右京さん、左京さん
今日は、京職の復活が決定したお祝いをしている。ほら、前に幕府の伊勢さんが京の仕事を任せたいって言ってたヤツね。
京職が出来ると貧乏公家の就職先が出来る。それに多くの下働きが検非違使から引き抜かれるそうで、検非違使も人員を募集。武家や牢人どもも喜んでいるそうだ。
検非違使が警察だとしたら、こっちは市役所。前世と違うのは、どちらも裁判所を兼ねている所かな?検非違使が刑事事件担当で、京職は民事事件担当だね。
「しかし、コレから左京は大変じゃぞ」
「上京はともかく、下京となると、今から気が重いですな」
「検非違使で使っておる桜党を紹介してやる。元々は浮浪児の集まりだったが、中々に有能でな……」
左京ってのは、東側半分。南を向いて左側だからね。
「右京はほとんど田畑ばかりですからな。おまけに田畑は鷹司家がほぼ把握している」
「ははは。把握とまでは。色々とお手伝いするので、出入りさせて貰ってあるだけでおじゃる」
「いえいえ、出入り出来るだけでもありがたい。おまけに検地せずとも収穫量がわかりますからな」
そうなんだよな。在富の授業で教えて貰ったけど、私有地には朝廷も勝手に立ち入り出来ないんだって。まあ、不法侵入だからなぁ。
前世のテレビで見たけど、強制執行とかで私有地に入るのに裁判所命令の紙とか見せてたじゃん?あんな感じなのかもね。
今回復活した京職のお仕事は、お店や住人の把握。度重なる戦乱で、戸籍とか商人の登録書とか殆ど焼けちゃってるから、それを再調査することから始めるんだ。
「下京の把握が出来れば、税も取れる。その税から我らの賄いが出るからの。賄いを取るのは同僚の賄いを掠め取る行為じゃ。即座に斬首じゃ!」
「はははは!賄いと賄いの違いを教えておかねばなりませぬな!」
「わははは!」
何やら、官司ジョークで盛り上がっている。
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ところで、なんでオレがこんな席に出ているのか?
「若竹丸様!我ら精進する故、菅公様にも、よろしくお伝え下さりませ!」
「ダゥー!」
「励みなされとの仰せでち」
「はは!ありがたき!」
たまに在富の事務作業を手伝っているじゃない?あの、書類のミスを見つけるヤツ。あの話が京の事務職に広まってさ。何かあったら菅公に縋りたいってんで、事務員達に拝まれる様になったんだよ。それで今日はここで神棚代わりにされてるって訳。
「へへへ、若竹丸様。次はお見逃し頂けるよう菅公様に上手くお取りなしお願い致します。ついては、この金のおまんじゅうを…」
たまに、こういう勘違いしているヤツがいるけどね。
ピカッ!ピシャーン!
「水櫓に雷が落ちたぞー!」
「菅公様がお怒りじゃー!」
「おぬし!若竹丸様に何を申した⁉︎」
「ヒエエ!」
ちゃんと在富様が見ている。
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