押せば命の泉沸く!
「マンマ!」
「はーい、ママですよー」
近頃マンマは、おたたさんと呼ばせるのを諦めてくれた。まだオレが発音出来ないから仕方ないんだが。
「ウィーイ」
「ジィジ!じゃ!」
さ行はまだ上手く言えないんだよね。
「バーバ!」
「まぁ!よくわかるのねぇ。バァバですよ」
今日は鷹司ジィジが奥さんを連れてきた。即ち俺の祖母だ。
「ほれ、パッパだぞー!」
「ブー!」
「なんでオレはブーなんだよ!」
オレのブー扱いにキレている忠冬パパンだが、お前なんぞ、ブー扱いで十分じゃ。
「若竹、私は?」
「ネーネ」
「よく出来ました!」
「「若竹、私たちは?」」
「ネーネ、ネーネ」」
「「わーい」」
「わ、若竹、パパンは?」
「ブー!」
「なんでじゃー!」
オレは別にパパンに意地悪をしているんじゃない。ちょっとハイハイらしくなってきたずり這いで、僧形の男性に近づく。
「ニーニ」
「おお、よく出来ましたな!若竹丸様!」
この人は、実相院門跡の忠基さん。京の北にある結構大きなお寺だそうで、夏の戦いの時は大変だったんだって。
「山門を閉ざして、震え上がっておりましたよ」
オレが、ニーニ、ニーニと纏わりつくので膝の上で抱っこしてくれたよ!
見上げると、「ダー!」とかって変顔してくれる。
「ウキャキャ!」
イケメンの変顔、チョー最高!オレ様、チョーご機嫌!
--------------------
実は、この忠基さん、オレの兄さんなんだ。エェー!衝撃の事実!
実はマンマの前に奥さんが居たんだって!もう、亡くなっているんだけどな。忠基さんはその時の子。
そしたら忠基さんが長男で家を継ぐんじゃないの?って思うじゃない?でも、その奥さんの実家の関係で正式な結婚が出来なくて、忠基さんは鷹司を継ぐ事が出来ないんだって。
だがしかし。オレも前世はアラカンまで生きた男だ。複雑な事情があるのはわかる。そこはわかる。わかるんだが、オレが怒っているのはさ……。
忠基さん、どう見ても二十歳ぐらいなんだよね。マンマと変わらない。オイ!忠冬!オメー!自分の息子の方がマンマと歳近いじゃないか!って言うか、息子とほとんど歳の違わない嫁さん、モロタんか?
ちぐしょ〜!謝れ!アラカンまで生きて、ヨメどころか、彼女も出来なかったオレに謝れ!
そうですよ!嫉妬ですよ!嫉妬ですが何か?こんなデカい息子がいるのに、可愛い嫁貰いやがって!嫉妬!シット!しっと!
今ならあのマスクが被れる気がするぜ!
「しっとの心は!@#!…ムガムガ…」
「あい、お昼寝の時間でちー!」
あっと言う間に、八郎に連れ去られるオレ。
「アレ?若竹丸様なんか話してなかった?」
「気のせいでしょ?赤ん坊が話せるハズないじゃん」
オレ達が居なくなった後で、そう侍女がしゃべっていたとかいないとか。
「面白かった!」「先が気になる!」と思ってくださった方は、お気に入りの登録と、下の☆☆☆☆☆で評価してくれると、作者のモチベがアップいたします!よろしくお願い申し上げます!




