山科へお出かけ
ガラガラ、ガラガラ。今日はお出かけ。京と近江の街道にある山科駅を見学に行くのだ。
山科駅って言っても鉄道が引かれた訳じゃ無い。伝駅って言って道の駅なんだって。早馬の替え馬とか牛車の替え牛とかがいたり、仮眠できる部屋があったりする。
ついでに山科さんちに一泊して帰るのだ。
今、伊勢神宮までの間に街道を作っているのだけど、その街道沿いには伝駅を設置するんだって。
その街道作りに八郎も駆り出されちゃったんだけどね。
三条から真っ直ぐ伸びた街道を進む。
「広い道ですなぁ」
「ほんまに。それにぜんぜん揺れません」
「ヒロー!」
「オッキー!」
「キー!」
今日は乳母の二人も同じ牛車に乗ってる。オレの乳兄弟も一緒だからね。宗滴ジイも一緒だ。
前の車にはパパンと在富、それに乳兄弟のパパさん達、三好さんと万里小路さんが乗ってる。
「ほら、千熊。父上のお仕事なんですよ。こんな立派な道を作って、皆んなが喜んでます」
「ミーチ!」
愛さんが千熊に外を見せている。
「ほんによき道じゃのう」
マンマに褒められて、愛さんも照れてる。
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山科への道は三条大橋から始まる。東海道や北陸道へ繋がる重要な道だ。三条大橋を渡って直ぐの所に大きな広場がある。ここで各街道から来た荷を積み替えるのだ。
物によっては賀茂川を下って、西国や明へと流れていく。三条大橋まで川を浚渫して舟が行き来しているんだ。逆に明からの荷が北陸へと運ばれてもいる。橋からは牛が舟を引っ張っているのが見えたよ。
「チー!チー!」
阿子丸が何か見つけて騒いでいる。規格化された長櫃に統一されているので、前世のコンテナを思い出すな。フォークリフトが無いから、大きさはずっと小さいけどな。大体2mぐらいの長さかな?
広場の隅には出店もいくつか出ている。その中にチーズのお店があった。最近、千熊の離乳食にチーズが出たんだよ。それを覚えていたらしい。あの時、阿子も欲しがったからな。
うーん。でも阿子にはまだ早いんじゃないかな?オレが思った通り、マンマ達はスルーした。まあ、車に乗っているし、パパン達は先に進んじゃっているからね。
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広場を出ると東山へ真っ直ぐに道が続いている。片道三車線の広い道だ。道の真ん中には緑地帯があって、馬に乗った武士達が行き来している。
これは伝令兵。背中に大きなノボリをつけてあって、竿の先に金の飾りが付いている。ノボリも綺麗な錦系で飾られている。この豪華なノボリを背負って伝令だけがこの道を走る事が出来るんだって。
「この伝令になりたいと、馬の練習に励む者が増えましたわ」
宗滴学校は軍事の学校だからね。当然、騎馬の項目もある。
「ですが、伝令は一人で敵中を走り抜けられねば務まりませぬ。馬に気を取られるうちは任せられませぬな」
中々ハードルが高いみたいだね。それにしては往来する伝令が多くないかな?マンマもそう思ったようだ。
「ハッハッハ!タネを明かさば、山科までの往復しかしておらぬのです。今日、関白が山科に行くと言うのでお披露目しておるのですよ」
なるほど、山科までは歩いたって小一時間。馬に乗っていたらあっと云う間だ。もう何度か往復してる奴もいるのかもね。
「本当に緊急の事態になった時の訓練も兼ねて、最大限の伝達がどれだけ出来るのかやらせてあるのです」
実は昨日の夜から文箱をいくつ運べるかを競っているんだって。馬はドンドン替えているけど、伝令は走りっぱなしだって!急に可哀想になったよ。
「合戦ならば一昼夜は争って当たり前。伝令もそれ位はこなして貰いませぬとな」
「某は、若竹丸様の護衛でござる!最後まで離れませぬぞ!」
「某も!」「某もじゃ!」
宗滴の言葉を漏れ聞いたのだろう。牛車の外で小次郎達が叫んでる。
「安心せい!お前ら剣客に騎馬は任せぬわ!」
宗滴が楽しそうに怒鳴っていたよ。
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