若竹丸のお披露目
御七夜とは、生まれてから七日目の夜に家族で祝うモノだよな?すでに三日目に突入。次から次へと挨拶に来る客が絶えない。
初日からおかしかったんだよな。日が傾いて、夜の気配が濃くなってくると、庭に面している大広間に連れてこられた。
御簾で仕切られた部屋に入る。ジィジや何人かのお公家さんが座ってる。御簾の向こうにもお公家さんがズラリ。その後ろには武家らしいのが並んでる。さらに庭にも大勢の人が集まっていた。パパンがオレを抱いて中央に座ると、皆んなが平伏した。ヒエェ〜!
陰陽師の在富が司会のようで、御簾の向こうで「面をあげよ!」なんてやっている。パパンからのお言葉「嬉しく思う」とかなんとか言ってるぞ。こうして見ると凄いお貴族様なのがわかるな!
オレの名前の発表は、ジィジから。平成とか令和の年号の発表を思い出すな。
「ちなみに、これは宸筆じゃ。おかみにとっても、初めての男孫じゃからな!」
おぉー!と、どよめく観衆。シンピツだかエンピツだか知らないが、なにやら凄い物らしい。ジィジは鼻高々だ。あんまり調子に乗ってると後で叱られるぞ!
一通りオレの披露が終わった所で、御膳が運ばれて来た。凄い人数だから皆に行き渡るのも一苦労だ。待っている間に御簾の中の人達が挨拶をしてきた。
近衛さんとか一条さんとか、何となく前世でも聞いた事がある。多分凄い貴族なんだろうな。このコネはしっかりと繋いでおかねば!オレはニッコリと笑ってあげた。
「おうおう!いとけないのう!」
「ほんに、可愛らしい!」
掴みはバッチリだ!しばらく愛想を振りまいた後、オレは退場。お寝んねすれば、すっかり終わっている筈だった。
新生児の一日は不安定だ。夜中に腹が減って目が覚める。深夜の筈だが、まだ庭が騒がしい。オレにつられて目が覚めたマンマも不審に思ったらしく、侍女を起こして見に行ってもらった。
帰ってきた侍女に聞くと、どうやらジィジがはっちゃけているらしい。お祝いとして酒を用意したのだが、興が乗ったのか、自ら酌をして廻り始めたのだ。公家の間を廻っているウチはよかった。下座の武家にも酌をすると、雲上人からの酌に感激して泣き出す奴まで出てくる始末。終いには庭に降りて地下人達にまで、振る舞いだしたらしい。
これ、あれですわ。アルハラって奴ですね。地下人達は畏れ多いと逃げ回ったが、酔っ払いの必殺技「俺の酒が飲めないのか!」が炸裂し、今はジィジの前に列を作って一杯づつ酒をもらっているらしい。
ジィジは酒を注ぎながら「若竹を頼む」と泣いているそうで、注がれた地下人達は「命に変えてましても!」と忠誠を誓っているそうな。ジィジ、ナニヤッテルンスカ!
上級貴族たちは既に帰っているし、そもそも鷹司の家中行事なので、家臣のような人々しかいないのだが、パパンとその側近達は頭を抱えているらしい。
しかも、先に帰った公家の使用人たちから話が漏れたらしく、「鷹司の御曹司に忠誠を誓えば、酒を振る舞ってくれる」との噂が都中に流れているそうで、主人を持たない牢人などもチャンスとばかりに押し寄せて来ているのだそうな。
盃に一杯とは言え、それだけの人々に酒を振る舞える財力を恐れればいいのか、やらかすジィジを恐れればいいのか、そんな事態にも動じずに、家臣を増やすチャンスだと名簿を作りに走る在富に呆れればいいのか、どうなのだろうか?
【今回のやらかし】
忠冬達がやらかした事案をここで解説します。
今回はジィジのやらかしですね。アルハラ、ダメ!
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