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突然ですが銀色のツンデレが現れました

アクセスありがとうございます。


「逃すな! 囲んで追い詰めろ!」


 勇者クンの爽やかな声が響き渡ると帝国兵達が素早く反応し、統制の取れた動きで俺を取り囲もうとした。


 帝国兵達の動きより先に動いていた俺は愛剣を抜刀し終え、得意の風魔法ウインドカッターを刀身に纏わせ構えをとり狙いを定めるため視線を動かしている途中で、俺の動きを知っているような警告を耳にした。


「防御の構え! 奴は、風魔法を放つぞ!」


「ちっ・・」


 周囲に行儀よく陣形を整え盾を持たない帝国達を1発で斬り捨て退路を開こうとした作戦がバレてしまい、2列目にいた盾持ち兵が前列へと入れ替わってしまう。


 先制攻撃のタイミングを失い僅かの時間を躊躇ったせいで、突然周囲の地面が囲む帝国兵達の背丈を越える程の土壁が出現し囲まれた。


「アースウォールか・・」


 土魔法アースウォールで四周を囲まれた俺は、直進性に優れたウインドカッターを封じられたことで刀身に纏わせていた魔法をキャンセルさせ飛散させ魔力消費を止め見上げる。


「どうする・・」


 このまま勢いを付けて駆け上がっても格好の的になることが容易に分かり、動かずに気配探知スキルで取り囲む帝国兵達の気配を探っていると、膨れ上がる魔力と10人程の気配が同時に迫って来た後に土壁の上に姿を見せる。


「魔法か!」


 風魔法をキャンセルしていた俺と、先に火魔法の詠唱を終えて火炎弾を俺に放つだけの帝国魔法士の優劣に抗う俺は、1人でも多く道連れにするため多数の火炎弾を避けることより、再び風魔法ウインドカッターを刀身に纏わせた。


「放てっ!!」


 一呼吸先に火炎弾が俺に襲い掛かってくるのを見ながら、合図を出しただろう魔法士に向かいウインドカッターを愛剣の切っ先から放ち横一線に薙ぎ払う。


 視界いっぱいに広がる火炎弾に無駄な足掻きだと知りつつも放ったウインドカッターは、火炎弾に飲み込まれ一部分の火炎弾を爆散させるだけに終わり、無傷の火炎弾は狙いから外れることなく直撃コースで迫って来た。


「ヒール使っても、痛いだろうな・・」


 致命傷にならなくとも、流石に無傷で済まされないだろう状況に呟きながら左腕で口元を塞ぎ、喉を火傷から守る体勢になったところで、高熱を帯びていた火炎弾が瞬間的に凍りつき勢いを失いそのまま地面へと落下し足元で氷の粒となって飛び散った・・。


「なんだ?」


 突然の状況に理解が追いつかない俺は、ただ水魔法の上位である氷結系の魔法が行使されたことだけは理解し見上げていた視線は、砕け散った氷の粒がある足元へと固定されてしまう。


 タンッ・・


 不意に軽く小さな着地音が聞こえ地面に向けていた視線を上げると、目の前には山小屋で見送ってくれた銀髪銀目のフェンリル娘の姿が俺を見つめる姿があった。


「主よ、どれだけ我をヒヤヒヤさせればいいのか? もう我慢できず、我が手を出してしまったではないかまったく・・・・」


「フェンリル娘? だよな・・どうしてここに?」


「ん? そんなの簡単なことよ。主が、旅に出た日からずっと我は見守っていたからなのだ」


「初日から? もしかして、別れた日の街道で感じた視線は・・・・お前だったのか?」


 フェンリル娘は、なぜか銀色の瞳を潤ませ答える。


「んふぅ・・正解だ。さすが、我の主だ・・さて、主の命をとろ火で狙った生き物達は凍らせ永遠の眠りにしてやったから安心して良いぞ」


「あの魔法士だけを?」


「当然だ。我は、無用な殺生は好まぬ。それよりも・・な?」


「それよりも?」


「主よ、焦らすではない・・あの2人のように我にも名を授けるのだ」


「いやいや、待て待て・・この状況でか?」


 この命のやり取りをしている場所で、物欲しそうな表情をしながら歩み寄って来るフェンリル娘の考えがわからない。


「そうだ・・はやく」


「でもな・・そう言われても」


「何を悩んでいる? 善は急げと、人族は良く口にしていたぞ?」


「そういうこともあるけどさ・・」


 フェンリル娘は銀髪の毛先を弄りながら、流し目で俺を見つつ何かを期待した表情で髪の色と同じ銀色のシッポをブンブン振り回し始めたところで、グイッとさらに近寄り身体を寄せ上目遣いになる。


「もう、我慢できぬぞ・・あるじ?」


 フェンリル娘の銀色の瞳に映る自分の姿を見ながら、飲み込まれそになる気持ちの中で俺は無意識に彼女の名前となる言葉を口にしてしまった。


「・・・・ユキナ」


「ユキナ・・ユキナか・・うむ、我は気に入ったぞ主。今から我は、ユキナと名乗り世に広めよう」


 俺がユキナと口にしたことで、フェンリル娘は自らをユキナと名乗ることに決めたようだ。嬉しそうに胸の前で腕を組む姿を見ていると、ここが戦場だったことを一瞬だけ忘れていたような気がしたけど、再び銀色の瞳で見つめられたことで現実に戻ってこれた。


「さてと、主に愛おしく大事な名前を授けてもらったことだ・・長居は無用だ家に帰ろうぞ?」


「そうだな、帰ろうユキナ」


「うむ・・良い響きだ」


 まるで街で買い物を済ませ家に帰るような空気を2人で纏わせながら、未だに形を保っている土魔法アースウォールをゆっくりと並んで上がった足元に、氷像となった帝国魔法士達が無造作に倒れその先の離れた場所で武器を構える帝国兵士達と黒髪黒目の少年少女達の驚く姿を見渡しながらユキナに聞いた。


「ユキナ・・今更だけど、この軍勢から逃れられるのか?」


「主よ、我にとっては容易いことだ。まぁ、主を想っているのは我1人だけではないが・・な?」


 ニヤリと笑い鋭い犬歯を見せるユキナの横顔をチラッと見た俺は、ミユキと歩いて来た山の方から猛スピードで走るシマチとスミハの姿を見て思わず笑みが溢れたのだった・・・・。


感想評価ありがとうございます。

ブクマ件数も増えて感謝です。

引き続きよろしくお願いします。

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