2人に俺が生きていたことがバレたけど、反応は違ってました
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「来た・・」
なだれ込んでくる帝国兵達を迎え撃つ俺は、あえて左右に移動し揺さぶることをせず正面から斬り込むため駆け出しながら、チラッと一瞬だけ背後に背を向け呟く。
「・・シマチたち、手伝ってくれるよな?」
一抹の不安を抱きながらも帝国兵の人波の激流へ正面から飛び込んだ俺に命を狙う複数の剣を弾き捌きながら、姿勢を崩され無防備な兵を斬り捨て蹴飛ばしながら前へと進みながら自分にげきを飛ばす。
「はっ・・足を止めたら一気に飲み込まれて終わりだ! 行けっ! オレ!」
激流の終わりが見えない戦いの中で時間と共に腕や足そして背中に切り傷が増えていくも、どれも浅い傷で致命傷に至らないが確実に疲労は蓄積され動きにキレが無くなって行くのが自分でもわかる。
「いつまで続くんだよコレ・・・・死ぬ・・死ねない」
騎士団時代の殿の戦いのように一撃必殺で帝国兵を斬り捨てていくも、致命傷を与えられなかった帝国兵を背後へと置いて次の狙いを見定めている中で、背後から俺の背中を狙う帝国兵がいないことに意識を背後へと向けた僅かな時間に隙を見せてしまった。
「やべっ・・」
右側にいた帝国兵が槍を鋭い突き出しで喉元を狙っていたことに遅れて気付き、薄皮一枚を切られたところで回避し動きを止めた槍を掴み帝国兵の首を斬り飛ばそうとした直前で、目の前の兵の頭を矢が貫いた。
「カイッ!」
名前を呼ばれ振り返ると、どうやら斬り殺せなかった帝国兵をサーシャが弓矢でトドメを刺してくれていたようで、思わず彼女を褒めた。
「できる女だ! サーシャ!」
「バカッ! 前を見なさい!」
バシュッ!
戦いの最中で褒めた俺の顔スレスレにサーシャが放った矢が空気を切り裂く音を響かせながら通過し、背後で射線上にいた複数の帝国兵達を貫き絶命させてくれたおかげで、その屍を踏み越え先へと進む。
「助かる!」
どれくらいの帝国兵を斬り捨てながら前へと進んだかわからなくなっていた俺は、襲い掛かる帝国兵が後退し距離を取る行動にで始めたところで動かしていた足を止めた俺は、地面に片膝をついて乱れた呼吸を整え周囲の状況を見渡していると、複数の見覚えのある顔が驚きを隠せないでいる表情で俺に視線を向け立っている姿があった。
「・・なんだよ? まるで悪夢を見ているような顔しやがって」
「カッ・・カイ、おまっ・・おまえ・・生きてたのか?」
「はぁ? 俺が生きていたら、何か不味いのか? ジーニス?」
俺を見ていた1人のジーニスは、俺の姿に目を見開き驚愕している反応がなぜか面白い。そんなジーニスを見ていた俺は、次に帝国兵に捕らえられているアリアへと視線を向け重なった数秒も満たない時間で逸らされたことに、彼女にかけようとした言葉を飲み込んだ。
(なんだよ、その反応・・元彼の俺が生きていたことを否定したいのか?)
もう一瞬も目を合わせないどころかアリアの視線は俺ではなく、ずっとジーニスの方に向けられ固定されていることがわかり、俺は勇者クンへと顔を向ける。
「よぉ・・なんか、ひさしぶり」
「・・・・また、あなたですか? 今は邪魔しないでくれます?」
「そう言われてもな・・そっちの兵士が襲ってくるから仕方なく・・だよ」
「たしかに・・そんなに疲労困憊なら都合がいいですね。こないだ果たせなかった排除を・・・・このまま殺してもいい機会ですね?」
久しぶりの対人戦闘で自分の足が先に限界を迎えプルプル震えている俺を、さっそく殺そうと勇者クンは持っていた剣の切っ先をスッと俺に向けたところで、少しでも時間稼ぎをと思い話しかける。
「俺を殺す? そんなこと言ったら、うちの美人エロフさんが黙ってないぞ?」
「エロフ!? あのエロフの子がいるの・・うわぁっと!」
エロフと大声で叫んでしまった勇者クンがさっきまで立っていた場所に、10本近い矢が連続で彼を追従するように地面に深く突き刺さる。
ドスッ・・
「ひっ・・」
勇者クンを狙っていた矢の最終弾が着弾した数秒後に遅れて俺の足元に1本の矢が着弾し、その痕跡を消すかのように矢は砂塵となって消える。
吹き抜けていく風と共に待っていく砂塵を見送ると、視線の先には矢を放った姿勢のままのサーシャが怒っているような表情で見ているように見えるも、彼女の攻撃で時間稼ぎができたことで溜まっていた俺の疲労はある程度回復できていたのだった・・・・。