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鷹司家戦国奮闘記  作者: 若竹
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彦五郎さんの旅立ち

 なんとなくまとまった空気になったので、話を進めるパパン。流石関白。抜かりが無いね。


「うむ。それでは先に彦五郎の用を済まそうか」

「はは!」


 改めて平伏する彦五郎さん。


「今日お主を呼んだのは下京の事ではない。お主の力を見込んでの頼みごとじゃ」

「は?某の?」

「うむ。お主、捕物では苛烈な攻めで盗賊どもを震え上がらせているそうではないか。一たび目を付けられたら地獄の底まで追いかけて来ると、もっぱらの噂じゃぞ?」

「あ、いや、それほどのものでは……」


 照れるなオッサン。


「よいよい。賊に恐れられるのは検非違使の(ほま)れじゃ」

「ありがたき幸せ!」


 さっきまでの様子と違い、覇気のある返事をする彦五郎さん。立ち直って来たかな?


「そこで、特にお主を見込んでの頼みなのじゃ」

「は!お任せくださいませ!」


 と、言ってからシマッタ!って顔をして武衛さんを見る彦五郎さん。彦五郎さんの主人は武衛さんだからね。


「ははは。ワシも知っておる話しじゃ。遠慮なく行ってこい」


 笑顔で話す武衛さん。彦五郎さんもホッとしているね。


「それでの、頼みとは鈴鹿峠の事なのじゃ」

「盗賊で有名な峠ですな」

「そうじゃ。そして今、街道を通しておる」

「はい。三条より出て行く街道ゆえ、話は聞いております」

「うむ。来年の春には帝の使いとして近衛と鷹司の大御所が伊勢に行く」

「なんと!それは初耳」

「うむ。春までに街道が開けるか、見通せなかったのでな。秘事としていたのじゃ。そろそろ布告するが、それまではお主も控えよ」

「は!はは!」


 秘密を教えてもらったと分かったようだな。背中に張りが戻って来たよ。


「勅使に万が一があってはいけない。が、今、六角は手が足らぬでの」

「街道作りに、比叡山の後始末。京極が頼りにならぬので高島の小領主たちや浅井ら北近江の面倒を見ないとならん。それに北陸にいる公方様の後詰もある」


 武衛さんが指折り数えている。


「それに鈴鹿の賊には甲賀や関の民もいるようなのじゃ。地元の民と思えば六角や北畠の兵は手を緩めてしまう」


 地元と縁の無い尾張の兵だからこそ、厳しく取り締まり出来る訳だね。


「そこで、お主に白羽の矢が立ったのじゃ。六角も検非違使に兵を出しておるでな。噂を聞いたらしい。ジョーキィ自らの御指名ぞ?」


 ん?なんか発音がおかしくなかった?


 武衛さんが、背を伸ばして彦五郎さんに声をかけた。


「そは名誉なり。彦五郎!主人(あるじ)として命ず。鈴鹿の賊を滅して来い!」

「ははぁ!では、早速に出立の手筈を整えて参り申す!」

「こりゃ待て!彦五郎!」


 すぐにでも飛び出して行きそうな彦五郎さんを止める武衛さん。いろいろ細かい指示を出す。簡単なメモも渡しているな。


「ふふふ、悍馬も乗りこなすのが武家の器量。わしもお主を上手く乗りこなして見せようぞ」

「ははは、この彦五郎。なかなかの悍馬でござるぞ!見事に御してくださいませ!」


 そう、言い残すと彦五郎さんは部屋を駆け出して行った。


「はあ。やっと本題に入れる」


 そう言えば、すっかり忘れてたけど、左京大夫の商店登録の扱いについて根回しする為に武衛さんを呼んだんだよね。こっちの話はチョコっと伝達して終わりました。



「面白かった!」「先が気になる!」と思ってくださった方は、お気に入りの登録と、下の☆☆☆☆☆で評価してくれると、作者のモチベがアップしましたいたします!よろしくお願い申し上げます!

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