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鷹司家戦国奮闘記  作者: 若竹
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西国水軍会議 その3

 オレは河野のオッサンを庭の隅にあるベンチまで行かせた。

 藤棚の下で食事が出来るように机とベンチがあるんだよ。

 オレを机の上に下ろしてベンチに座る河野のオッサン。一緒についてきたのは河野家の家臣かな?ずいぶん日に焼けているけど。ベンチの横にある手水舎で手ぬぐいを濡らして河野さんに差し出した。


「殿、これでお顔をお拭きなされ」

「村上殿。すまんな」


 手ぬぐいで顔を拭くとサッパリしたみたいだな。顔色が良くなっていたよ。


「ふう。若竹丸様のお陰で命拾いしたのう」

「ははは。また大袈裟な」

「大袈裟と思うか?」


 冗談と受け取った侍たちに聞き返すオッサン。思わぬ真剣さに戸惑う侍たち。


「まずはあの屏風じゃ。瀬戸内の島々が細かく描かれておった」

「おう!あれは素晴らしき、物でしたな!」

「はぁ〜。呑気なモノじゃ。お主らの島も細かく描かれておったじゃろうが」

「は?ええ、よう描けておると感心しました」


 それでもにこやかに話す侍たちを見渡すと溜め息をつく河野のオッサン。


「本当に主らは能天気じゃのう。いつの間にあれほど詳細に調べられたのじゃ?ワシは聞いておらんぞ?気が付いた者はおるのか?」

「あ!」「確かに!」

「あれほど細かく調べて気が付かれておらぬ。もはや地の利はあるまい。それほど呑気では、寝ておる間に首を掻かれても気が付くまいぞ」


 途端に騒つく侍たち。


「それに、あの外国(とつくに)の地図。いかに我らが狭き海で争っておるかを見せつけられたわ」

「確かにあれには度肝を抜かれましたな」


 河野のオッサンは、ようやく焦りを見せ始めた侍たちを見廻すと、さらに脅す様な事を言い始める。


「もう一度、屏風の絵を思い出せ。我らは東は三好、西は大内に挟まれておる」

「確かにそうですな」

「両家は勤皇の大大名じゃ。それに比べたら当家は土豪も同然」

「いやいや、それは……」

「まあ、聞け。元々、大内殿からの圧迫があるのは皆も承知しておるであろう?」

「それは、まあ。かと言って、刃傷沙汰になる様な物では御座いませぬ」

「今まではの。つい先頃、興福寺の寺領が大きく削られた。つまりは三好の懸案が一つ減ったのじゃ」

「はあ?」

「三好の西は安泰となった。その分、兵が余る」


 オッサンの声が少しずつ小さくなるモノだから、周りの侍たちも段々と身を乗り出して来る。オレがオッサンに囲まれて居るみたいだ。


「朝廷から見れば、大内と三好の海が繋がった方がやり易くないか?」

「む⁉︎そうなると?」

「うむ。ワシらが邪魔じゃのう」

「そ!それでは!」


 驚愕して騒ぐ侍たち。


「やっと、命拾いの意味が分かったか?」

「しかし、それではこの場を切り抜けたとしても!」

「まあまあ、この先はこの若竹丸様にお縋りするのみじゃ」

「この赤子に?」

「そうじゃ。もしかすると、逆転の目があるやも知れぬ」

「逆転?」

「うむ。よいか?この若竹丸様は鷹司の御嫡子じゃ」

「ダーウー?」


 オレの事?


「おお、可愛いらしい!つまりこの赤子は未来の関白様じゃ」

「ああ!確かに!関白様じゃ!」

「幸い、若竹丸様に懐いていただけた。これは天佑じゃ!」

「おお!天佑じゃ!」

「我ら河野は若竹丸様にお縋りして、この難局を乗り越えるのじゃ!」


 盛り上がる侍たち。こんな時は掛け声を合わせるんだよ!


「エー!エー!オー!」

「おお!若竹丸様!皆も声を合わせるぞ!」

「エイ!エイ!オウ!エイ!エイ!オウ!」

「ウキャー!」パチパチ!


 オレが手を叩いて喜ぶと、皆んなも笑って喜んでる。


「よし!決めた!これより河野は若竹丸様に臣従致すぞ!」

「意義なし!我らも太郎様に付いていきまするぞ!」

「よし!もう一度、声を合わせるぞ!」

「エイ!エイ!オウ!」

「「「エイ!エイ!オウ!」」」


 おいおい、そんなノリでお家の行き先を決めていいのか?



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