どうやら出逢いたくない人が、やってきたようです
アクセスありがとうございます。
事情により長くなっています。
ルミナの先導で街の北側の地域に辿り着いた俺達は、希望した結果は得られず帝国領との国境線に近づいて来ていたため、方針を切り替え街の南側のシマチ達が帝国兵の集結地を見つけた場所へと向かうことにした。
歩いて来た道のりを戻り廃墟と化している街を横目に南へと続く街道を歩き続けること数日が経ったある日の昼下がりに、ふとサーシャが何かに気付いたようだ。
「いるわね・・待ち伏せているつもりかしら?」
「待ち伏せ? サーシャ、どこ?」
「人族のカイには見えない遠い距離よ。ほら、このまま伸びる道の先の左・・あの山の一ヶ所だけ低い稜線が見えるかしら?」
「・・・・あーあそこね。って遠過ぎて何も見えないや」
ルミナやシマチ達に比べ遥かに劣るけど俺も気配探知スキルで探してみるも、結果は予想通り索敵範囲外のため落胆する。
「そう・・このまま道を歩けば、先手を打たれるわよ?」
「だよな? こんな見通しの良い街道を移動し続けるのは不味いな」
街道を歩いていたルートからサーシャが決めた山側へのルートに変更し歩き難く日差しが入りにくく薄暗く感じる獣道をゆっくりと進み続けたあとに、日の当たる開た場所に出て先の林縁に近づき最後尾の俺が入った時だった。
ガサッ
不意に草木が揺れた音が聞こえ視線を向けた先には1人の騎士が、先頭を歩くサーシャに両手剣を構え襲いかかる姿に思わず名を叫ぶ。
「サーシャ!!」
茂みから突然姿を現し、無警告でサーシャに襲いかかる騎士は切っ先をサーシャの胸元へと真っ直ぐ突き出し、武器を持たないサーシャは右斜め後ろから迫る脅威に僅かに反応が遅れているため回避が間に合わない。
ブワッ・・
絶対に回避が間に合わない間合いでもサーシャは身体を素早く捻り反応すると、風魔法を右手から放ち払うように騎士を簡単に後方へ吹き飛ばし無力化した。
「・・油断してたわ」
「サーシャ、大丈夫か?」
「と、当然よ。この私が人族に負けることなんてあり得ないわ」
チラッと俺を見たサーシャは、大木に激突し動かない騎士に近づき調べると黙ったままルミナを見たあとに確かめるように口を開く。
「この鎧の紋章・・王国騎士で間違いないわねルミナ?」
「・・・・それは、そう・・王国騎士」
サーシャとルミナがやりとりをしている間に、俺も騎士の装備を調べていると見覚えのある部隊マークを見つけ、あの時から変わっていないか確認するためルミナにタイミングを見て聞く。
「なぁ、ルミナ・・」
「なに? カイ兄ちゃん」
「この騎士のよりにある部隊マークに見覚えないか?」
「・・うん、知ってる」
俺の問いに答えたルミナの表情が一瞬だけ歪んだことと、彼女が知っていると認めたことで俺の答えは正解のようだ。
「この絵柄は、ドラゴンじゃな? 王国は、妾を狩るというのじゃな?」
王国騎士を俺が調べていたことで、他の3人も傍にいた中でスミハが部隊マークのドラゴンに2本の剣が左右から突き刺すような構図に強く反応してしまった。
「スミハさん、これには理由が・・・・」
スミハの金色の瞳が獲物を狙うかのように鋭くなり、標的にされたルミナは震える声で訳を詰まりながら話す。
「ふむ・・その部隊の女リーダーが、ドラゴンを討伐したことから讃えられ部隊の象徴となったというのじゃな?」
「は、はい・・そうです」
「ルミナよ、そう怖がる必要はないのじゃ。別に食ったりせん・・・・たぶんって、ぃたぁいのじゃ」
ギロッとルミナを見るスミハの頭に手刀を打ち込み、スミハをルミナから離す。
「スミハ、やり過ぎ・・もう話しが終わりか?」
「うぅぅ・・これからじゃったのに・・」
スミハは俺に叩かれた頭を触りながら涙目で俺を見上げているため、仕方なく叩いた場所を撫でると機嫌が戻り甘えてくるけどそのままにして、代わりに続きを聞いた。
「ルミナ、その女リーダーってやっぱり・・」
「うん、アリアさんだよカイ兄ちゃん」
「マジか・・アイツ、ドラゴンスレイヤーだったのかよ」
女リーダーがアリアという名前に、同族を倒されたスミハが口を開く。
「アリア? カイよ、その女を知っておるのじゃな?」
「カイを捨てた女だにゃ!」
スミハに知人だと教えようとしたところで、シマチが余計なことを告げてしまい他の3人娘に俺とアリアの事情がバレてしまった。
「その女リーダーが、カイを捨てた女じゃと? シマチよ、そのアリアと呼ぶ人族の女がか?」
「そうにゃ!」
スミハは真相を知ろうと再び顔を見上げ金色の瞳で見つめているため、無言で頷き肯定しつつシマチにも事実を伝える。
「シマチ、俺は捨てられたんじゃなくて恋仲関係を一方的に終わるとアリアに告げられただけなんだからな?」
「カイ、それを捨てたって言うにゃ!」
「えぇ? 俺ってそうなるの?」
もう既に俺は女リーダーであるアリアに捨てられた男として、4人娘に認定されてしまうという情けない状況に落ち込んでいると、どうやら彼女達の反応は俺が思っていたこととは違う反応だ。
「そう・・カイを捨てた女ね・・もう会う理由ができてしまったわ」
サーシャは、動かない王国騎士を見下ろし冷淡な口調で呟く。
「主を捨てた、人族の女か・・死んでいても墓を掘り起こし見つけ出す必要があるようだな」
ユキナは身体の周囲にある空気の温度を一気に下げると、氷の結晶を出現させ足元を凍らせてしまう。
「シマチは、あの女の顔と匂いを覚えているにゃ・・・・」
シマチは少女姿の時には普段見せないでいる、鋭く長い爪を指先から出現させ猫目を鋭く細める。
「妾も皆と同じ想いなのじゃ・・・・ましてや同族の命を奪った件も詳しく聞く必要がある・・ただでは済ませぬのじゃ」
スミハはユキナとは逆で、風で舞ってきた木の葉をジュッと一瞬で燃やし消し炭とさせてしまう。
「カイ兄ちゃん、このままじゃ」
「ヤバいな・・と、とりあえずみんな落ち着いてくれ」
普段のように正面からだと瞬殺されてしまうと思い、背後から順々に抱き締め頭を撫でると思いのほか昂っていた4人娘の感情はスッと穏やかさを取り戻し、普段の4人娘に戻ったことに安堵する。
「それで、この騎士はどうしようか?」
サーシャの返り討ちにあった王国騎士は、いまだに気を失ったままだ。
「シマチに任せるにゃっ」
バチンッ・・
鋭い猫パンチで騎士の頬を叩き乾いた音が鳴り響くと、彼の顔があり得ないほど横に向きながら全身をビクンッと反応させ死んでしまったと思った俺は、貴重な情報源を失ったと落胆していると騎士はパッと目を開き左右に顔を動かし状況を探っているようだ。
「人族の男よ、自分の立場を理解しているのかしら? もう一度、体で教えるわよ?」
自分の命を狙った騎士にサーシャが声をかけると、王国騎士は抵抗の意志が無いと表現しているのかサッと両手を高く上げる。
「素直じゃない・・人族のくせに」
抵抗をすると思っていたのか、サーシャは逆に機嫌が悪くなり騎士は威圧され怯えていくも、隣りに立つルミナの姿を見て声を上げる。
「ルミナ魔法士団長! どうして貴方様のような方がここに!?」
「黙りなさい!」
「んぐぅ・・っが・・」
突然声を上げた騎士は、サーシャが警告すると急に声が出なくなり、喉元を押さえながらもがき苦しみだす。
「サーシャ? 彼になにをしたんだ?」
「耳障りだから、黙らせたの・・口に空気の膜を貼り付けたわ」
「殺すなよ? まだ貴重な情報源だ」
「ふんっ・・仕方ないわね・・・・人族、カイに感謝しなさい」
サーシャが騎士の顔の前で右手を払う仕草をすると、顔面蒼白でもがき苦しんでいた騎士は、空気を求めるかのように大きく口を開け繰り返し呼吸し咳き込んでいる。
最初は4人娘に尋問を任せる予定だったけど、感情的にサクッと殺めそうなためこの場は俺が尋問をすることに決める。
「騎士さん、落ち着いたかい? このまま素直に名前と所属部隊を教えてくれるかな?」
「・・・・ワイズマン。王国騎士団チャーリー中隊レミー小隊所属・・だ」
「うん、素直でよろしい」
どこか聞いたことのある名前だと思うも、騎士団時代唯一の知り合いだった予備隊の仲間達は戦場で倒れこの世界にはいないため、思いだすのを諦め情報を聞き出す。
「誰の命令で、なんの任務でここに?」
「・・・・」
「言わないと、後ろにいる綺麗なエルフお姉様が怒っちゃうよ?」
「ひぃっ・・・・お、俺は潜伏斥候だ」
「へぇ、潜伏斥候ね・・」
騎士団の潜伏斥候がここにいたということは、この先に必ず騎士団の大部隊がいることが予想できる。そのためこの騎士は、敵方から来る存在をいち早く見つけ後方で待機する部隊に伝えるためだからだ。
「なぁ、ワイズマン。他に仲間は?」
「・・俺が捕まった時点で離脱した。今頃は部隊に報告している、お前らは、もう手遅れだ帝国の傭兵野郎どもめ!」
「帝国の傭兵? 俺達は、そんなもんじゃないぞ? 立派な王国民だ。見てみろ、この冒険者カードを」
「・・嘘だ! 俺は騙されないぞ!? ルミナ魔法士団長を連行しているのが立派な証拠だ!」
「連行って・・どう見ても彼女に拘束具をつけてないぞ?」
「そんなもの俺が見えないだけだ! もうすぐに王国騎士団最強の副団長様がここに来て、お前達を排除するんだ!」
「なっ・・副団長がここに?」
アリアがここに来るとまた面倒なことになると思い背後にいるルミナにここから逃げようと伝えようとすると、サーシャがスッと別の方向に顔を向ける。
「カイ、集団が真っ直ぐこの場所に近づいているわ」
「マジか? あとどれくらいの時間で?」
「そうね・・早くて1時間ってとこかしら」
「くそっ・・本当に来るのかよ。ルミナ、君だけはここに残れ・・俺達はここから離れる」
「ヤダッ! カイ兄ちゃんと一緒に行くって決めたの!」
「でも、部下を探すにはアリア達といた方が可能性が・・・・」
俺は、ルミナとのやり取りでアリアという名前を口にしてしまい、4人娘が秒で反応する。
「「「「 アリア!?!?!?!? 」」」」
さっきまで副団長と聞いていた4人娘達だけは気付いていなかったけど、俺の失言で副団長はアリアだということが判明し、ここから逃げる予定が残ることに確定する。
「いや、ここでアリアとやり合うのは不味い・・大人しく逃げよう」
「ダメよカイ・・私達は、もう決めたわ」
逃げようと伝えるもサーシャは拒否し、他の3人も同意してしまう。
「でもな、顔バレすると王国でのんびり暮らせなくなるんだぞ?」
「カイよ、そんなことはどうでも良いのじゃ」
「スミハ・・」
「主よ、とりあえずその騎士は目障りなのだ」
「ユキナ? お前、何する気だ? やめろって・・」
ユキナは無抵抗な騎士ワイズマンを一瞬で氷像と化し、サーシャの風魔法で上に飛ばすと大木の枝と幹に引っかかるように固定した後に、倒木に並んで座りまるで街で待ち合わせをしているかのような感じで会話を弾ませ時間を消費させた。
「・・・・そろそろね」
楽しそうに会話をしていた4人娘は、サーシャの一言で無言となり同じ方向をジッと見つめている。
「ルミナ、俺達は見つかるのは不味い・・大木に隠れて様子を見よう」
「う、うん・・・・」
アリアに見つかりたく無い俺は、少し離れた場所の大木にルミナと身を潜め警戒する。もちろん騎士団に囲まれてしまわぬようルミナが探知魔法で周囲を警戒してくれながらだ。
「カイ兄ちゃん、そろそろ来るよ」
「わかった・・」
静かな山の中で集団が近づく足音が風に乗って聞こえ大きくなる度に胸の鼓動が早くなる。そして移動する速度が遅くなり程なくして足音は止まり聞こえなくなった代わりに女性の声が響き渡る。
「貴方達は何者ですか!? 私は、王国騎士団副団長のアリアと言います!」
もう何年も聞いていなかったアリアの声は、少女から大人びた声に変わってしまっている現実に、思いのほか長い時間が経ってしまったのだなと痛感し、なぜか胸の奥がチクリと痛む気がした。
「何者かって私達が人族で無いことを容姿から見てわかるんじゃないかしら?」
挑発的に応えるサーシャの口調は普段通りで、初っ端から仕掛けることは無いようだ。
「・・エルフ族。いえ、ハイエルフ族よね? それに獣人が2人に・・黒髪の貴方は、帝国の召喚者?」
アリアは黒髪だけでスミハを帝国召喚者と勘違いしているようだ。
「ふむ・・それは不快じゃ人族の女よ、妾は帝国の犬ではないのじゃ」
「そう、それは失礼したわ。貴方だけは、わからないわ」
「其方が知る必要もないことなのじゃ」
どうやら互いに今は武力行使をする様子は無く、会話だけでなんとか進みそうだと一安心するも俺の考えは甘かった。
「・・一つ教えて欲しいのだけど、ここに王国騎士がいるはずなんだけど見てない?」
「カチコチにゃ!」
「カチコチ? それはどういう意味かしら? 場合によっては、ただじゃ済まされないわよ?」
シマチの余計な一言で、対峙する彼女達の空気は一気に張り詰める。
「んにゃ? どういう意味かにゃ?」
「猫人族の貴方には難しい質問だったのかしら・・ここにいるはずの私の大事な仲間を返して欲しいの」
「それなら、あそこでカチコチにゃよ?」
大木の枝に見つからないよう隠していた氷像騎士に指差すシマチに、バラすのが早いと3人にツッコミを入れているのに対して、騎士団側からは複数の殺気が放たれ始める。
「なっ・・なんで酷いことを! 騎士団に刃向かうというならば、それ相応の覚悟があるようね? 総員、抜刀!!」
アリアの合図に鞘から剣が抜かれる金属音が響き渡り、一気に戦場と化してしまう事態なのに敵意を向けられた4人娘からワクワクし始める感情が俺に流れ込んできている気がしているのだった・・・・。
評価&いいね!
ありがとうございます。
とうとう副団長アリアが、カイのところに
現れてしまいました。
次回投稿は、少し日にちがあきます。
引き続きお付き合いお願いします。




