幕府領
兵衛隊の快進撃は京でも大評判になったよ。武甕槌の兵衛少尉とか呼ばれている。
山一つ向こうの戦だし、京方が勝っている話しだからね。話題にしやすいんだろうね。
侍女の桂も皆んなから揶揄われているけど、なんだか幸せそうな感じ。そろそろ、結婚の準備も始まったかな?
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今日は新右衛門さんが来る日!新右衛門さんはウチとの連絡係だからね。
ダバダバダバダバ。
「シンエモンシャーン!」
「シンモンシャン!」
「シーモーシャー!」
「おお!皆さまお元気で!」
「お、お主、大丈夫か?」
いつも通り赤子ツリーになる新右衛門さん。あれ?珍しいね?伊勢さんが来ている。ちょっと新右衛門さんに引いているね。
「今日は鷹司様にご相談がありまして、罷り越しました」
いつになく真剣な伊勢さん。伊勢さんは基本、真面目な人だからあんまり冗談とか言わないタイプなんだけど、今日はいつにも増して真剣だ。
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伊勢さんの相談とは丹波国の事だった。
丹波の船井郡は今、兵衛達が戦っている桑田郡の隣りなんだけど、そこの桐野河内は幕府御料所なんだって。
そこは、伊勢家の知行地も含まれている。北野社領など他の領地もあったりするので、蜷川家が管理していたそうなんだ。
丹波国は細川京兆家が守護になってから子飼いである郡守護代を置いて、伊勢家の領地にも色々嫌がらせをしていたんだってさ。
その嫌がらせに対抗していたのが新右衛門さん。新右衛門さんも裏では苦労していたんだねぇ。
「恥ずかしながら、我らでは力不足でしてな」
「シンモンシャン、ワカタケが、メッ!シテクウ?」
「ははは。若竹様の家臣がメッ!てやって頂いておりますから大丈夫ですよ」
大変なのに、笑って済ます新右衛門さん。苦労人だねえ。クー!
「シンエモンシャーン!」
「シンモンシャン!」
「シーモーシャー!」
オレが抱きつくと乳兄弟の二人もしがみついている。
「ええい!お前ら!話が進まぬわ!」
パパンが怒っているけど、スルー。今のうちにシンエモニウムを補給しておくのだ。
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伊勢さん達はこれほど早く丹波国で平定が進むと思っていなかったらしい。しかも戦となれば幕府の面子もある。出来たら、幕臣を与力としてつけて欲しいんだって。
与力になるのは、松井山城守さん。兵衛と大和国で一緒に戦った人だね。それと新右衛門さんも。
「某も伊勢家の伝で調略をしておりますが、なかなか捗らず。蜷川なら地縁も多いのですが、京にいてはそれも進まぬので、是非、一緒に丹波へと」
「是非とも蟠根寺城も使って下され」
お城も使わせてくれるって!
ますます、丹波平定が捗るね!