腐っても勇者は強大な存在だったと、身に染みて感じました
アクセスありがとうございます。
最近サブタイトルを決めることが、やっつけ仕事になっている気がしますよね?
勇者クンの別の仲間が潜んでいる危険性を失念し、不意に現れたミユキとの再会に驚きながらも足は自然と動き彼女の手を取り引き寄せ近くの木に隠れる。
「カイ? どうしたの? それに彩夏ちゃん抱えてるし」
「この子は人質的なやつだよ」
「あの時の私みたいに連れて行くの?」
「いや、この子はもう少し活躍してもらっった後に勇者クンにちゃんと返すよ。それと、ミユキに一つお願いがあるんだ」
「うん、何したらいいの?」
担いでいた黒髪少女を地面に下ろし横にさせてから、勇者クンが持つ聖剣の威力で傷ついた両腕をミユキに見せる。
「この傷を治してくれないか?」
「うわっ・・酷い火傷・・すぐ治すね」
ミユキは敵側の俺に対して躊躇うことなく治癒魔法を行使し、あっという間に赤黒く爛れていた腕が元通りに治った。
「ありがとう、ミユキ助かった」
「いいよ、これぐらい。でも、ごめんね・・あの子の足は、私にも治せなかったの」
ミユキは顔を逸らし向けた視線の先には、勇者クンの隣りで立つ黒髪少年が引き摺り回しているネルルという少女に向けられていた。
「ミユキ・・生きているだけマシだよ・・この世界は」
「そうなのかな・・」
無意識に落ち込んでいるミユキの頭を撫でてしまう手をハッとした気持ちでサッと離すと、悪あがきの様に木に隠れた俺に対して勇者クンが大声を出す。
「そこにいるのはわかっている! さっさと大人しく出てこい!」
「・・勇者クンのご指名だ。ミユキ、元気でな?」
「うん。カイも元気でね」
「あぁ、とりあえず今は勇者クンから逃げ切らないとな」
「がんばっ」
ほんの僅かな時間の中でミユキと言葉を交わした後に、アヤカという名の黒髪魔法少女を抱き抱え勇者クン達の前に姿を見せ対峙する。
「・・彩夏! 返事をしてくれ!」
「・・・・」
俺に担がれているアヤカは気を失っているため勇者クンの呼びかけには反応しない。そんな彼女がピクリとも動かないことに焦っているのか、勇者クンは俺を睨みつける。
「お前! ボクの・・ボクらの彩夏は生きているんだよな!?」
「あぁ! 生きているぞ? 一つ交換しないか?」
「交換? 何をだ!?」
互いに捕虜を確保している状況の中で、俺はアヤカという少女とルミナの部下で探し人だったネルルを交換することを提案すると、ネルルを引き摺り回している黒髪少年が勇者クンより先に口を開く。
「いいぜ! この女はもう使い物にならないけどな?」
「使い物にならない? それはどういう意味だ?」
「はっ・・そんなに意味が知りたかったらこの女に話しを聞いてみろよ?」
「わかった・・そっちがその気なら、俺にもそれなりの応酬があるからな?」
いちいち挑発してくる言動に苛立ちを感じていた俺は、担いでいるアヤカの左足の膝下辺りに片手剣の刃をグイッと当てて僅かに引いたと同時に痛みで意識を取り戻した彼女は悲鳴を上げる反応をしてくれたため、グルッと身体を回転させ勇者クン達から彼女の足が死角になったところで赤い液体が入った果実酒の袋をアイテムポーチから盛大に撒き散らす。
「「「 彩夏!!! 」」」
勇者クン達は、俺からの報復で彼女の足が切断されたと勘違い名前を叫ぶと同時に3人同時に俺に向かって駆け出して来たため俺も同じように走り、間合いに入る直前に担いでいた彼女を全力で勇者クン達に向かって投げ飛ばす。
「仲良く受け取ってみろ!」
俺の突然の凶行に勇者クン達3人は対応に手間取り宙を舞うアヤカが、地面に無防備のまま叩き付けられる結末を回避するため視線が俺から外れた隙をついて、手元が疎かになった黒髪少年へと一気に間合いを詰め、ネルルを繋ぐ忌わしい鎖を片手剣で破断し引き摺られ続けていたネルルの身体が止まったタイミングで回収し軽く感じてしまう身体を担ぎサーシャ達がいる場所へと夢中で駆け出し逃げる。
「・・・・待て!」
背後で聞こえる勇者クンの声を無視して木々を避けながら茂みを駆け抜けた先に出た少しだけ開けた場所に出ると、いつの間にか勇者クンが待ち構えていた。
「はぁ・・はぁ・・嘘だろ? いつの間に?」
「勇者であるボクが本気を出せば、容易いことだよ? 今までは、ほんの遊びだ」
「クソッ・・・・なんで、そんなに俺に執着するんだ?」
「はぁ? 決まっているじゃないか。お前がいると、ボクの思い通りにならないからだ」
「なんだそれ? ただのガキの言い分じゃねーかよ」
「ボクが描いた通りのストーリー以外は認めない・・だから、邪魔になるお前は物語から離脱させる!」
自己都合なことを言う勇者クンに呆れていると急に彼が纏うオーラが激変し、全身を白銀の光に膜のようなモノに包まれたと思った直後に右肩に激痛が走り、右目を反射的に瞑るほどの血飛沫を浴び視界半分を奪われながら全身の力が抜け足元から崩れ落ちる俺は、担いでいたネルルを地面に落としてしまう。
「・・これが女神が認めた勇者であるボクの本気だよ・・・・痛いでしょ? 次は、その足を女のように斬ってあげるから」
正面にいたはずの勇者クンの姿はなくただ右後ろ側から彼のムカつく声が聞こえるため、激痛で意識が飛ぶことなくハッキリしている俺は足元で横たわり小刻みに震え痛がっているネルルの姿を見て、彼女をこんな痛々しい姿にしたクソ野郎が誰なのかを理解する。
「彼女を・・ネルルをこんな姿に痛めつけたのはお前だな? クソ勇者」
「へぇ・・そんな血溜まりが出来るほど垂れ流しているのに、まだそんな無駄口を吐ける元気が残ってたんだ・・ならこのまま死んで退場決定!」
右目は血飛沫で血が入り開けれない状態のため左目分の視野しかない俺は、クソ勇者の声が右後ろ聞こえていたためオモリのように動かない右手側にある愛剣を左手で掴んだところで、ジャリッと地面を蹴る足音を耳にしながら振り向き剣を横に持てる力を出し切り振り抜くと、なんも手応えもなく空を切る。
空振りに終わったと思う俺は、ただ目の前にいるクソ勇者の姿を見ようと左目を動かすもそこに姿はなく、ただその先で聖剣で襲い掛かり包もうとする業火を遮りながら吹き飛んで行くクソ勇者の姿は遠く小さくなり遠い山の向こう側へと消えて行った。
「・・・・今のは、ブレスだよな? スミハか?」
「カイよ、あまりにも遅いから妾が迎えに来たのじゃ・・って、怪我をしておるではないか!? シマチよ、早く来るのじゃ!!」
「わりぃ・・本気の勇者にやられた」
「んにゃ・・すぐに治るにゃ」
絶大な治癒効果があるシマチにペロ舐めで、ギリギリ斬り落とされずに済んでいた右肩部分の傷は完治し俺は立ち上がることができたことで、邪魔者が強制排除された今をチャンスと思いこの場から皆で逃げることにしたのだった・・・・。
評価&いいね!ありがとうございます。
突然ですが、物語の進捗は後半になっているんですよ実は・・・・。
とりあえず、引き続きお付き合いをお願いします。
他の作者さんの作品ばかり読んでるので、投稿ペースが上がらない・・・・。
何か策はないのでしょうか?