近衛兵と突撃兵
ウチのって言うか、オレのお付きは小姓の八郎と侍女数名、警護の侍が何人かいる。
細かい事を言うと侍女はマンマの侍女なので、八郎と警護の侍達がオレの家臣って事になる。あの佐々木小次郎もその一人。
鷹司家はジィジの代まではチョー貧しかったから、家臣が少ないんだよね。なので、オレの家臣の侍は最近雇ったヤツが多い。
最近雇った侍は元々はどこかの大名に仕えていて、伝手を頼って京に来たのがほとんどだ。なので、戦に出た事があっても、警護ってした事が無いんだよね。
そもそも警護役って、殿様に信頼されているヤツしかなれないから、ペーペーの家の三男坊とかじゃ、ムリなんだって。
何が言いたいのかって?ウチの侍達は突撃要員だったヤツが多くて、何かあるとそっちにすっ飛んで行っちゃうんだよ。
この時代の侍って、敵の首を取ってご褒美貰ってるのが普通だからなぁ。
--------------------
ガラガラ、ゴロゴロ。毎度、お馴染み、若竹様のお散歩です。ご家庭内の古新聞、古雑誌がございましたら、多少に関わらず、お声かけ下さい。
最近の子は、ちり紙交換って知っているのかな?
いつものお庭の散歩コースなんだけど、たまにタヌキとかが紛れ混んでくるのか、タロジロが吠えながら、何かを追いかけて行く時があるんだ。
そうすると、護衛が皆、ついて行っちゃうんだよね。
「ややっ?何者かが潜んでおった様子。者ども、出会え!出会え!」
また小次郎が、すっ飛んで行っちゃったよ。他の護衛も釣られて駆けていく。
「バブー……」
また、ポツンと取り残されたオレと八郎。(および侍女達)
赤ん坊の散歩の付き合いじゃ、退屈だよな?飽きているのはわかるけどさ。ウチの敷地内とは言え、不用心過ぎんかね?
すると、反対側の茂みがガサガサいう。ハッと緊張すると、侍女達が、壊刀の柄を握りながら乳母車の前に立つ。
「何者か!」
スゲー!小次郎達よりも頼りになるな!一番年長の侍女が鋭い声を掛けると茂みから笑い声が返ってきた。
「ハッハッハ!おなごの方がよほど頼りになるな!」
茂みからガサガサと音を立ててで出来たのは宗滴ジイだった。若い侍を二人連れている。ジイが地元から呼び寄せた富田兄弟。二十歳前後の若侍だ。
お兄さんが、清元さん。弟が景政さん。特にお兄さんの清元さんは剣の腕が凄まじくって有名なんだってさ。
しばらくして槍にタヌキをぶら下げた小次郎達が戻ってきた。
「ハッハッハ!やはりタヌキでござった!今夜はこれで…げぇ!宗滴様?」
護衛達には、宗滴ジイから後でじっくりお話があるそうです。
「小次郎殿ではありませぬか!」
「お?おう!富田兄弟ではないか!しばらくぶりじゃのう!」
同郷って事で、小次郎とも嬉しそうに話していたよ。どうやら、頼りない先輩としっかり者の後輩みたいだけどね。
オレも乳母車の中からご挨拶。
「ウッウー!」
「こ、こちらが我が主君の若竹丸様じゃ!あ、紹介はもう済んだ?」
ここで護衛は富田兄弟と交代。小次郎を初め、タヌキを捕まえに行った者達は、宗滴ジイに連行されて行った。
みっちり護衛術を叩き込むんだって。
「面白かった!」「先が気になる!」と思ってくださった方は、お気に入りの登録と、下の☆☆☆☆☆で評価してくれると、作者のモチベがアップいたします!よろしくお願い申し上げます!




