開拓村から逃げるように出たのが正解だったようで、偶然にも知らない街を見つけました
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サブタイトルは、気にせず読んでください。
開拓村の簡易宿の部屋で寝たことで気を抜いていた俺は、初めてミユキに起こされてしまった。
「・・・・起きた?」
「ん・・朝か?」
「もう、お昼くらい」
「なっ! 寝過ごした!!」
朝になり先に目を覚ましたミユキは、俺が起きるまで部屋から出ることなくずっと静かに待っていたようなので、昨日の夜に手渡した硬いはずの携行食を同じ数だけ食べさせてから部屋を出る。
受付には昨日居た女の姿はなく、呼んでも返事はなく無人だったため小屋の外に出てみると、開拓村とは言え外を歩く村人が誰1人おらず、異様な程静かで活気が無いなと感じながら村の門へ移動するも無人だった。
「誰もいない・・どこに行ったんだ?」
人の気配が感じられない開拓村は、日中であっても気味が悪く早く立ち去りたい衝動に駆られていると、背後からミユキが何かを見つけた。
「ねぇ、あそこに煙が・・」
背中を軽く突かれ振り返ると、ミユキが指差す方に白い煙が青空へと高く上がっている。
「なんか燃やしているのか?」
「あそこ行く?」
何者かが何かを燃やしているのだろうと眺めていると同時に、あの白い煙には何か既視感がある・・けどその意味が思い出させない。
「ん〜なんか、気になる・・」
「・・焚き火でご飯かな?」
「いや、違う」
「なら、温泉?」
「・・オンセンが何か知らんけど、違う」
「のしかな?」
「のし? のし・・・・狼煙だ!」
「のろし? 遠くの人に知らせる合図って聞いたことあるよ」
「ミユキ、行くぞ! なんかイヤな予感がする」
「行くってどこに?」
「いいから、早く!」
開拓村から逃げるように出るも逃げてきた417高地がある方向しかわからない俺は、長年研ぎ澄ませてきた感を頼りに狼煙を右に見ながら村を離れ先にある丘陵地帯を移動する。
「どこまで行くの?」
「まだ・・まだずっと向こうだ」
休むことなく歩き続けること数時間が経った頃に、ミユキ疲労困憊隣弱音を吐きながら座り込んでしまった。
「もう歩けないよ〜!」
「ミユキ、まだ・・・・」
まだ歩けと檄を飛ばそうとした口を閉じその言葉を飲み込みながら、座り込み鳴きそうな顔を見上げているミユキを見下ろしている俺はふとあることを思い出す。
(なんで俺は、この子を連れ回しているんだ? ここで解放し見放して俺1人で動けば絶対に楽なのに・・)
ジッと見下ろし無言のままでいる俺の態度を見上げているミユキは、何かを察知したようで置いて行かないでと足に抱きつかれ懇願されてしまった。
(・・女の勘って、すげぇな・・あのアリアだけじゃないんだな)
もう二度と姿を拝む事がないだろう幼馴染のアリアと恋仲だった頃に、俺の全ての考えが見透かされている事がずっと続き、怖くてさりげなく聞いた時の彼女の自慢げな表情で告げた言葉を思い出してしまった。
『カイって考えている事が全部仕草に出ているんだよ、その誰も気付けないどんな小さな仕草でも、恋人の私には全てわかるんだからね』
きっと数日の短い付き合いであっても、終始俺の機嫌を伺っているミユキにでも本人の俺でさえ知らない癖を理解し、自分かここで見捨てられると察したのだろうと納得してしまい近くの凹地で座り周囲を警戒しながら休むことに決めた。
疲労困憊には短時間でも寝るのが効果的なことを養成学園時代の恩師から身を持って叩き込まれた俺は、寝るのを嫌がるミユキをなんとか眠らせることに成功し、その幼い寝顔を眺めていた俺は聖女ジョブ持ちのミユキなら回復魔法で体力を回復できるのではと思い、彼女の頬を叩き無理やり起こす。
ペシッ・・
「起きろ」
「あぃ・・」
「回復魔法で、疲労回復できるんじゃないのか?」
「うぃ・・・・なに?」
寝ぼけ眼のミユキは、俺の言葉が理解できず変な声を漏らしているため改めて聞き直す。
「だから、回復魔法で疲労回復すれば休む必要なんてないだろ?」
「・・・・その回復効果は無かった・・回復魔法は、傷を治癒するだけ。身体強化系の付与魔法かスキル持ちじゃないと、ダメって教えてもらったから」
「はぁ・・期待外れか」
「ごめんなさい・・役立たずで」
「まぁ、なんだ・・そこまで気にするな。回復魔法すら俺は使えないからな。ちなみに、それは誰に教えてもらったんだ?」
「お城にいた、おじいさん」
「帝国の城でか・・なら、宮廷魔導士あたりの職か」
「うん、そう言ってたよ。詳しいけど、帝国にいたの?」
「いねーよ。行ったこともない。俺は、王国騎士だ・・それなりに王国の王城へ行ったことあるし、そこで魔法使いの魔導士ジジイ達は存在してたからな」
「へぇ・・・・騎士様?」
「急にそんな憧れの瞳で俺を見るな。ミユキが想像している騎士像とはかけ離れた落ちこぼれ騎士だったからな? それに今は無職の冴えない浮浪の民・・いや、山賊かもな」
「さ、山賊? わたし・・穢されるの?」
「しねーよバーカ。それが目的なら、捕まえたその日の夜に済ませてるから」
「あっ・・」
「もう、そんなに元気になったんだから行くぞ」
重い腰を上げ移動を再開し、遠くに見えていた山の麓まで来たところで、背後の遠くに見える逃げて来た開拓村に騎兵の集団の姿を見つけ、陽の光に銀色の鎧が反射し王国騎士団の偵察騎兵隊だろうと思い、さっさと逃げてきた事が正解だった。
「私たちを追っているのかな?」
「どうかな? ただの定期巡察かも・・まぁ、俺はあの戦場で使い捨てられる予定だったしな」
「どういう意味?」
「・・戦果に関わらず、生きて帰還せず死んで来いって命令さ」
「死ねって、命令されるの?」
「あぁ、騎士団の命令は絶対だ」
「でも、貴方は生きてる」
「命令違反は、俺の得意分野なのさ」
冗談混じりに答えていると、ミユキが何故か俺の腕に触れる。
「どうした急に?」
「・・この世界の・・この世界の若い人は簡単に自分の命を犠牲にする」
何かを思い詰めるような表情のミユキを諭すよう手を重ね教えた。
「国の為に尽くす・・それがこの世界で戦う男達の・・騎士の忠義なんだ」
「そんなのダメ。帰りを家でずっと1人で待ち続ける女には辛すぎるよ」
「・・女騎士だっているぞ? 1年経っても帰って来なかったら、新しい男と共に歩めば良い・・その頃にはもう、この世界にはいないんだからな?」
「男って、いつも自分勝手・・だから嫌い」
「そうか、自分勝手だよな。愛する人を守る為だと決めて戦地へと向かい散って行く・・たしかに自分勝手な生き物だよな男っていうのはな」
「うん・・・・」
「さて、ここで感傷に浸るのを終わらせて先に行くぞ」
「・・だから男は」
「なんか言っか?」
「べつに・・」
ボソリと小さく呟いたミユキの言葉を聞こえなかったフリをして聞き直すも返事はなく、そのまま道なき山越えをするため急勾配の斜面を足を滑らせながら上っては下りを繰り返し、2つ目の山越絵の山頂から見た景色で遠くに街があるのを見つけた時は、冬の猛吹雪のなかで無謀な斥候任務中に遭難し死にかけた時に偶然見つけた山小屋に駆け込んだ時ぐらいの喜びを、ミユキが隣りで全身を使って表現していた。
「急に元気になったな?」
「だって、街だよ? ベッドで寝れるんだよ!?」
「まぁ、無事に街に入れたらの話しな? 聞くけど、ミユキは王国の身分証を持っているのかな?」
「はっ・・・・て、帝国の冒険者ギルドカードなら・・あるよ?」
「終わったな・・」
「そ、そんな〜」
その場に崩れ落ちるミユキの頭を軽くポンポン叩きながら俺は笑い歩き出すと、山の中腹に倒壊し長年放置されている山小屋らしき建築物を見つけ、使える物がないか瓦礫の隙間に潜り込み探すと手付かずの大きなカバンを見つけ強引に引っ張り出した。
「カバンだね・・」
「あぁ、立派なカバンだ。もしかしたら、宝物があるかもな? それか、ミミック」
「まさか・・」
カバンのくせに頑丈な鍵でロックされていたため、愛剣で鍵を破壊し開けると貴族が好んで着そうな服がギュウギュウに詰め込まれていた。
「服だね」
「服だな・・ミユキ、着替えるか?」
「・・着てみる」
「わかった。着替え終わったら呼べ・・向こうの岩にいるから」
「うん・・」
相手が捕虜とはいえ年頃の少女の着替えを見るわけにもいかず、少し離れた場所にあった大きな岩の影へと移動し、ただ何も考えず岩を眺めていると着替え終えたようでミユキに呼ばれた。
「終わったよー!」
「わかった!」
一応返事をしてから岩の影から出ると、黒い短パンに白シャツというラフな格好であるも長い黒髪と黒目のミユキにはとても似合っていた。
「どうかな・・変じゃない?」
「あぁ、長旅には不向きな服だな」
「そっち?」
「あのな、他にマシなやつは無かったのか?」
「他は、パーティードレスと寝間着のネグリジェ? だから、これが一番マシだったの」
「そうか・・暗くなる前に見つけたあの街に行くぞ。その着ない服は、ポーチに入れておけ」
「でも・・」
「着なくても、売れれば金になる」
「うん」
ミユキのマジックポーチに収納されていく服は、晩餐会の警備中に王城へと集まる貴族夫人や令嬢が好んで着るような派手なドレスで少し目が痛くなった気がする。
大量の服を収納し終えた後に、再び山を降りている途中に見つけた獣道を頼りに進んでいると、思っていたより早く山を降りて街へと続く道を歩きやっとの思いで街の門の前に辿り着いたのだった・・・・。
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