静かな夜は数時間で終わりを迎えそうです
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ケネス達に置いて行かれ・・いや、別れた俺達は薄暗くなっていく空を背に先に暗い山の中でシマチが見つけ決めた場所で静かに過ごしていると、暖をとる焚き火すら赤ずにいるとミユキがポツリと呟く。
「カイ、焚き火しないの?」
「あぁ、今夜はやめておこう」
「そっか・・ねぇ、カイ・・あの日みたいだね?」
「あの日?」
「忘れたの? わたしが連れ去られたばかりの時の夜だよ」
「・・・・そういえば、そうだな」
「もう・・」
ミユキをあの417高地で対峙し、考えもなく彼女を捕らえ捕虜として連行するも騎士団に戻る気がなかった俺は、なぜか彼女を解放することなく一緒に行動した数日間の夜は、魔物避け対策の焚き火よりも人に見つからないことを優先し焚き火をしなかったことをミユキは思い出しているようだ。
「連れ去られた? ミユキよ、それはどういう意味なのじゃ?」
俺とミユキの会話に、寝ていると思っていたスミハが反応した。
「スミハさん? 別に変な意味じゃないよ? ねぇ、カイ?」
あのときの俺は、王国騎士としてまだ動いていたため帝国側のミユキを捕まえたことは、別に変なことではないため肯定する。
「あぁ、別に変な意味じゃないよスミハ」
「そうかの? 妾には、連れ去られたという言葉を耳にしたのじゃが・・略奪愛とはのぉ・・カイも大人しそうでやる時はやる男なのじゃ」
1人勘違いし嬉しそうにするスミハの残念な反応に、そっちか!と心で突っ込んでいるとミユキが慌てて否定するため余計ややこしくなってしまう。
「ちっ違うよ! そんなんじゃないって・・スミハさん? スミハさんってば! 聞いて!」
「そうかそうか・・カイではなく、純情そうに思っていたミユキの方からなのじゃな?」
否定していくミユキの反応を楽しんでいるスミハは、簡単な罠にハマっていくミユキをジリジリと追い込んでいく様子に、俺は終わらされるためスミハの頭を軽く叩く。
「スミハ、もうミユキが限界だぞ?」
「あぅ・・・・まぁ、理由は知っているからここまでにしておくかの・・妾は十分に楽しめたことじゃし」
「スミハさん、ひどい・・・・」
「拗ねるでない、ミユキよ? 妾達が理由を知っているからでこそ、ミユキを帝国へと送ることを手伝っておるのじゃ。知らねば、カイに直接関係ないことなぞ手伝う必要がないのじゃ」
「あはは・・なんか複雑だよ」
「スミハ、ミユキを揶揄うのはそこまでにしておけよ?」
焚き火ができないため昼間に偶然確保した魔物の肉料理は明日へと持ち越しとなり、ペタリと力なく倒れてしまったシマチのネコ耳を撫でた俺は、マジックポーチに収納している携行食を手渡し夕食を簡単に済ませ交代で見張りをすることに決め休むことになった。
人族の俺とミユキは、夜の戦闘は苦手なため、暗闇で行動が得意のシマチとスミハは一番眠くなる深夜から明け方の時間帯に見張り当番を任せ、3人が密着して寝息を立てた頃合いに移動し探知系スキルを発動し警戒に有利そうな場所を見つけ一人で見張りを始める。
「・・・・寒いな」
日中は過ごしやすい季節とはいえ、焚き火もできずにいる山の夜は風が冷たい風が吹き抜けゆっくりと体温を奪っていく。さっきまでは、体温が高めのシマチがピッタリと傍にいてくれたおかげで寒さを感じていなかったけど、彼女がいなくなり1人になると寒さを実感する。
ミユキ達が寝ている凹地から少し離れた場所で座る俺は、体温を奪い取り吹き抜けていく風を直接受けないよう大木の太い枝へと移動し、少しでも居心地が良い場所を確保し見張りを続けていると帝国との国境があるだろう方向から数人規模の気配を感知した反応で眠気が吹き飛び緊張が走った。
「・・・・」
冷えて動きにくくなっている全身を軽くほぐしつつ気配探知に反応した相手の動向を探っていると、俺達がいる方向へと迷わず進んでいるコースだとわかり、愛剣を抜刀し奴らの姿を直視できるギリギリの距離まで待ち構えことを選ぶ。
ドクッ・・ドクッ・・ドクッ・・
静寂に包まれている世界で胸の鼓動が強く速く鼓動を繰り返す音ばかりが聞こえ、周囲の音が全然耳に入ってこなくなり自分が緊張をしていることをハッキリと自覚されていく感覚に包まれこの苦しさから逃れるため無意識に呼吸が浅く速くなるという悪循環に陥ってしまう・・・・前に、客観的に自分へと乾いた口から言葉を吐き出す。
「はっ・・まるでお前は新人騎士の初陣みたいだな?」
数人の気配が確実にだんだん近づいて来てくるも、聞こえてくる足音は1人分・・いや、多くても2人分の足音しか聞こえない。
この時点でかなりの手練れた連中だと判断し、俺1人じゃ対応しきれないためシマチ達を起こそうと思うもここで自分の存在を決定だにしてしまう音を出すのは愚策なため動かすジッと耐え様子を伺う。
見通しの悪い木々の隙間の先は、闇夜を照らすつの明かりのおかげで見え隠れする人の姿に目で見て数えた人数と捉えた気配の数を確認するも、実際に見た人数が3人足りない。
「不味いな・・」
相手の戦力が未知数のまま交戦するのは非常に俺が不利で打開策を探すも見つからないし、適度に互いの間隔を保って歩く相手に単独で突っ込んでも1人倒したところで一瞬で囲まれ負けるのが目に見える。
「でも、このままだと・・」
もう俺達の場所が特定されているかのように進むコースに、ただ待っている俺は相手に先制攻撃を許し反撃できずに終わるという情けない結果をなんとか覆したいため、無謀な策と知りつつ奇襲で先頭を歩く奴を倒そうと踏み込んだ瞬間に敵の会話が聞こえギリギリのところで踏みとどまった。
「・・・・この先にいるのか?」
「・・です。この先に、微かに獣の匂いが風に乗って来ました」
「魔物か?」
「いえ、私と同じ獣人の匂いが・・でも、もう一つの匂いは・・嗅いだことのない初めて感じる匂いです」
「・・おい、お前でも知らないって・・でも、殺れるな?」
「はい・・でも、こんな場所にいる獣人は捨てられた奴隷では?」
「奴隷だろうがなんだろうが関係ない。ここで俺達の存在が露見するのは認められない。軍属奴隷のお前は、俺の命令に従って行動しろ」
「・・はい」
若い男同士の会話を聞いてどうやら帝国兵と奴隷の獣人族の男だということがわかった。どちらにしても獣人族の男相手に俺はステータス的に劣っているため、正面から突っ込むことを躊躇うも長く静かに呼吸を繰り返し落ち着かせてから愛剣を握り直し奇襲を仕掛け飛び出した・・・・。




