小倉の山の決起大会
「バァバーブッブ、バァバー」
「ダバッブ、ダーダー」
「「キャハハハ」」
「ブァー!アー!」
「何をおしゃべりしているんでちか?」
いや、赤ん坊の会話なんてノリで中身は無いから。
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「小倉の山が燃えておるようですのう」
「わしゃあ、こんな風景、二度と見られぬと思っておったよ」
〽︎小倉山 あらしの風の 寒ければ 紅葉の錦 着ぬ人ぞなき
「大鏡ですな」
「ええ、公任さんです。錦とありますが、実は今日のわたくし、鷹司の錦着る人でして」
「ははは!ここらの公家はほとんどがそうじゃろう。ワシも錦着る人じゃよ」
鷹司家で着物レンタルをしているんだよね。今日は格安で貸し出ししているんだって。
境内を散策する公家達を見ながら、ジィジ二人が感慨に耽っている。
「昔は、京全体が困窮しておったからのう」
「鷹司も、昔は近衛から全て借りて済ましておったからのう」
「政平さんの時はアレじゃったがの、兼輔の代には皆、護衛に行きたがったもんじゃ」
「ほう?それは初耳じゃ!」
「兼輔は無茶を言わんかったし、鷹司への貸出しは別に給金を出しておったからのう」
「そうじゃったのか。道理で少ない心付けでも喜んでくれた筈じゃわい」
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庭ではパパンが蹴鞠?をやってる。リフティング技を連発しているけど、蹴鞠ってあんなのだっけ?
「ははは!忠冬さんの新しき蹴鞠はいつ見ても面白いのう」
「飛鳥井さんも対抗して新しき技を編み出したらしいぞ」
ヘディングでパスし合っているけど、いいのか?アレ。
オレが呆れて見ていたら、ハンドシェイクしてたよ。お互いを両手で指差してる。おいコラ!公家さんに何広めてんだ?
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「今は貞信公の心持ちじゃ」
近衛のジィジはそう言うと、縁台に立って歌い始めた。
〽︎小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ
ジィジが歌うと、高齢の公家を中心に泣き始めた。おいおい、何が始まったんだ?
オレが戸惑っていると、在富が八郎に説明してくれた。
「この歌は、主上にもこの風景をお見せしたいと歌っているのです。今はまだまだ主上が御幸、つまり内裏の外へ出掛けるのは難しいですからね」
「少しでも早う太平の世が来るように励まねばのう」
「誠に!誠に!我らも、主上をお支えするのじゃ!」
「皆!聞いてたもれ」
ここでマンマが動いた。オレを抱いたまま縁台に立つ。
「おお!宮さまじゃ!」
「宮さまじゃ!」
今度は、年若の公家達が騒ぎ出す。マンマ人気だなぁ。まあ美人だもんね。
「皆さんの御心はおもうさんにも伝わってあらしゃります」
「おお!誠か!」
「ええ、常々、皆の労苦を想うて感謝に絶えぬというてます。のう?若竹?」
もう、公家の爺ちゃん達号泣してる。ここはオレも乗ってやるか。
「アィ!」
片手を上げて大きな声を出す。
「ほれ、いとけなき赤子じゃ。嘘はつけぬ」
マンマも調子に乗ってオレを両手で捧げ持つ。高い高いだね。向きが反対だけど。空気を読んで片手を上げたまま、皆んなを見渡す。ここでもう一声だな。
「アィ!」
「おお!若竹様も誠とおっしゃる!」
「うぉぉぉ!我ら公達も帝のお役に立ちまするぞぉ!」
「我ら、帝の為にぃ!」
「帝の為にぃ!」
「我も!」
「我もじゃ!」
「帝の為にぃ!」
一人が手を上げると、また一人、一人と俺の真似をして片手を捧げ上げる。どこからともなく湧き上がる例の掛け声。
「ジーク、ジ◯ン!」
「ジーク、ジ◯ン!」
また、在富か。
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