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鷹司家戦国奮闘記  作者: 若竹
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小倉の山の決起大会

「バァバーブッブ、バァバー」

「ダバッブ、ダーダー」

「「キャハハハ」」

「ブァー!アー!」


「何をおしゃべりしているんでちか?」

 いや、赤ん坊の会話なんてノリで中身は無いから。


 --------------------


「小倉の山が燃えておるようですのう」

「わしゃあ、こんな風景、二度と見られぬと思っておったよ」


〽︎小倉山 あらしの風の 寒ければ 紅葉の(にしき)  着ぬ人ぞなき


「大鏡ですな」

「ええ、公任(きんとう)さんです。錦とありますが、実は今日のわたくし、鷹司の錦着る人でして」

「ははは!ここらの公家はほとんどがそうじゃろう。ワシも錦着る人じゃよ」


 鷹司家で着物レンタルをしているんだよね。今日は格安で貸し出ししているんだって。


 境内を散策する公家達を見ながら、ジィジ二人が感慨に耽っている。


「昔は、京全体が困窮しておったからのう」

「鷹司も、昔は近衛から全て借りて済ましておったからのう」

政平(まさひら)さんの時はアレじゃったがの、兼輔(かねすけ)の代には皆、護衛に行きたがったもんじゃ」

「ほう?それは初耳じゃ!」

「兼輔は無茶を言わんかったし、鷹司への貸出しは別に給金を出しておったからのう」

「そうじゃったのか。道理で少ない心付けでも喜んでくれた筈じゃわい」


 --------------------


 庭ではパパンが蹴鞠?をやってる。リフティング技を連発しているけど、蹴鞠ってあんなのだっけ?


「ははは!忠冬(ただふゆ)さんの新しき蹴鞠はいつ見ても面白いのう」

「飛鳥井さんも対抗して新しき技を編み出したらしいぞ」


 ヘディングでパスし合っているけど、いいのか?アレ。


 オレが呆れて見ていたら、ハンドシェイクしてたよ。お互いを両手で指差してる。おいコラ!公家さんに何広めてんだ?


 --------------------


「今は貞信公(ていしんこう)の心持ちじゃ」


 近衛のジィジはそう言うと、縁台に立って歌い始めた。


〽︎小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ


 ジィジが歌うと、高齢の公家を中心に泣き始めた。おいおい、何が始まったんだ?


 オレが戸惑っていると、在富が八郎に説明してくれた。


「この歌は、主上にもこの風景をお見せしたいと歌っているのです。今はまだまだ主上が御幸(みゆき)、つまり内裏の外へ出掛けるのは難しいですからね」


「少しでも早う太平の世が来るように励まねばのう」

「誠に!誠に!我らも、主上をお支えするのじゃ!」


「皆!聞いてたもれ」


 ここでマンマが動いた。オレを抱いたまま縁台に立つ。


「おお!宮さまじゃ!」

「宮さまじゃ!」


 今度は、年若の公家達が騒ぎ出す。マンマ人気だなぁ。まあ美人だもんね。


「皆さんの御心はおもうさんにも伝わってあらしゃります」

「おお!誠か!」

「ええ、常々、皆の労苦を想うて感謝に絶えぬというてます。のう?若竹?」


 もう、公家の爺ちゃん達号泣してる。ここはオレも乗ってやるか。


「アィ!」


 片手を上げて大きな声を出す。


「ほれ、いとけなき赤子じゃ。嘘はつけぬ」


 マンマも調子に乗ってオレを両手で捧げ持つ。高い高いだね。向きが反対だけど。空気を読んで片手を上げたまま、皆んなを見渡す。ここでもう一声だな。


「アィ!」


「おお!若竹様も誠とおっしゃる!」

「うぉぉぉ!我ら公達(きんだち)(みかど)のお役に立ちまするぞぉ!」

「我ら、帝の為にぃ!」

「帝の為にぃ!」

「我も!」

「我もじゃ!」

「帝の為にぃ!」


 一人が手を上げると、また一人、一人と俺の真似をして片手を捧げ上げる。どこからともなく湧き上がる例の掛け声。


「ジーク、ジ◯ン!」

「ジーク、ジ◯ン!」


 また、在富(ありとみ)か。



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