そんなに上手い話は無い
在富と弾を交換したよ。ライフルの弾とは言え、千発だと結構な大きさになるな。例の東屋に置いて少しずつ持ち出すらしい。
さて、金の延棒が手に入ったのだ。さっそく能力値をポチっとな。分かりやすく素早さを10上げてみる。今までは3しか無かったからな。経験値は一つ上げるのに10ポイントする。
どうだ、八郎?オレの動き早くなってる?
「うーん。どうなんでちかね?早くなってるような。そうでも無いような……」
うーん。八郎達の能力値から言って、100が上限だと思うんだけど。仕方ない。も少し上げてみるか。
一気に50ポイントにしてみる。これなら、どうだ?
「おぉ!確かに、素早くなったでち!」
おお!今までダバダバやっていたハイハイがタタタタって感じになっている!
が、しかし。
「はい。そっちへ行ってはダメでち。また、在富様に怒られまちよ?」
所詮は、赤ん坊。多少素早さが上がっても、すぐに八郎に捕まってしまう。
くっそー!それなら一気に100まで上げてやる!ポチポチっとな!
「あっ!あっ!物凄く早くなったでち!」
オレの手足は3倍どころじゃなく早く動いている!が、八郎に捕まったままだった。筋力値を上げてないから八郎に軽く取り押さえられて逃げられない。
それなら、筋力値も上げてやる!
「あ!逃げられたでち!」
八郎も幼児。筋力値を50に上げたら簡単に振り解く事ができたよ!
筋力や素早さが増えたと言っても成長した訳じゃあない。立ち上がって走るのは無理だった。ならば、ハイハイ走行だ!
ドドドド!四駆ならではの走りを魅せてやるぜ!見せる、じゃなくて、魅せるだからな!
「若さま、逃走!若さま、逃走!」
警戒の声を上げながら、侍女や護衛達が飛び出してくる。
前の失敗は邸内を一周しちゃった事だからな。縁側から庭に飛び出すぜ!障子を蹴破って!
とは、行かないので、開いていた所から、
「ン…、チョッ!…ト…」
ズルリと踏み石に降り、踏み石もズリズリと降りる。
さあ!庭に降りてしまえば、オレのモノだ!再度ハイハイ走行で逃走を始める!
「若さまが、お庭に!」
「お庭に、お逃げなさったぞー」
庭に逃げたら、屋敷の周りの護衛達も来たらしい。さっきより人数が増えているぞ!
だが、ドーピングしたオレに敵は無い!
「あれ!」「おっと!」
ギリギリの隙間を縫って、回避して行く。
「あっと!申し訳御座らん」「あら、いいえ…」
なんか、男女の間を通ると何組か絡まったままの組が出来るな。
「流石は若竹様!だが、この小次郎を抜けるかな⁉︎」
燕返しの小次郎か!だが、お前の弱点は分かっている!
視線が合った!小次郎も油断は無い。オレの動きが尋常じゃないのは見てとっている。オレも小次郎の実力を舐めてはいないからな!
しっかり足を踏み締めて立ち塞がる小次郎。そこへ人とは思えない速さで近付くオレ。左右に動いてフェイントを入れる。
だが、小次郎も軽く身を動かす程度で警戒している。
オレは一瞬目を離し、小次郎の上を見る。
「む!上か!」
小次郎が上に気を取られた瞬間、オレは跳び上がった!
「甘い!グハァ!」
オレの前に立ち塞がった小次郎の股の間をすり抜ける!実は跳び上がった瞬間、草を掴んで跳び上がりをキャンセルしたんだ。
すまんな小次郎。オレは心の中で手を合わせておいた。小次郎だからこそ、オレの策に反応出来たのだろう。股抜きを察知した小次郎は、さらに腰を落としてオレを遮ろうとしたのだ。
ぐんにょりした感触が頭に残っている。子供が出来なくなったら、オレが養子を世話してやるからな!
と、そこまで走ったら、チーン!という音と共に急に力が抜けて来た。
「オ?オォ?」
「はい。若竹丸様。ここまでで御座ります」
富田兄弟の兄、清元に捕まってしまった。
アレ?なんで?
調べてみたら、能力値をポイントで上げるのは時間制限付きなんだって!
トホホ、そんなに上手い話は無いか〜。
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