天気が悪い日に限って誰かが来ました・・居留守はダメですよね?
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シマチ達4人が家を出て何日が過ぎたのだろう・・7日目くらいまでは数えていたけど、毎日の生活の中でいつの間にか数えることしなくなっていた。
もちろん、シマチ達のことを1日だって忘れたことなんてない・・ただ、最近は畑の手入れも昼までに終わらせる俺は昼飯を食べ終えた後に家を出てとある場所へと向かう日課を追加していた。
「今日も穏やかで平和だ・・」
歩き慣れた獣道も俺が毎日歩いて行く影響でほんの一筋の線のように雑草が生えず、地肌の土が目立つようになってきて歩きやすくなった先の稜線上にある見晴らしの良いこの開けた場所で座り遠くに見える街を見下ろしている。
街へと続く街道には時より冒険者パーティーだろう馬車が、街へと向かったり街から走り去っていくのを眺めている俺は、今日もシマチ達は帰ってこなさそうだなと呟いてから西の遠くの山に沈んでいく夕陽を見てから立ち上がり家へと帰るの繰り返している日が続く。
もう慣れたしまった1人だけの食事を簡単に済ませた俺は、風呂も手早く済ませ早めに寝床に入り眠りにつくと、珍しく朝を迎える前に目が覚めてしまった。
「・・・・雨か?」
意識が覚醒した後にゴーッと音が聞こえゆっくりと身体を起こし窓のカーテンを捲ると、暗い外であるも大きな雨音が聞こえるためそれなりの豪雨だろうと簡単に想像ができた・・。
目が覚めたのは雨の音だとわかり、再び布団へと寝転び目を瞑り雨音を子守唄のように感じながら再び眠りについてからは、いつも起きる時間帯に目が覚めベッドから起き上がり窓から外を見渡す。
「今日は1日中雨になりそうだな」
久しぶりの雨で今日の畑作業は諦めることに決め、寝起きからやることがなくなってしまった俺は朝飯を食べ終えてから寝衣着から普段着へと着替えるも部屋のベッドに寝転び静かに時間を浪費する。
そんな土砂降りの雨音を聞きながら部屋の天井を見つめて過ごし、まったりとした時間を楽しんでいる俺を邪魔するかのように家のドアを数回強く叩く音が雨音の隙間を縫って聞こえたような気がした。
「・・はぁ、こんな天気なのに山奥の家に誰だよいったい」
ドンドンッ! ドンドンドンッ! ドンドンッ! ドンッ!!
居留守をしてこのままやり過ごすかと考えたけど、後で様子見るのにドアを開けた時にまだいたら嫌だなと思い仕方なくベッドから立ち上がり、部屋を出て既に静かになったドアの前で立ち止まり一呼吸置いてからゆっくりと開き僅かな隙間から外を覗く・・。
「いっ・・いたのか!? すまないが、開けてくれないだろうか?」
若い男の声が聞こえたことで、ゆっくりと開けたドアを閉めると再びドアが数回叩かれてしまったためため息をついてからまたドアを開けると、今度は外から引っ張られるかのようにドアを開けられてしまい訪問者の姿が見えた。
「うわっと・・・・騎士さん?」
不覚にもドアを開けられてしまうも開けた犯人が若い王国騎士だとわかり、そのずぶ濡れで泥だらけの若い騎士2人の姿に嫌悪感が増す。
「突然の訪問に申し訳ない・・王国の民として、騎士団の要請を受けてもらいたい。もちろん王国騎士団長承認済みである」
雨のせいか水気を吸った紙を広げ書面を俺に見せると、一番下のところに偉そうに直筆でサインした名前を久々に見て幼馴染の顔が浮かんでしまった。
(・・ジーニスか)
「その・・こんな私に騎士団が要請・・ですか?」
「そうだ・・いや、そうです」
「そんな、困ります・・急にそのようなことを言われても」
急に訪れた2人の騎士は、きっと平民出身の騎士だろう。威圧的な態度の中に、平民に対し気を使うような仕草が見え隠れしているため中途半端な態度に見える。
「そ、それは・・僕らが困る・・じゃなくて、我が騎士団の要請だ。国の民として受けてもらいたい」
「・・・・」
「「 聞いているかい? 」」
(あっ・・ハモった・・)
「・・聞いてますけど〜」
ただの騎士が2人だけで行動するのは変だと思いながら、他に仲間がいないか視線を動かしていると俺の態度を察したようで、ずっと黙っていた騎士が初めて口を開いた。
「この場には、我々しかいない・・仲間は離れた別の場所で待機している」
「そ、そうですか・・それで、王国騎士団がこんな山奥で暮らす私への要請とは?」
「・・・・王国と帝国が戦争状態なのは、山奥にいる貴方でも近くの街に行く限り情報は知っていると思う。戦況が万が一となった場合には、とある人物をここで匿ってもらいたい」
「はい?」
「我が騎士団は、侵攻してくる帝国兵を阻止するため既に近くの街で駐屯している」
「ならば、領主邸で匿えば・・」
「それはできない! 理由は作戦上伝えることはできないが・・・・」
なんでこの場所を誰かの隠れ家として利用とする意図がわからない俺は、強引に押し切ってくる騎士に拒否を続ける。
「どうか、再考を・・」
「だから、無理なものは無理ですから」
「そんな・・・・」
何も変わらない俺の態度に、ずっと話しかける騎士はどうしようかと焦る表情になっていくも、一度だけ口を開いた隣りの騎士が焦る彼を制して再び口を開く。
「そうですか・・せめて、貴方のお名前を教えてください」
「冒険者のカイ・・です」
「カイ殿・・ですね。やはり・・ありがとうそれだけでも十分です」
なんで名前だけを教えただけで安堵した表情に変わったのかわからないまま、若い騎士2人は敬礼をした後に土砂降りの雨の中を歩いて立ち去って行く背中を見送ってからドアを閉めた。
何も成果無く帰った騎士が何か企んでいないかと、動向を探るため気配探知で家から離れ山を降りて行く2人の気配を捉え追っていると、なぜか街の方ではない逆の方向へと移動している。
「どこに行く気だあいつら?」
2人が言っていた離れた場所に仲間らしき気配は見当たらず、ただゆっくりと家から離れて行く騎士2人の気配を目を閉じて俺はただ追うことしかできなかったのだった・・・・。
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なぜか避けていた王国騎士が
カイ達の山奥にある家を訪れてしまいました。
その原因は、この先のお話でわかります。