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Worldend Odyssey  作者: 奈良 早香子
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第六章 ゴーダの丘

第六章 ゴーダの丘



「ここから見える景色は、本当はもっと美しかったのでしょうね。」

 ゴーダの丘からアガートの王都を見下ろしながらリエラは最初にそう呟いた。

 アガートの王城から飛び降りたリエラとディーンは、特に怪我をすることもなく地上に着地した。リエラが空中でディーンを抱え、自身に衝撃を与えない魔法をかけたためだった。

 王城の上半分が吹き飛ばされたと知った王城内外の人々はこぞって場外へと走り出しており、リエラとディーンもその混乱に紛れて王城を後にした。

 ゴーダの丘はアガートの王城を眼下に望む場所で、丘というよりも崖に近く、特に夜景が有名だった。

 しかし今は夕方で、アガートの王城は半壊し、火の手が上がっていた。リエラが王城の一部を爆発させた時に何かしらの物資に引火して燃え広がったらしい。夕日の色と炎の色とが重なり合い、お互いをより強く燃え上がらせているかのようだった。

 城の兵士たちは崩壊寸前の城からの避難誘導以外にも消火活動までしなければならなくなっており、ディーンとリエラを追う余裕などないに等しいだろうと思われた。もっとも、あれだけのリエラの破壊活動を見て、なおもリエラを捕らえたり殺したりすることは、もうアガートにはないとも思われた。王城でどれだけの人が生き残ったのかはわからないが、たとえ王が生きていたとしても、戦争を起こす余裕など消滅してしまっている。実質、アガートもまた神の巫女から手を引いたと考えてよさそうだった。

 火の手は城下町にも広がりそうな勢いを見せており、ゴーダの丘に元々いた人たちの中で城下町に住む者は自宅などの無事を確認するために街へと帰っていく姿が見て取れた。城下町に住んではいないだろう観光客たちは、丘の上から崩壊していくアガート城を見つめながら口々に今アガート城で何が起こっているのかを推測し合っていた。

 もう少し時間を置けば、城下町から避難してくる人たちでゴーダの丘はごった返してしまうだろうが、今は混乱が起き始めたばかりで人の数もさほど多くなく、リエラとディーンを気に止める人はいなかった。

「ここから見える夜景が、アガートで最も有名な景色だった。実際俺は見たことがなかったが、城と街並みが光の海のように見えたらしい。」

「でも、もう見られないのですよね。すべて私のせいですけれど。」

 ディーンの過去形での言い回しに気付いて、リエラは小さく呟いた。

 夜景ではなくとも、ゴーダの丘から見えるアガートの王城と城下町は、それはそれで美しいはずだった。ゴーダの丘から見下ろしてみれば、アガートの王城は大きな森の中に浮かぶ島のようで、いつまでも眺めていたいと思わせるような、そんな魅力を持っていると認識できるはずだった。しかし、それが今は見る影もない。

 このまま日が沈めばゴーダの丘から夜景を見ることは出来るが、そこに炎が広がってはいても、光が広がることはない。リエラが見たいと望んだ景色が表れることは、もうない。

「アガート城でも話したが、リエラにそうさせたのは俺のせいでもある。俺が単純な敵の罠にかかって捕らえられたせいだ。俺の中に驕りがあった。」

 そう前振りをして、ディーンはなぜ自分がアガート城の地下牢に捕らえられることになったのかをリエラに語った。ルルのこと、婚約指輪のこと、死に別れたけれど遺体を確認出来なかったこと、全てを。

 リエラは黙ってディーンの話を聞いた。

「この指輪1つに惑わされた。断ち切ったつもりで、断ち切れていなかった。」

 全てを話し終えたディーンは、ポケットにしまっていた、鎖が通された指輪を取り出した。

 夕日に照らされて、鎖の先で揺れる指輪が一瞬キラリと光る。

 ディーンはそれを再び手に握り込むと、力の限り握りつぶした。もう2度と、誰かの指が穴を通ることがないように。そして、鎖も両手で引き千切った。もう2度、誰かの首にかかることがないように。

 ディーンはそれを眼下の森に向かって力の限り遠くへ向けて投げた。

「よかったのですか?」

 ディーンの話が終わった後、リエラは少し寂しそうな表情で言葉を口にした。

「ああ。俺の手に戻ってきたときに、こうしていればよかった。たとえ偽物でも、本物だったとしても。結局、ルルがもうこの世界にいないことを思い知らされただけだった。もう、忘れるべきだ。」

「私に恋人がいたことはありません。でも、親しかった誰かを亡くす痛みなら少しわかります。忘れるのではなく、思いを継ぐとか、きちんと弔うとか、何かの区切りを付ければいいのではないのでしょうか。」

 実際にリエラはそうしたことがあるのだろう、とディーンは感じ取った。

 もしかしたらこの旅そのものがリエラの言う区切りとしてのものなのではないか、とも思ったが、ディーンはまず自分の区切りをつけるべきだと判断して、リエラに聞き返すことを止め、自分に向けての区切りの言葉を口にする。

「そうだな……指輪を捨てたことが、区切りになるのかもしれないな。」

「ディーンのことを旅の中でいろいろ聞きましたけれど、確かに過去に恋人がいたとは言っていましたね。私も、もう少し気にかけるべきでした。過去の恋人ならディーンの弱点にはなりえないだろうと、そう判断してしまったのは早計でした。」

 リエラが気に病む必要はないのに、とディーンは思ったが、それを口にはしなかった。

 そうさせてしまうほど用意された罠は単純で、引っかかった自分の愚かさが悔やまれたから。

「今考えれば、あの時の俺は迂闊すぎた。7年間見つけられなかったルルに贈った指輪を見て、真相を確かめずにはいられなくなってしまった。本来なら、呼び出しの手紙を受け取った時点でリエラに相談すべきだった。ただ、敵の罠にかかることはないと思っていたし、たとえ罠にかかったとしても、リエラは俺を無視して先に進むとも心のどこかで思っていた。俺がリエラの人質になり得るだけの価値があるとは考えていなかった。

 ……教えてくれないか。なぜ俺を見捨てなかった?」

 それは、旅が始まってから初めてディーンが口にした旅の真相に迫る質問だった。

 本来、任務を受けた者が任務に対する疑問を持ってはならないし、質問もしてはならない。けれど、これは知らなければならないことだとディーンは判断した。リエラがディーンをどう認識しているのか、知っておく必要がある、と。

 ディーンにとってリエラは護衛対象のはずだったが、実際ディーンがリエラを守ったこは皆無だった。リエラと初めて会ったときに告げられたディーンを旅の同行者として選んだ理由、それが建前でしかなかったことはもう明らかだった。

 では、リエラはなぜディーンを旅の同行者として選び、その命を守ろうとしたのか。

 旅の終わりは近い。主だった敵はもう現れない。何も知らないまま任務を終わらせることも出来る。

 けれど、ディーンの気持ちとして、何も知らないまま旅を終わらせることはもう出来なかった。

「そうですね……今が話すときかもしれないですね。ディーンと旅をするためにいろんな建前を用意しましたけれど、それはもう通用しないですものね。」

 旅立つ直前、リエラは旅の共に自らがディーンを指名したと言っていた。

 あの場で伝えられた事実の中で真実だったのは、おそらくこれだけだった。

 他に伝えられた事は全てリエラとディーンが2人で旅をするための、それらしい理由が付けられただけのものでしかなかった。違和感だらけの任務は、隠された目的を達するために様々なものが歪められた結果だった。

「教会の騎士団にフロウという騎士がいたのをご存知ですか?」

 リエラが開口一番に語ったのは質問だった。

 ディーンはリエラの口から出た初めての自分以外の固有名詞であるフロウについて考えたが、思い当たる人物はいなかった。

「いや……知らない。少なくとも俺の部下にはいない。いたこともなかった。他の部隊となると、顔も知らない者の方が多い。」

「多分そうだと思っていました。フロウ自身、ディーンと面識がないと言っていましたし、旅の途中でディーンに騎士団のことをいろいろ聞きましたけれど、フロウと接点はなさそうでしたし。フロウは第6部隊の騎士団員でした。」

「第6部隊?……ということは、1年前の大戦の時の……」

「ここまで言えば察しがつきますよね。フロウは、私が、殺した人です。」

 第6部隊は1年前の大戦の時、戦場に赴いく神の巫女の護衛を担当していた。前線に辿り着いたリエラによって大魔法が放たれアガートとモルスの両軍に多大な犠牲者が出ると同時に、神の巫女の護衛を担当していた第6部隊の30名の騎士団員もまた犠牲になった。

 第5次アガート・モルス大戦の最前線だったロム平原でリエラが放った大魔法の後に生き残った者はリエラを除いて誰一人としていなかった。ロム平原が焼け野原となり、そこでただ1人立ち尽くしていたリエラを後に派遣された騎士団の別部隊が教会まで移送してきたという。

 それがディーンの知っている大戦の結末だった。

「1年前にアガートがモルスに戦いを仕掛け、戦争が始まってすぐ、神託が降りました。神の巫女の力をもって戦いを収束せよ、と。教会本部から前線までは馬車で2日。私はその時初めて教会の外へ出ました。短い期間であっても、辿り着く場所が戦場であっても、私の心は踊っていました。教会の中では窓のない部屋で、身の回りの世話をしてくれるシスター数人としかほぼ交流がなかったので、外に出られることと護衛をする騎士団員の誰かと話が出来ることがとても楽しみでした。

 実際、外に出たところで前線に辿り着くまで馬車から降りることは禁じられていましたし、同乗する誰かはいなかったのですけれど、馬車の窓に並走する騎士団員が見えました。それが、フロウでした。

 フロウは髪色が少し濃い緑色だったので、魔法で会話ができると思って話しかけました。基本的に魔法で離れた相手の声を拾うことは難しいのですけれど、互いに風の属性魔法が使えて短い距離であれば会話ができます。フロウは私の声に応えてくれました。」

 護衛の騎士団員は神の巫女と言葉を交わしてはならないと通達されていたはずだった。

 フロウという騎士団員がそれを破ったのだとしたら、おそらくは入団したばかりの若い騎士だったのだろう、とディーンは想像した。

 神の巫女の護衛を任された第6部隊の中で、実際その任に就いたのは立候補制だったという。古い騎士団員ならば立候補制であるということは死ぬ危険性があると察するが、若い騎士ならば手柄を立てる機会だと判断したのかもしれない。

「フロウとは外の世界についていろいろな話をしました。フロウは騎士団に入る前は世界を巡る冒険者のようなことをしていたそうです。国を問わず美しい景色を見て回っていたのだ、と。親が資産家で教会に対して多額の寄付をしていたので、アガートやモルスに行くための通行証も発行してもらえて、そのようなことができたと言っていました。

 そのフロウが、今まで見てきた各国の景色の中で最も美しいと感じたのが、リトーの滝、ノクトの洞窟、ゴーダの丘だったのだそうです。もっと誰も知らないような秘境のような場所を言うのかと思っていたら、世界で最も有名な観光地を並べるので思わず笑ってしまいました。」

 言いながらリエラは少し笑った。おそらく、フロウと話した時も同じように笑ったのだろう。

 その笑顔はいつもの張り付いたような不自然な笑顔ではなく、ごく自然な笑顔だとディーンには見えた。

「でも、フロウは力説しました。誰もが美しいと思うからこそ観光地になるのだと。一生のうちに1度は見ておくべきだと。それで、私は尋ねました。世界で最高の景色をもう決めてしまっていいのかと。誰も知らない絶景がこの世界にまだあるかもしれないのではないか、と。するとフロウは、それを探すことはもう出来なくなってしまったと言いました。親が病気になって、世界中をフラフラしていられなくなった、と。親を安心させるために安定した教会の騎士団を目指して、合格したから入団したそうです。入団当時の志は高くなかったと苦笑していました。」

 教会の騎士団を目指す者は様々だが、任務内容よりも安定性で目指す者も珍しくはない。現にディーンも似たようなものだった。

 騎士団員の選抜試験はアガートやモルスの出身者にとっては狭き門だが、教会領の出身者で代々騎士を輩出する家柄ならばそこまで難しくはない。また、その家柄ではなくとも、長年教会に対して多額の寄付をしていたのならば、よっぽどのことがなければ不合格とはならないはずだった。

「特に目標もなく騎士団に入ったとフロウは言っていましたが、あなたのことを知って考えを改めたとも言っていました。白き異端者のディーンのようになりたい、と憧れたそうです。」

 それは特段驚くようなことではなかった。

 教会の騎士団員の中でディーンを知らない者は、おそらくいない。白き異端者であることが最大の理由なのは言うまでもない。ただ、白き異端者は憧れの対象であると同時に嫉妬の対象でもあり、ディーンは騎士団の中で多くの奇異の目にさらされてきた。いつ誰がどんな目で自分を見てきたのか、ディーンは極力気にしないようにしてきた。きっとどこかでフロウに見つめられていたこともあっただろうが、それに気付ける余裕がディーンにはなかった。

「フロウが最初にディーンを知ったとき、あまりいい印象はなかったそうです。白き異端者だからモルス出身でも騎士団に簡単に採用され、最年少で騎士長になったのも白き異端者という特殊性からだ、と。そう思い込んでいたのだと。

 でも、ある日の夜に訓練場でディーンが1人で鍛錬をしているのを見かけたそうです。たまたまかと思って何日か同じ時間に訓練場に行ってみると、ディーンは毎日そこにいたそうです。そこでフロウはディーンの実力は白き異端者だけだというわけではなく、確かな訓練の裏付けがあったのだと思い知らされた、と。それからずっと憧れの対象になったと言っていました。」

 まさか別部隊の騎士に見られていたのか、とディーンは内心驚いていた。

 教会の騎士団は任務外の時間は主に訓練に充てられている。それは主に連携に関する訓練で、個人的な体力向上に関する鍛錬はそれぞれの裁量に任されている。

 ディーンは白き異端者ということもあって他の騎士団員と比べてそもそも筋力が高いので、個人的な鍛錬は他の人と足並みが揃わないということもあって、時間をずらして夜中に行っていた。それを知らない騎士団員からは、白き異端者であれば訓練をしなくとも力を保てると揶揄されることもあったが、特に訂正することもなく放置していた。そんなことは、傭兵時代から腐るほど耳にしていたから。ただ、部下の騎士たちはディーンの夜中の鍛錬のことを知っていたから、ディーンを慕ってくれる者が多かった。

「フロウが語るディーンという人物はまるで万能の超人のようでした。部隊同士の合同訓練では騎士長として部下への指示が的確で、騎士同士の戦闘訓練では負け知らずだったと。いつかディーンの部隊に入るため実績を積みたくて私の護衛に志願したのだそうです。まさかそれが死ぬことを前提としている任務だとは思っていなかったようでした。」

「助けることはできなかったのか?モルスで敵に囲まれたとき、俺だけ助けたように。」

 無理を承知でディーンは尋ねた。

 既に結果はわかっている。リエラはフロウを助けなかった。

 しかし、助けようと思えば助けられたのではなかったのか、聞かずにはいられなかった。

「護衛は全員殺すように言われていたのですよ、教皇に。戦場に出た神の巫女はその場に何者も生者を残してはならない。そういう決まりなのだと。そういうものなのだと。そう教えられてきました。ですから、ためらいもありませんでした。それまでも誰を殺すことに対してためらいなどありませんでしたし、後悔したこともありませんでした。でも、戦場にただ1人残されたとき、心に重いものが残りました。これが後悔なのだと……実感しました。

 フロウと話した時間はそこまで多くはありませんでした。教会本部からロム平原までの2日。その中で10分の1の時間もなかったのではないかと思います。でも、フロウとの対話は私のそれまでの人生の中でとても濃いものでした。教会の中しか知らない私に、想像の世界ではあっても広い世界を見せてくれました。その相手を私は自らの手で殺してしまいました。二度と話が出来なくなってしまいました。自分の手で殺したのに、その命が失われたことを嘆くという、私の中での矛盾に対して整理がつかなくなりました。

 思い返せば、教会にいた時から、私は誰とも事務的な会話以外をしたことがありませんでした。いえ、きっとさせてもらえなかったのです。それはきっと、こういうことが起こると容易に想像できたからなのだと。初めて心ある会話をした相手を殺したことで生まれた執着をどうすればいいのか、私にはわかりませんでした。」

 神の巫女が教会の中でどういう生活をしていたのか、ディーンは知らない。

 生きているのか死んでいるのかすら確かではなく、生きているのなら教会本部の奥深くにある専用の部屋にいるとか、地下にある部屋を毎日変えているとか、様々な噂があっただけだった。

 リエラは大戦の時以外でも人を殺したことがあると言っていた。人と心ある交流をすることもなく、戦争の時にだけ大量殺戮兵器として機能するように、人を殺すということを日常的にこなしてきたのだろう。

 そんな少女が世界の広さや将来の夢を語る若者と交流して心が動かないわけはない。

「フロウに対して恋愛感情はなかったと思います。そもそも恋愛感情がどんなものなのかわからないというのもありますけれど……これがふさわしい言葉かどうかはわかりませんが、友達のような感覚でした。その友達が消えて、考えてみました。私が未来を断ってしまった友達の夢を私が少しでも引き継ぐことは出来ないのか、と。神の巫女としての私ではなく、リエラとして何かできないのか、と。

 それで最初に思い至ったのがディーンという騎士長のことでした。ディーンという人はどれほどの人なのか、フロウが語っていたことは正しかったのか、私自身の目で確かめてみようと思いました。フロウに対する執着をディーンに移すことができたのなら、私はまだこの世界で生きていけるのではないかと思ったのです。今度は絶対に殺さない、殺させない。そう心に誓いました。それが、ディーンを見捨てなかった理由です。」

 リエラがディーンに対して恋愛感情を持っているわけではない、というのはディーンもわかっていた。

 ではなぜ旅を始めるまで全く面識がなかったのに、妙に好意的で執着を持っていたのか。それは、フロウというやはり面識のない騎士の身代わりだったからか、とディーンはやっと胸のつかえが1つ取れたのを感じた。

 リエラは、本当ならフロウと一緒に旅がしたかったのだ。

 世界のことをよく知っているフロウに案内されて、フロウがこれはと認める絶景が見たかった。

 でも、それが不可能になったから代わりを求めた。それが、ディーンだった。

 ただ、それについて、ディーンの中に負の感情はなかった。

 一目惚れだったと言われるよりもずっと納得のいく説明だったから。

 旅が始まってからリエラにされた質問を思い返してみれば、そのほとんどがフロウにつながるものだった。騎士団に入ったときのこと、騎士団内での交流のこと、人を殺すときにためらいはないのか、そんなことをいろいろ聞かれたのを思い出す。

 リエラの言葉によって、ディーンの中でいくつかの疑問は解消した。

 しかし、それに伴って新たな疑問もまた生まれた。

「俺を見捨てなかった理由は分かった。だが、それがなぜ、初対面の俺と出会った翌日に旅に出ることになる?教会の中でも会おうと思えば会えたはずだ。時間はかかっただろうが……俺がフロウの言ったような人間なのかどうか、それくらいなら確認できるだろう?」

「それは……私には時間がなかったからです。」

 リエラはもう隠し事をするつもりはないようだった。ディーンの質問に間を置くことなく答える。

「私はもうすぐ死ぬんです。」

「えっ!?」

「続きは、最後のロム戦場跡に向かいながら話します。私の一存でディーンを巻き込んでしまったので、全てお話しします。神の巫女のこと、この旅のこと。案内を、お願いします。」

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