若竹丸のお部屋拝見〜!
産まれてから3日目。そろそろ周りの様子も分かってきた。
まあ、まだ目はよく見えてないし、動き廻る事が出来ないから、若竹マンマの部屋だけなんですけどね。
部屋は12畳。畳敷き。さらに真ん中に3畳の広さに畳を重ねて高くしてあり、そこにフカフカの布団を敷いてマンマが寝てる。布団の横には籠が置かれ、オレが寝かされている。
部屋の南側は縁側になっている。東屋に行く時は縁側から庭へと籠ごと手渡され、オネーサンに運ばれていく。東側はパッパの部屋。西側は囲炉裏がある板の間。北側は床の間になっていて、花を飾ったり、香を焚いたりしてる。
花や香はマンマ御付きのオバさまが指示してる。マンマの実家から着いて来たそうで、どうやらマンマのお世話役みたいだな。
マンマは「ミヤさん」と呼ばれてるのだけど、いかにもお姫様なオーラに溢れている。忠冬パッパより随分と若いのだけど、身分はマンマの方が高いらしい。忠冬パッパは見た目30ぐらいだが、マンマは20前後に見える。逆タマの上に10歳も年下のヨメをもらったのか⁈あのオヤジ!許すマジ!
「あらあら?若さんは御機嫌のご様子、お乳もオシメも先程すましたばかりなのに、どうしたのでしょう?」
オレが勝手に興奮してフンスフンスと鼻息を荒くしていると、隣りの部屋から乳母が入ってきた。お湯を張ったタライを運んで来たらしい。板張りの部屋の向こうは土間になっている。土間には手押しポンプがあって、そこで汲んだ水を板の間の囲炉裏で沸かしている湯と混ぜ、ぬるま湯を作っている。そのお湯でオレのお尻を拭き拭きしたりするのだ。
「ほんに、どうしたのでしょうね?ついさっきまで大人しく寝てたのに?」
マンマは手慣れた感じでオレの状態を確認すると乳母に手渡す。
「少し遊んであげたらどうかしら?阿茶殿、お願いできますか?」
「ええ、お任せくださいませ。ミヤさんは、お休みしてくださいませね」
部屋に入ってきた乳母は「アチャどの」と呼ばれている。彼女もおったりしたお嬢様っぽい女性だが、身分はそれ程高くないらしい。ホントかな?オレを受け取るとあやし始めた。
「若さんは、どちたのかしら?お遊びしたいのかなぁ?」
オレを抱きながら、空いてる手の方で裾をゆっくり振ってくれる。ついつい目で追ってしまうオレ。なんだろう?赤ん坊の本能なのかな?
もう一人の乳母は「メゴさん」って呼ばれてる。今は隣の部屋で女の子達の面倒を見てる。女の子はたぶんオレの姉さんとかなんだろうな。こっちの部屋に入りたがるのをメゴさんが押さえている様だ。
「あ!」
「タロ、ズルい!」
部屋の外が騒がしくなったと思ったら、ワンコが一匹侵入したらしい。
「あらあら、タロは若さまにご挨拶かな?」
オレを抱いているアチャさんは、大して慌てずにワンコがオレの匂いを嗅ぎやすいように差出している。
「ちゃんと覚えて、しっかりとお守りするのですよ」
「ワン!」
なんか言い聞かせているけど、理解してるのかな?タロと呼ばれたワンコが吠えると、それを合図にみんながなだれ込んできた。
「うわー!ちっちゃい!」
オレの姉?達だけでなく、タロの兄弟も何匹かいるようだ。
部屋になだれ込んで来たが、オレの周りを取り巻いて眺めている。その辺はちゃんと躾けられているようだ。
「はいはい。おヒイさん達が沢山で取り囲んでは、若さんも驚いてしまいますよ」
アチャさんは、皆にオレを一通り眺めさせると、上手く声をかけてくれた。メゴさんも連携して部屋の外に誘導して行く。
「さあさ、おヒイさん達はユキ達とお庭へお参りましょう」
女の子とワンコの一団は、庭の散歩に旅立っていった。
女の子も集団だと圧がすごいな!
【今回のやらかし】
忠冬達がやらかした事案をここで解説します。
綿布団:そもそも木綿の栽培が普及していませんでした。忠冬達が動き、瀬戸内や九州で木綿栽培が始まっています。