秋の夜のあくるも知らずなく虫は……
虫の音がうるさくて寝不足の若竹です。虫の音って、こんなに煩かったかなぁ?チクショウメ!佃煮にして食ってやろうか?
とか、思っていたら、八郎が虫を捕まえ始めた。オレが驚いていると、散歩に付いてきた皆んなで虫を捕まえ出したよ。
網やら籠やら、手回しがいいな!
おい、八郎。お前に向けて無い思考は、読めないんじゃなかったのか?
「ダァ?」
「コウロギは立派な栄養源でち!在富様がおっしゃっていたのでち!」
なんだ、オレの思考を読んだんじゃなかったのか。在富が昆虫食を広めたらしい。今日は散歩のついでに虫を捕まえる予定だったんだと。
食べ物が少ないこの時代、虫も立派な食べ物なんだね。偉いお公家様から広めてくれたので、抵抗も少ないらしい。
色々な食べ方が広まっているそうだ。なかでも虫を油で揚げたのが一番美味いらしい。だけど、油は高価だから、虫の油揚げは、鷹司家ぐらいしか食べれない超高級食材なんだと。お付きの侍女が新参の子に自慢している。
「ホレ、多めに頂いたから、皆も食べるとよい」
護衛として付いて来た佐々木小次郎が、持っていた袋からイナゴを取り出して、皆んなに分けてる。可愛い子が多いからカッコつけてるな。鼻の下が伸びているぞ!
「ほう、これは意外と美味いモノですなぁ」
護衛役のオッサンもお裾分けを貰ってる。油断しすぎじゃない?
「足はエビのような風味でござるな」
「我が国には大きなエビがおりまして…」
「安芸には牡蠣が……いえ、海におる貝でござる…」
「淡路は潮が速いので、魚の身が締まっておって…」
いつの間にか、お国自慢と交流会が始まっているぞ?
「「うまし、うまし」」
コラ!イナゴをポリポリ食べながら、庭を歩くんじゃありません!
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虫と言えば、ウチの庭では蜜蜂が飼われている。養蜂専門の人たちが雇われているんだよ。なんでもニホン蜜蜂は養蜂するのに苦労するんだってね。
「蜂が逃げぬよう、住み易い巣箱を作るには苦労いたしました」
今ではいくつもの巣箱に女王蜂がいて、たまに逃げられても問題無いんだそうだ。でも、逃げられない方がいい。小まめに面倒みてあげると、蜂の方でもわざわざ他に巣を探しに行かないんだって。
「蜂のお陰で今年も豊作ですだ」
果樹園を管理している家人もニコニコして巣箱の手入れ作業を見ている。
「ウッウー!」
「んー?赤子に蜂蜜は厳禁でち!」
ちぇっ!そんなの知ってらい!
でも、ちょっとだけ……
「ダメでち」
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