天神様は学問の神様
「ダー!」
渡された紙を八郎に渡す。
「ニェット!」
書類を投げ捨てる。
「ダー!」
渡された紙を八郎に渡す。
「ニェット!」
書類を投げ捨てる。今、オレは在富の横に座ってる。報告書を持って来た官司が、オレに報告書を差し出すのを受け取って、八郎に渡したり、投げ捨てたりしている。
〇〇し放題の真似して遊んでいる訳じゃないんだよ?神童若竹くんのチートが炸裂しているんだ。
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「紙を投げ捨てられた者は、見直して見よ」
在富に言われて、報告書を見直す官司達。
「あ!コレは!」「しまった!ココを書き間違えておった!」
気まずい顔をしている官司達を見渡すと、得意気に説明する在富。
「若竹丸様は、気まぐれで投げ捨てておる訳ではない。過ちを見つけた物のみを投げ捨てておるのじゃ」
「そ、そんな!」「いくら聡明と申しても、まだ赤子ですぞ!」
そう、言い募る官司達に、ニヤリと笑って打ち明ける。
「若竹丸様にはの、天満大自在天神様を降ろしてある」
「と、言うと菅原の!」
「「菅公!」」
「うむ。菅原道真公と言えば、若き頃よりの俊英。この書類裁きも菅公様の権能ゆえじゃ」
「なるほどのう!流石は今役君と呼ばれる方術使い在富様でおじゃる」
方術と言うよりも詐術だけどな。
「しかし、菅公と言えば、時平様との……」
「藤原の家では差し障りが……」
「それこそ、讒言という物。お二人は父君の代から関わりが深く、詩や贈り物などを交わした関係。それが証しに時平様は極楽寺を定額寺とするための願い状を道真公に代筆してもろうております」
しかし、迷信深いのか、まだ愚図るヤツもいる。
「しかしのう……」
「黙らっしゃい!」
ピシャーン!バリバリ!本当に雷が落ちたぞ。
「そんな事より菅公様は今の朝廷を嘆いておりますぞ!」
「ひえぇぇ」「庭に雷が!」「桑原!桑原!」
雷に驚いて転げ回る公家衆を、在富が追いかけ回す。
「ホレ、お主のコレは如何なる事じゃ?五と二を合わせて、八になっておる!」
「お主のは、ヒエとアワが入れ替わっておるではないか!」
「これなぞ、漢字を書き損なっておる!」
「「「お許し下されぇ!」」」
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在富のヤツ、複式簿記とか導入してやがった。
罫線が印刷された洋紙に、鉛筆やガラスペンまであるぜ!確かに筆で書かれるよりも細かい字が書けるから、効率的ではあるけどな。
報告書の書式も横書きに統一してあるし、アラビア数字も使っている。
こちとら定年退職した前世記憶がある赤ん坊だ。それなりに部下を持った経験だってある。報告書のチェックなんて何年やっていたか、分からないぐらいやっているんだよ。
まあ、前世の部下達は曲がりなりにも大卒だった。教育レベルの低い今の時代に、あのレベルを求めてはいけないんだろうな。
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間違いを見つけて差し戻すだけでも助かるって事で、この後、時たま在富を手伝う様になったんだ。そしたら今度は散歩中のオレに報告書を差し出す官司が続出した。そんな事するなら、ちゃんと見直せとの沙汰が出たらしい。
だが!それよりも!今回、素早く書類を捌いたのオレじゃん?オレのチート無双が炸裂した筈なのに、在富の方術無双って事になってた。解せぬ。
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