賀茂の鬼牛
肌寒さが身にしみる晩秋の頃。皆さま、いかがお過ごしでしょうか?若竹です。本日はお屋敷を出て、パパンと陰陽寮を訪ねて見ました。
「若竹様?何か言いまちたか?」
「ブッブー!」
なんでもないよ。八郎。
今、お付きは八郎だけ。侍女と護衛は門の外で待機してるんだ。陰陽寮の中は機密文書がいっぱいなので、余程の身分でないと立ち入れないのだ。
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やっと、重機 (ブルドーザー)が稼働する事になったんだよ。今までは、八郎が付いて重機の操作を教えていたんだ。この間、八郎がいなかったのは、そういう訳。
在富の案内で奥の広場に行く。
「彼らが、鬼牛を使役する陰陽師となります」
「なかなか、良き面構えじゃ。鬼牛は日の本を結ぶ道を作る。それを操るお主らは、即ち、国の基を作るのじゃ。励めよ?」
「ははぁ!ありがたき、お言葉!しかと胸に刻みましたぞ!」
操縦士は八名ほどいて、整備士も兼ねている。重機は「賀茂の鬼牛」って呼ばれているんだってさ。在富の使役する鬼の一種って事らしい。操縦士達も勘解由小路の陰陽道の弟子から選抜したんだって。
「皆さん、鬼牛の免許状でち。無くさないように」
八郎が証書を一人一人に手渡ししてる。
彼らには八郎が護法童子だと説明しているので、侮る奴はいない。
「アッア!ウーウー!」
大袈裟に手を振って、目の前に重機を展開する。
「おお!誠に賀茂の鬼牛じゃ!」
コイツらの前で何かを召喚するのは初めてだからな。話しはしていたそうだけど、半信半疑だったんだろう。
この重機はオレのゲームアイテムなので、ストレージで出し入れ可能なんだ。それはオレだけじゃ無くて、八郎も出し入れ出来る。
「何かあった時は、八郎殿が駆け付ける故、式を飛ばせ」
道から落ちたりした時は、八郎が現地に行って収納、道の上に展開する。収納した時に故障箇所は治っているので、一石二鳥だね。
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せっかく陰陽寮に来たので、見学して行く。
本来、陰陽寮ってのは別に怪しい魔法使いがいる訳じゃ無くて、暦学って言って、天文観測して暦を作る部署なんだよね。占いもしたので、そっちのイメージが強調されているけど。
それを悪用したのが、在富だ。在富は転生チート使えるので、結界やら式神からですっかり怪しいイメージを定着させた。今では怪しい事をやっても納得しちゃう感じになっているんだそうな。
蝋管レコードのDJブースとかあったけど、スルーしておく。
「これが簡易ライフリングを施した火縄銃です。フリントロックも研究しましたが、着火率が悪く、一気にパーカッションロックへ移行できないか模索している最中です」
忘れてたけど、コイツ、ガンマニアだったんだよね。村田銃のレプリカでハンティングしてたよな。
「本当は今年ぐらいが鉄砲伝来の年らしいけどな」
そう忠冬パパンが言うと、在富が反論してきた。
「ありゃ、鉄砲伝来じゃない。ネジの伝来だ!アレで自国生産が可能になっただけで、輸入品はその前からあったに決まってるだろ!」
あー、オタクは面倒くさいなあ。
はいはい。面倒だからオタクとは議論しませーん!
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