ミユキとの別れと再会の途中に彼がプッツンされたようです
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今日の投稿はこれで終わりです。
俺の提案に3人は、帝国兵へと向けていた視線を俺へと向けている。
「あのな、簡単に言うと・・俺がミユキを拘束した状態でアイツらの正面へと堂々と出る。そしたら、ミユキの姿を見た同郷人達が必ず帝国兵より前に姿を現すはずだ」
「カイよ、それからどうするのじゃ?」
「・・・・後は、状況に任せる」
「なにそれ・・意味わかんないよ」
「そうにゃ」
「無策と同義なのじゃ」
「 ・・・・ 」
3人の言葉にすぐ言い返せないけど、他に策が思い浮かばない俺はそのまま話し続ける。
「まぁ、行き当たりばったりの案だけどなんとかして見せるさ」
「そんなの無理だよ、カイ・・」
「ミユキ、もう他に選択肢は残ってないんだ・・だから、最後に聞いてほしい」
「・・・・」
ミユキの黒色の瞳を見つめながら、ゆっくりとこの日まで感じていた想いを乗せてゆっくりと優しい口調で告げる。
「ミユキ、今日まで連れ回して悪かった。一時的に離れ離れになって孤独にさせたミユキと山小屋で出会わなかったらキミを見殺しにしていた・・」
「そ、そんなことないよ・・カイがくれたお金と食べ物があったから」
「でもな・・ボロボロになったミユキの姿を見て、俺は物凄く後悔したんだ・・・・なんでミユキをあの場所で捕まえてしまったか。本当に今更だけど、許してほしい」
「・・・・カイ。あのときのカイは、王国騎士で私は帝国の人間・・もちろん最初は怖くて寂しくて生きるのを諦めてたけど、私を捕まえてくれたのがカイで良かった。いろんな所に連れて行ってくれて楽しかったもん」
「ミユキ・・」
「んぐぅ・・カイ・・」
ミユキの綺麗な黒色の瞳から溢れ出すのを見て、必ず彼女を本来の仲間達の元へ無事に送り届けることを胸に誓い、別れの言葉となる最後の質問をした。
「ミユキ、これで最後の質問だ・・・・ミユキは、帝国にいる同郷人の元へと戻り元の世界へ還ることが目標なんだよね?」
俺の質問にミユキは、長い沈黙を続けてからゆっくりと口を開く。
「・・・・・・うん。お母さんとお父さんに会いたい」
「わかった。その言葉が聞きたかった」
俺とミユキの会話を黙って聞いていたシマチとスミハへと顔を向け、一つだけ2人に頼み事をする。
「シマチ、スミハ・・」
「んにゃ?」
「なんじゃ?」
「今から、ミユキを彼らの元へと届ける」
「わかったにゃ」
「うむ」
「だから、途中で俺が役目を果たせず倒れたら、代わりにミユキを頼むな?」
そう告げるとシマチとスミハは笑顔で頷き、ギュッと俺を抱き締めながら耳元でそっと囁く。
「カイは、シマチが守るから心配ないにゃ」
「妾が脅威から守る。心配無用なのじゃ」
「ありがとう、行って来る」
シマチとスミハが俺から離れた後に、ミユキが持つマジックポーチから王国に関わる金銭や騎士団時代に余っていた携行食を全て回収し、代わりに食料と日用品を持たせた後に背後へと回り両腕を背中へと回し、ヒモを彼女の力でも解けるような具合で結び終えたところで出発する。
「シマチさん、スミハさん・・お元気で」
「んにゃ! ミユキ、向こうでも元気でにゃ」
「ミユキよ、帝国が嫌になったらいつでも妾達のところへ戻って来るのじゃ」
「うん!」
涙目のミユキは2人に最後の別れの挨拶を済ませると、俺と共に歩き出し山の斜面を降りながらこの後の打合せを終え帝国兵達からはっきりと姿を目視される直前で、拘束された捕虜らしく力なく俺に押されるようなカタチで歩き始める。
「ミユキ、初めてにしてはなかなか様になってるよ」
「えへへ・・そうかな? 演技派女優になれるかな?」
「そのエンギハジョユウのことはよくわからないけど、良い演者になれるよ」
「ありがとう、カイ」
山を降り丘陵地帯を歩き、僅かに見え隠れするような地形のところまで来たところで雑談をやめる。
「さぁ、ここからが本番だ。治癒魔法の準備は忘れずに」
「うん・・ごめんね」
「気にするな・・さぁ、始めるぞミユキ」
「わたし頑張るね、カイ」
ミユキという名前を口にするのをこれが最後だと心に決めた俺は、本当の捕虜のように扱うため意識を切り替えさらに歩き続けていると、待ち受ける帝国兵側から風魔法に乗って流れる男の声を聞き足を止める。
「止まれ! 貴様は、何者だ!?」
「 ・・・・ 」
とりあえず、最初の警告には素直に足を止めるも応える気がない俺は止めていた足を再び動かし数歩進んだところで、ミユキの掴んでいる手首をクイッと軽く動かしてから彼女の右足を蹴飛ばし膝から崩れ姿勢を崩したところで強引に立たさせ歩かせる。
「いっ・・」
背後から右足を蹴られたミユキは衝撃までは消せないため苦痛ともみえる驚きの声を漏らし、自然な動きを見せるも俺の合図で先に治癒魔法ヒールを自身にかけているため、蹴飛ばしてもヒール効果時間内のためミユキが痛みを感じることはない。
「貴様! 無抵抗の捕虜に危害を加えるのは違反行為だ! 直ちに彼女を解放せよ!」
俺に警告している帝国兵が誰なのかわかるぐらい歩いたところで、周囲の帝国兵達が俺をゆっくり包囲していく。
「うるせぇ! お前らが王国領に侵入するのをやめたら、コイツを解放してやるよ! もちろん俺が王国へと安全に帰れることも保証してくれたらの話しだけどな!?」
そう言いながら挑発するため、俺は再びミユキに合図を送り頭を1発殴り飛ばすと勢い余ってその場に倒れてしまったミユキを慌てて起こしたところで、なかなか姿を見せてくれなかった黒髪黒目の容姿を持つ少年が帝国兵の影から飛び出し正面に立ち敵意を剥き出しにしていると、僅かに遅れて他の黒髪黒目の少年少女が姿を見せてくれた。
「お前! ミユキをこれ以上傷付けるな! ぶっ殺すぞ!」
「はぁ!? お前は、この女と知り合いか?」
「彼女は・・ミユキは俺の・・俺達の大事な仲間だ!」
「へぇ・・大事な仲間か? なら、もう少し痛ぶらないとなっと!」
俺を睨みつけている少年少女達の前で、ミユキに合図を送りながら数回ほど全身を殴ったり蹴ったりして衣服が汚れていくも、彼女が発動する治癒魔法のタイミングがバッチリで俺と息が合っていることに少しニヤけそうになる。
「やめろ! 今すぐぶっ殺してやる!」
「落ち着け勇者殿!」
両手剣を抜刀し俺に襲い掛かろうとした黒髪少年を帝国兵の男が言葉で制すると、勇者と呼ばれた少年は切っ先を震わせながら素直に耐え抗議する。
「ハガー団長! なんで止めるんだ!? このままじゃミユキが・・」
「・・勇者殿、込み上げる感情に流され憎き人間でも殺してはいけません。あの男が、どんなクソ野郎でも感情に任せ斬り殺すと勇者殿はきっと悔やむ日が訪れます」
「でも! アイツは、無抵抗のミユキを・・」
完璧に俺は悪人に成り下がっているため、不意打ちの遠距離攻撃から身を守るためミユキと身体を密着させながら口元を隠し小声で呟く。
「・・もう少しだけ、俺の茶番に付き合ってくれ。そうすれば、解放した後の待遇はマシになるはずだから」
「うん・・」
ミユキは小さく返事をしてくれて、俺に全てを委ね捕虜としての役割をこなしてくれているようだ。
「王国の男よ! その少女を解放してくれれば、命だけは保証する!」
「・・・・コイツの解放には、まだ条件がある。それが受け入れなければ、この場で女の首を斬り落とすだけだ!」
ただの脅しではないことを見せつけるため、背中に隠し持っていた短剣をミユキの首筋にグッと押し付け食い込ませるも、刃を当てただけじゃ傷付けられないことを知っているミユキは微動だにせず、上手に涙を流してくれる。
「クソッ・・ミユキに手を出すな!」
さっきからギャーギャー喚くことしかできない勇者と呼ばれる少年に苛立ちを感じていると、あの爆裂魔法を放つ魔法士ジョブの黒髪少女が俺の正体に気付いてしまったようだ。
(本当に、女って鋭い生き物だな)
「あぁ! 思い出したよ私! ミユキを拐った王国騎士だ! でも、あの時は冒険者みたいな格好で崖から落ちて死んだような・・」
「正解だよ、魔法士ちゃん! よく覚えていたね?」
「やっぱりね! その瞳が・・じゃなくて、女の勘は当たるんだよー!」
黒髪黒目少女の魔法士は、俺の正体を当てたことに喜んでいるような感じだったけど、不意に纏っていた空気が変わる。
「でも、死ね」
詠唱もなく火魔法ファイヤーアローを放ち、ミユキを巻き込むことを躊躇わず放った度胸に驚きながら真っ直ぐ迫ってくる炎の矢を右へと移動し避けると、背後で着弾し大きな爆発音と衝撃が伝わってきた。
「おいおい、この女は仲間じゃないのか?」
「へいきだよ〜ミユキは聖女・・じゃなくて治癒士だから、即死レベルの傷じゃなければ自分で治せるの知ってるから」
「「 ・・・・ 」」
魔法士の少女から感じる狂気に背筋がゾクッとした俺は、長く共に過ごしたミユキを守ろうと背後に隠そうとした腕を引っ張りかけたところで違うことに気付き動きを止める。
「ねぇ? もう素直に諦めたらどうかな? チートな私達に勝てる要素なんてないよ?」
この場であの爆裂魔法を放ちそうな彼女は間違いなく脅威な存在のため、隣りに並び立つ勇者クンが苛立つ言葉で状況を変えようと決めた。
「魔法士ちゃん、キミのあの馬鹿げた攻撃魔法を放たれたら勝ち目がないから言う通りにしようかな?」
「ホントに? そうしてくれるの?」
何か期待したような顔をする魔法士少女から視線を勇者に向けて口を開く。
「もちろんだよ! この女とは何度も楽しませてもらったしね!」
もちろん、俺はミユキに一度も手を出していない、ちょっとだけ裸は再会した時に見たことあるけどあれは不可抗力だ。
やはり予想していた通り今までの言葉で勇者クンが、ミユキに恋心を持っていたと思っていた俺の策略通り大声を発しながら両手剣を振り上げながら一直線に俺へと怒りの形相で飛びかかって来たのだった・・・・。
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