西国水軍会議 その2
外交を一手に引き受けていた大内さんも知らなかったパパンの貿易政策。明や朝鮮だけで無く、南方の国とも貿易したいらしい。
「うむ。今までは細川が邪魔だったからの。秘中の秘としておったのじゃ」
「む。そうでしたか」
立ち上がっていた大内さんだけど、細川の名前が出たら少し大人しくなったよ。
「日明の貿易では細川がかなり口出ししておったからの。下手に漏れると残党どもが、またぞろ口出しをしかねなかったのじゃ」
言い訳して大内さんを宥めているパパン。
「堺も随分と困窮しておる様での。やっとワシの話を聞いてくれる様になったのじゃ」
堺さん?誰だか知らないが、パパンの毒牙にかかった犠牲者がいる様だ。周りの人達もちょっと引いている。
「それに、大内殿に作ってもらっておる船。あの船を使えば天竺へも行けると申したのはそなたではないか」
「あ!確かに申しましたが、あの船については……」
急に慌てる大内さん。周りをキョロキョロ見渡している。秘密の船を作っていたらしい。
「ははは。人の口に戸は立てられぬ。海からは丸見えじゃし。あの船は他の水軍衆達も噂しておるぞ。のう?」
自分達の噂話を把握されてると聞いてギョっとしている水軍衆。
「まあ、そう言う訳での。これからの瀬戸内はこれまで以上に沢山の荷が行き交う事になる。瀬戸内で小競り合いなどやっておる暇も無くなるでの。明日からの会議はその為の会議じゃ。皆もよろしく頼むぞよ?」
パパンに威圧されているのか、声もない水軍衆。中には顔が真っ白になっているオッサンもいるな。
「どうしたかの?河野殿?顔色が悪いようじゃ?」
更に圧をかけて行くパパン。こういうトコ、こいつドSなんだよな。河野と呼ばれたオッサンは元々が八の字眉毛で迫力が無い。パパンに圧をかけられて凍りついている。
「チャイ!」
オレはパパンの手を叩いて、河野のオッサンへ身を乗り出す。
「お?お?どうした、若竹?」
「ダーダー!」
オレはジタバタしてパパンから逃げ出すと、河野のオッサンの膝からスルスルとよじ登った。肩に座るとオッサンのオデコをペチペチしてやる。
「おや?若竹は河野殿を気に入った様子。ふむ……。すまぬがしばらく相手をしてもらえるかの?」
そう言って上座へ帰って行った。オレがシッシッとやっていたので様子を見る事にしたらしい。
いきなり赤ん坊を預けられて、固まる河野のオッサン。
オレはオッサンの耳を引っ張って、庭に行きたいと身振りで主張する。
「アーアー!」
「アタタ。若竹丸様。そこは痛うございます。そうそう。そこなら掴まれても大丈夫」
「ウーウー!」
オレとオッサンがジタバタしているのを見て周りがニヤニヤしている。水軍衆の緊張も解けた様だ。パパンが上座から声を掛けてくる。
「河野殿、誠にすまぬのう。若竹の気の済む様にしてやってくれぬか?」
「は、はい。それでは、しばらく失礼いたします」
「アー!」
「はははい。アチラですな?若竹丸様?」
「アー!」
「はいはい。行きます。行きます」
お供を連れて庭に出て行く河野さんを水軍衆が同情した目で見送っていた。
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