廃れ始めた文化であったが。
田端 聡司───。
モテ期が来たのは幼稚園生、冴えない見た目にやる気のない雰囲気、その見た目や雰囲気相応の内面をもつ俺。
さて、そんな現役進学高校2年生趣味はゲームで嫌いなことは有酸素運動と面倒事と自分達を的にふざけて攻撃をしてくる陽キャ、このようなザ・チー牛を体現した俺は。
現在見知らぬ人間と共に同じ小部屋に知らぬ間に集められ、現実では聞きえない常套句を浴びせられた俺は。
絶句して、固まることしか出来なかった。
その後、状況が少し進展した。
まず我々は俗に言う異世界なる場所に召喚されたらしい。
たまたま居合わせた、というか召喚された女子高生が「え、召喚って何?」と咄嗟に聞いたがために理解はできるが納得はできない召喚の過程を教えてもらった。
この世界を含め全ての世界には神が存在するらしい。
いきなり形而上学的な話を出されて理解を拒む自分がいたが強引に理解した。
『神』と呼ばれる概念的な存在が少なくとも存在していることは事実であるらしい。
そして世界の外側にも同様に神(笑)が存在するらしい。
そしてその神達は簡単な話椅子取りゲームをしているらしい。
結構脳筋な感じで。
世界の玉座に鎮座する神をその外側の神が引きずり下ろしてその席に座る、地獄みたいでかつパワープレイな椅子取りゲーム。
その外側の神は不定期で使徒を世界に放つらしい。
それが唯一できる外側の神の世界に対する干渉と言われている。
そしてその使徒が神の玉座たる『神核玉』なる球を侵蝕すると神が入れ替わるらしい。
そしてその世界自体がリセットされ、GAME OVERだそうだ。
では世界の神は外側の神に抵抗するために何をするのか。
自分の力を分け与えた存在を強引に用意するのだ。
ここで問題となるのは、その世界にいる生命は神との親和性が高すぎるが故に、神の力を受容すると生物という神の手に終える存在を超えてしまうということである。
結果として神はほかの世界の生物を借りパクして自分の使徒にすると言う通り魔的で迷惑極まりない召喚のプログラムを作り、神託を下す。
結果としてそれに巻き込まれたのが俺であり、この周りの連中だ。
ふざけんなよマジで。
確認した限り俺と一緒に巻き込まれたのは俺を含めて5人。
各々つい先程言われた内容を咀嚼するのがやっとの顔のものもいれば、理解を諦めたような顔の奴もいる。
なんなら見知った顔のヤツも1人混じってやがる。
「というわけで、皆様にはこれから勇者としてこの世界を守っていただきたいのです。」
えぇ…。
絶対しんどいじゃんそれ…。
というわけで絶対働きたくないです。
「そっか、世界が危ないんだもんね。
わかった、協力するよ。」
「そうですね。」
「なんか面白そう!」
「どうにかするしかないかぁ。」
なんで皆さん乗り気なんですかね。(震え声)
「ソッ、ソウダネ。」
ほらぁ!同調圧力って良くない!
というわけで、俺の絶望的な勇者ライフが今幕を上げる───ッ!