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鷹司家戦国奮闘記  作者: 若竹
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【閑話】[貧乏貴族]兵衛くんの嫁取り合戦 その3

兵衛くんは若竹から離れて働く事になりました。


若竹には見えない所での話になりますし、

本編とは時系列がズレるので、ここからは閑話とします。

 俺は林兵衛(ひょうえ)伴兼(ともかね)。鷹司家青侍(せいじ)の地下人だ。俺は今、大和国(やまとのくに)平群(へぐり)郡にある嶋城に来ている。いわゆる調略だ。嶋城は大和川から生駒に抜ける街道沿いにある重要な城だ。


 今、大和国は東西からじわじわと圧力が掛かっている。曾布(そふ)から葛城(かつらぎ)は、三好家の松永(まつなが)弾正(だんじょう)様の主導で調略が入っていて、俺はその手伝い働きをしている。どんな事をしているのかと言うと……


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 今、俺は嶋城の屋敷にある広間で上座に座っている。わざと狩衣を着てきた。これは、勘解由小路(かでのこおじ)様から頂いた物で、超高級品。


「ナ、ナルホド、ナルホド……」


 ガクガクしながら俺が差し出した手紙を読んでいるのが嶋豊前守(ぶぜんのかみ)清国(きよくに)殿。この城の城主だ。一万石のお殿様だな。ちなみに豊前守は自称なので、俺がそう呼んではいけない。朝廷の人が認めてくれたって話になるからな。


 この手紙は検非違使佐(けびいしのすけ)の二条晴良(はるよし)様からの質問状。


廷尉(ていい)様に置かれては、事の他、大和国の現状を気になされておりましてな」


 清国殿は青い顔をして手紙を見ているが、それも道理。検非違使からの当たり障りない「あんけーと(?と言うらしい)」なのだが、「最近、荘園の管理はどうですか?」って内容なのだ。


 この質問状、実は、興福寺の大和国支配は正当な物でないと、暗に言っているのだ。朝廷も幕府も興福寺の守護を認めていないと。


 俺は、清国殿の青い顔を眺めながら、勘解由小路様の解説を思い出していた。


 --------------------


 そもそも、貴族や寺社などが保有する大規模な私有地。それが荘園です。各地の土豪の土地は荘園とは言いません。気を付けて下さいね。


 離れた土地にある大規模な私有土地を管理するため、「荘」が置かれ、「荘」の管理区域を「荘園」と読んだのです。初めは小規模なものでしたが、時代と共に大きくなります。


 例えば、近衛家の島津荘(しまづのしょう)日向国(ひゅうがのくに)大隅国(おおすみのくに)薩摩国(さつまのくに)の三ヶ国にまたがり、最盛期には八千町を超えていました。


 多くの田畑が開墾され、日の本全部の荘園を集めると、朝廷の公領と同じほどの広さがあったそうです。


 本来、荘園も租税の対象でしたが、不輸(ふゆ)と言って免税の仕組みもありました。大貴族などは自分達の荘園を不輸にしたりしていました。そして、寺領には不入(ふにゅう)と言って検地や検非違使の立ち入りも拒否できる強い権利が認められたのです。


 免税どころか、朝廷や幕府からも逃れられる。多くの土豪や、荘園を押領した領主などが、寺へ寄進を始めました。これにより、興福寺は巨大な領地を持つ事になったのです。


 さて、本題です。では、大和国の公領は?大和国にも国司がいて公領がありました。今はどうなっているのでしょうか?


 実は殆どが興福寺などの寺領とされているのです。


 --------------------


 朝廷や幕府から見たら、大和国は興福寺が押領しているとも言える。現状が長く続いていたので、何となく正式に認められた感じになっていただけなのだ。


 大和国の支配層にしてみたら、天地がひっくり返った気持ちだろう。


「関白様によると、嶋家の本姓は藤原姓であるとの事。その為、特別にお声掛かりがあって、(それがし)が遣わされたのでござる」

「ヒェ!か、関白様ぁ?」


 そう。他の城には斯波家や大内家などの武士が派遣されてる。三好家や北畠家は隣国の領主だから避けているが。朝廷からの使者は俺だけだ。まあ、関白殿下が無理やり押し付けたんだが。


 要は、俺が嶋家と仲良くなり調略に成功すれば、桂様との結婚に近付くんだ!



しばらく兵衛くんの話しが続きます。

大和で頑張る兵衛くんの明日はどっちだ?


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