おおなめのまつり
ウチのジィジと近衛のジィジが板の間で飲みながら、グチを溢している。
「お上が大嘗祭をやりたいと仰せなのじゃ」
「お労わしいのう、即位式は出来たとは言え、あれから十年、新嘗祭が出来ておらぬ」
なんでも、天皇の大事なお務めらしいけど、運営資金が無くてずっとやれていないんだって。
「今年からは出来るかと期待されたが、夏の戦さで費えが底を付いてしもうたからのう」
「返すがえすも細川は祟りおるわい」
近衛も鷹司も羽振りは良くなったとは言え、国家行事が出来る程身入りがある訳じゃないらしい。
「ジィジ、ナイナイ?」
「おぉ、若竹。そうなのじゃ。ナイナイなのじゃ」
そうかぁ。摂関家とは言え、この時代は貧乏なのか。前世から続く貧乏暮らし。つくづく金に縁が無いなぁ。
そう思うと、在富は金持ちだな?この間も金の延棒持って来てたし。あの野郎、たぶんシャワートイレで儲けているんだな!
後で、フルーツジュースでも、たかってやろう。ん?金持ちと言ったら、坊さんはどうなんだろう?坊主丸儲けって聞いたことがあるぞ。
「ジィジ!ナムナム!」
「ん?なんじゃ若竹?ナムナム?」
「なんじゃ?大嘗祭はナムナムはせんぞ?」
ぐう。赤ちゃん言葉じゃ通じないか。今日は八郎が留守なんだよなぁ。
「ナムナム!キラキラ!」
「ん?どっかで坊主でも見たのかのう?袈裟がキラキラしてたか?」
惜しい!だが近付いた!手を振り上げて強調する。
「キラキラ!ナムナム、キラキラ!」
「まあ、寺にもよるが坊さんはキラキラしておるかもしれんのう」
「ジィジ、ナイナイ。ナムナム、キラキラ!」
「ぐっ!確かにワシらは銭無しじゃがの。坊主どもは悪どく稼いでおるからキラキラなんじゃ!分かったか?若竹!」
そうだよね?坊さんとこにはお金あるんじゃないの?
「ウッウー!ジィジ、ナイナイ。ナムナム、キラキラ!」
「ジィジ、ナイナイ!ナムナム、キラキラ!」
「ジィー、ナーナー!ナンナン、ラーラー!」
ありゃ?千熊と阿子も真似し出しちゃったよ。
「くぅー!孫にまでバカにされるとは!」
「ん?まて、兼輔。確かにナムナムはキラキラじゃ」
「確かに坊主どもは金持ちじゃからのう」
「そこじゃよ!坊主と言えば、南都北領。叡山は討ち払われたが、大和国の興福寺じゃ。あそこの公田はどうなっておる?」
「そりゃ、興福寺が押領しとる」
近衛のジィジは分かったようだな。
「昔、忠冬がやった税の改新じゃ。三好や北畠、斯波は検非違使に人を派遣しておる。一種の庸と言っておった。大内や六角は調のように色々物品を納めてくれておる。では、興福寺は?」
「何も納めておらんの。だが、赤松や畠山は?あ奴らも払っておらんぞ?」
「奴らは武家じゃ。足利に任せておる。じゃが、興福寺はどこにも属しておらぬ。南都奉行なぞ今は誰がやっておるのかわからぬ程じゃからの」
二人のジィジが悪い顔になった。
「来年の春に伊勢に行くじゃろ?」
「おー、アレか!楽しみじゃのう!」
「アレの大義が、無くての困っておったのじゃ」
「おお!なるほど、お上もご先祖様に申し訳ないと仰っておった。お詫びの為とするか?」
「うむ。わしゃ、お上に一筆、手紙を書いてもらおう。ついつい、見せびらかしてしまうやも知れん」
「なるほど、それではお上の嘆きをうっかり喋ってしまおうかの」
奥さん、聞いた?どうも今上陛下が奈良のお坊さんのせいで大嘗祭が出来なくて、困っているんですって!興福寺さん?大きなお寺さんなのにねえ?
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