ガッタン、ゴットン
今日も今日とて、ペーパーワーク。
「ダー!」
「ニェット!」
今日は八郎がいないから左右に稚児が控えている。
ダーの場合は問題無しで左の稚児が受け取る。ニェットはミスありで右の稚児が受け取る。
元々はミス有りはオレが投げ飛ばしていたんだけどね。弾かれた官司の落ち込みが酷くて、書類を投げ飛ばすのは勘弁して欲しいって泣きが入ったんだよね。
ケアレスミスはかなり減ったな。フムフム。
ん?なんじゃコレ?
こ、コレは!ま、まさか!
「チャイ!」バンバン!
机を叩いて、在富を呼ぶ。やっぱり八郎がいないと面倒だな。
普段と違うオレの態度に部屋全体に緊張が走る。この間、机をバンバンした時は、大掛かりな収賄事件が発覚したからな。
まあ、今回はそんな事じゃない。忠冬と在富だよ。やっぱり、やってやがったよ。やらない訳がないよね。見つけたのは、在富に提出された書類からだ。多分、いつもはオレを避けて決済していたのだろう。
「ンー?」バンバン!
慌てて駆け寄って来た在富の顔色が変わる。
「とうとう見つけてしまいましたか」
オレの指先には軌道の文字。いわゆる鉄道の書類だったんだよ。
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鉄道って言っても、電車や汽車じゃない。牛車鉄道だったんだよ!前世なら馬車なんだけど、日本の馬って小さくてポニーぐらいなんだよね。小さな馬車ならともかく、しっかりした車輌を引くには牛の方が適しているんだね。
まあ、そんな説明はいいんだよ。問題は鉄道だ。男の子なら一度は鉄道期を迎えるものなのだ!(若竹の主観です)なんだこの解説は!作者め、日和りやがって!鉄道とダンゴムシは避けて通れない道だろうが!
ダンゴムシなら戦国時代にだっている。だけど鉄道は19世紀にならなきゃ登場しないんだよ!
その鉄道が!機関車はまだとは言え、鉄道があったんじゃないか!
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牛車鉄道は大宮大路を使い、二条から九条まで敷かれている。神泉苑から東市を通り東寺まで真っ直ぐ続いている。端まで行ったら、牛を繋ぎ直して戻ってくるんだ。
発車する時は警笛が鳴るよ。ピリリリリー!ってヤツ。残念ながら自動ドアは無いから、あのプシューって音は無いけどね。でも、車掌さんの指差し確認はちゃんとやってる。
分かっているじゃないか。車掌さんの点呼の後、運転士の「出発進行!」の掛け声で、ゆっくりと進み出す。残念ながら1両なんで、列車とは呼べないんだよなぁ。
スピードは牛の速さなんでゆっくりなんだけど、レールの継ぎ目でガッタン、ゴットンって鳴るのは鉄道ならではだね。
「ンー!タン!ンー!」
千熊も興奮しているよ。やっぱり鉄道はいいよな!
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「牛車とは揺れが違うのう」
「やはり道が滑らかだからか?」
マンマ達も感心している。
「鉄道は、下々の乗り物とされていたんですがね」
在富が苦笑いしている。どのみちレールが必要だからね。何処にでも行ける訳じゃないから、公家は牛車に乗る事になるよね。
右京スタジアムへの直通鉄道を西大宮大路に敷くのはダメかな?え!線路は引いてあるんだって?ヤッター!
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