トンチが効くのはお坊さん
「ニーニ!ニーニ!」
「ほんに若竹は兄さんがお好きじゃな」
そう、今日は、実相院門跡の忠基兄さんが、ウチを訪ねて来ている。パパンが秋の収穫を送ってあげたお礼だそうだ。
「地元の土豪の山本家が細川に付きましてね。刈り田やら乱妨三昧を働かれましたから、大変助かります」
こないだウチに来てたのは、その相談もあったらしい。
んで、忠基兄ィについて来た小太りのオッサンが庭に控えているのだが、こいつがその山本修理亮だ。
「いやぁ、勘弁して欲しいわぁ。あの時は細川はんに逆らえまへんでっしゃろ?ワテも堪忍言うたんでっせ?おまけに比叡のお山からも尻を突かれましてなぁ。もう、往生でっせ!」
身体をくねらせながら、何やら怪しい「関西弁」を喋ってる。すぐ後ろで見張っている富田兄弟も胡散臭そうな目で見ているぞ。
「その割には、直ぐに京方に付いたそうではないか」
オレの脇に控えた宗滴ジイが聞く。
「そら、そうでっせ!後で聞けば京方は将軍様。お上もそちらに同情してはったそうやないでっか!ワテ、それ聞かされてませんやん!」
こら、あれだ。煮ても焼いても食えないってのはこう言うオッサンの事だ。宗滴ジイも苦笑いしている。
「まあ、朝倉も細川方だったからの。大きな事は言えぬわい」
「そうでっしゃろ!ワテもすっかり騙されましてん!」
コラコラ、縁側に縋り付くな。
「まあ、こんな方ですが、算盤は確か。拙寺の寺領も任せようと思いましてね」
「ええ?こんなヤツを別当に?」
「ああ!忠基はんはホンマに慈悲深いお方でっせ!御仏そのまんまのお人や!」
ええ?こんな、胡散臭いオッサンに任せるの?皆んなもビックリした顔をしている。
皆んなが不思議そうな顔をしているのを見て、忠基兄ィがニッコリ微笑む。
「ウチの寺領は京職の検地を受け入れまして。山本が誤魔化しをすれば、すぐに首が飛びます」
それを聞いて飛び上がる修理亮のオッサン。
「ええ!そんなん聞いてませんで!」
「言ってませんでしたから」
「ちょっと、待っておくんなはれ!」
「因みに修理亮には、特別に私の追腹が課されてます。もう、幕府にも朝廷にも通った話ですからね」
「そんな!殺生な!」
「シュリー、バイバイ?」
「若様も、縁起悪!」
「検地以上の収穫は懐に収めて良いですから」
「そりゃ、ありがとさん!って、ぜんぜん有り難くないがな!」
忠基兄ィも結構いい性格してたらしい。結構いい主従になりそうだな!
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