真なる鷹司
今日もお庭を散歩中。マンマに抱っこされてのお散歩だけども、うちのマンマは下から見ても美人だぞ!東屋の縁側に座って一休み。三人の姉ちゃんもマンマに貼り付いてオレを覗き込んでいる。
マンマに貼り付きたいのか、オレを見たいのか?
「「「デヘヘ〜」」」
両方なんだろう、だらしない顔になっているぞ。
「若ちゃん、こっちこっち!」
声をかけるとオレがぐるりと首を回すので、それが楽しいらしい。オレも首の筋トレになるので、飽きずに付き合っているよ。こう言うトコ、子供の集中力は凄いよな。
「宮さま、お茶が入りましたぞ」
オレ達が親子団欒をしていると東屋の奥から、声がかかる。
この間からウチに居候している朝倉のジジイ宗滴だ。
こいつはジィジなんて可愛いモンじゃないのでジジイで十分だ。
「宇治まで行って、茶摘みをしましてな。茶葉を煎じてきたので、煎茶を淹れて見ました」
おい、お前、危険だからウチで匿っているんじゃなかったのか?いつの間に宇治まで出歩いているんだ?フリーダム過ぎるぞ!
「茶の湯も、いろいろとやりましたが、煎茶も、また面白いですなぁ」
ノホホンとのたまう朝倉のジジイ。こうやっていると好々爺ってのがよく似合う御隠居にしか見えない。
「ジィジ、私には?」
「おお、姫さん達にも用意しておりますぞ。こちらは少し冷ましておりますので、飲みやすいですぞ」
これで、そつがないんだよな。スーツ着せたらセバスチャンと呼びたくなるような物腰。ジジイから、ジイに格上げしてやっても良いかもしれない。
「ほれ、若さまには、桃の果汁を用意いたしましたぞ」
よし、君はジイに決定!(チョロい)
タロとジロの餌も抜かりなく用意している朝倉のジイ。なんでも、故郷では鷹を卵から育てた事もあるそうで、意外にマメな爺さんなんだよね。
「鷹を育てるのが趣味だったワシが鷹司に世話になるのも何かの縁かもしれませぬな」
自分でも茶を飲みながら、しみじみするジイ。なんだか万感がこもっていたぞ。戦の後の平和な日々に思う所があるのかもしれないな。
「「「「「ズズズズー」」」」」
なんで、みんなでお茶を飲むと爺むさい空気になるんだろう?
「この、若き鷹を育てるのが、最後のご奉公となりそうですなぁ」
アレ?なんかジイがオレをロックオンしている気がするけど、気のせいだよね?
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戦は終わったと言うのに、マンマの部屋で、きな臭い話をするのは変わっていない。クセになっちゃったのかな?
まあ、一番きな臭い話はオレ達が散歩行っている間に済ませたようだけどね。
問題になってるのは、この間の戦で細川方に付いた寺社。坊さんをコロスなんてとんでもない!って時代だし、そもそも寺社のトップは皇室や公家から出家した人達が多いんだって。
「皇族を罰するのも、色々と問題があるしの」
近衛のジィジもウチのジィジも困り顔だ。
「叡山の僧兵も、本願寺の一揆衆も、いろいろ厄介な者どもだからな」
「どちらも宗滴は詳しいのではないか?」
「いえいえ、当家でも如何とも出来ませなんだ」
両手を上げて、お手上げのポーズをする宗滴。摂関家のジィジ二人はため息をつくばかりだ。叡山ってのは比叡山延暦寺の事で権威あるお寺。本願寺も信徒の一向衆による一揆が有名で、加賀の国を乗っ取っちゃったんだと。どちらもオレでも知ってる有名なお寺だ。
「興福寺も京までは来ていないが、僧兵を出している」
「大和は三好の家人が抑えていたそうじゃ」
「叡山と本願寺を取り除けたとしても、法華宗もおる、あ奴らも喧嘩っ早いからのう」
「問題山積でございますな」
「「「ハァ〜」」」
なんか、血の気が多過ぎない?この時代のお坊さん。
【今回のやらかし】
忠冬達がやらかした事案をここで解説します。
この時代、お茶と言ったら抹茶で煎茶を啜って飲む作法はない筈ですね。
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