武家の器量
下京で騒動が起きそうになっていると聞いたパパン。
「まったく、桜丸は。あいつもそろそろいい歳だろう」
そう言いながら、スタスタと彦五郎さんに歩み寄る。そして肩をさすってやりながら謝った。
「すまなかったな。彦五郎。ワシの差配が間違っておった。もう顔をあげよ」
「へ?」
びっくりして顔を上げる彦五郎さん。
「下京は誠に複雑な所なのじゃ。武辺者と言えば、情の機微にはうとい物。そのような場所に助けもつけずに武士のお主を放り出したワシの責じゃ。許してたもれ」
そう言うと深々と頭を下げた。驚いた彦五郎さん、アワアワしている。武衛さんも驚いて声を掛けられずにいる。
「そんな!関白様!頭をお上げ下され!某の器量が足りなかった故の事!」
「器量と言うたか。うむ。悍馬も乗りこなすのが武家の器量とも言うな。彦五郎。お主、馬の器量はどうじゃ?」
いきなり変な事を聞かれて戸惑う彦五郎さん。
「は?はい。それなりには乗りこなしまする」
「いやいや、かなりの技量ですぞ」
武衛さんが後押ししてあげている。
「うむ。なれば戦場に駄馬しかおらぬとしよう。駄馬ゆえ戦に負けると申すか?」
パパンがちょっと意地悪な質問をする。ニヤついた顔が憎たらしいぞ。彦五郎さんもムッとした顔で答えた。
「駄馬も悍馬も御座らぬ。全ては己が武力の故にござる!」
あ、パパンがしてやったりって顔してる。
「その通りじゃ。駄馬も悍馬もない。全ては差配したこの関白の責じゃ」
「「あ!」」
武衛さんも一緒に驚いている。これは答えづらいよね。否定しちゃうと権限無いみたいな話しになっちゃうし。
「下京の事はワシが引き取った。ワシに任せよ」
「しかし、それでは……」
なおも言い募る彦五郎さんを押し留めるパパン。
「まあまあ。勝敗は武家の常。此度は彦五郎の負け戦じゃ。負けは負けとして、次の戦に活かせばよい」
それでも納得出来ていない彦五郎さんにパパンが言う。
「武者は犬ともいへ、畜生ともいへ、勝つことが本にて候」
「は?」
また、なんか変な事を言い出したぞ?
「うむ。今ウチにいる宗滴殿の言葉じゃ」
「なんと!あの朝倉殿の!」
「あ!お主の所とは因縁があったのう」
「いえいえ。それも遠き昔の事。今の器量では尾張も精一杯」
武衛さんが、苦笑いしている。
「ましてや宗滴殿は別格でござる」
「うむ。武士は勝つ事が大切。その為にはどんな屈辱も耐える事が肝要なのだとワシは解釈しておる」
「なるほど。肝に銘じます」
宗滴ジイの説得力!なんとなく、いい事聞いた気になるよね。
「それでは此度の件、ワシに任せてくれるな?」
「ははぁ!それでは遠慮なくお任せ致します!」
なんとなく強引だけど、上手くまとまったのかな?
またまた次回に続きます。書ききれなかった。
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