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旅の癒しはネコだ・・けど、この先のことに不安は隠せない

アクセスありがとうございます。


 心地よい温もりの中で目が覚めるとミユキの姿は見当たらないため、先に起きてテントの外へ出ていることを知ると両隣りにシマチとスミハが俺を逃さないようにと両腕に絡みつくように寝ていた。


「シマチ、スミハ・・」


 2人に声をかけて起こそうとするもテントの外で誰かが揉めているような声が聞こえた俺は、ぐっすり寝ている2人を起こさないようゆっくり立ち上がり乱れた服を戻しながらテントの外へと出て、声が聞こえた方へ向かう・・。


 歩いた先には、どうやら御者の男を挟んでミユキとケネスのメンバーだろう男3人が言い争っているというか、一方的に男達が喋っている。


「ミユキ、何があった?」


「カイ!」


 男達が浴びせる言葉に俯いたまま耐えていたミユキは俺に呼ばれたことで、その場から逃げるように俺の元へと駆け寄り背中に隠れる寸前に見えた潤んだ瞳に男達がミユキに何かしたのではと考え低い声で威圧し問いかける。


「なんか用があるんなら、俺が聞くけど?」


「「「 ・・・・ 」」」


 男達3人は俺の問いかけに反応することなく沈黙を続けているため、俺より先にこの場にいた御者に話しを聞くことにする。


「御者さん、何があったのですか?」


「い、いえ・・その、特には・・」


 何かを隠すような素振りの御者の態度にアイツもあの男達側の人間だと落胆していると、パーティーリーダーと名乗っていたケネスという男が遅れて姿を現す。


「おい、こんな朝から何があったんだ?」


「「「 ・・・・・ 」」」


 自分達のリーダーの問いかけにも黙り込む3人の姿に俺はレベルが低いなと思い見ていると、ケネスは睨みながら3人に舌打ちをした後に俺の方を見て、スッと背後に隠れているミユキの姿を見て悟ったのだろうゆっくりと歩み寄って来る。


「すまん・・あいつらが原因だろう」


「ケネスさん、詳細を聞かなくても?」


「あぁ、嬢ちゃんの顔色を見たら理由は予想できるからな・・ただ、手遅れになる前でまだマシだったかもしれん」


「そう・・ですか」


 言葉に出さずとも、俺も揉めていた原因はなんとなく察していたからミユキに深く突っ込まなかった。まぁ、男だけの冒険者パーティーにミユキ達のように戦闘力が格下に見える少女と野営をしたら、共にいる男の俺が寝てる隙に・・・・。


「本当にすまない・・初日から」


「ケネスさん、こちらにも僅かながら原因はあります」


「・・・・」


 俺はケネスから視線を一度外してから、考えるそぶりを見せて口を開く。


「このまま継続で行きましょう。次に似たようなトラブルがあれば、まだテントで寝ている彼女達が暴れて皆さんの命があるかは俺にもわかりませんが」


「そ、そうか・・そうみたいだな」


 俺を見下ろすように見ていたケネスは、何かの異変を察知したようで視線を俺の背後へと向け一気に表情が青ざめていく。


「ん?」

 

 ケネスが向ける視線の先が気になり、ゆっくりと振り返ると背中で俺のシャツを掴んでいたミユキの姿はいつの間にか消えていて、視線の先にはテント前でミユキをシマチとスミハが守るように抱き寄せ殺気を放っている姿にケネスの変わりように納得した。


「くっ・・ヤベェ・・こんな圧は、初めてだ」


 ケネスが小さく絞り出す声を聞いてこれ以上関係が悪化するのは良くないと思い、右手をシマチとスミハに向け横に小さく振ると俺の意図を察したようで2人は放っていた殺気を飛散させ、ミユキをテントの中に連れ姿を消す。


「はぁ・・はぁ・・」


「ケネスさん、気をつけてくださいね? 少女でも鍛えられた獣人の戦闘能力は人族より高いですから」


「あぁ、身を持って実感したよ」


「そうですか。なら、出発の準備ですね」


 ケネスは小刻みに震える右手を上げながら踵を返し、メンバーの男達を連れテントの方へ戻って行く姿を見送り俺も戻ろうとした時に離れて見ていた御者の男が駆け寄って来る。


「お兄さん!」


「はい?」


「あの・・ケネスさん達は、Aランク冒険者パーティーなんですよ?」


「Aランク? はぁ、それが何か?」


「え? だから上位冒険者であるAランク・・」


「関係ないですよ? ランク付けは絶対的な強さではないから。彼ら以上にあの子達が強いっていう単純なことです」


「・・・・」


 ケネス達が目の前で屈した姿を見ていた御者の男は、俺の言葉を聞いただけで何も言わず馬車の方へと立ち去ってくれたため、俺は自分達のテントへと戻り出発の支度を進めた。


 撤収時に落ち込んでいたミユキを気分転換させるため強引に撤収を手伝わせ、シマチとスミハに守らせるように馬車へと乗り込むと、既に先にケネス達は乗っていた。


「「 ・・・・ 」」


 乗り込み座り心地の悪い木製のベンチシートに座ると、対面で座っているケネスに視線が重なるも互いに無言のままでいると前の方から御者の声が響き渡る。


「予定通り出発します!!」


 草地で止まっていた馬車は、所々にある浅い凹地を乗り越える度にゆっくりと上下に大きく荷台を揺らしながら街道へと戻ると、少しづつ加速していき昨日よりも速い速度を維持したまま街道を駆け抜けて行く。


 昨日と座る位置を変更しミユキをシマチとスミハが挟み込むように座り、一人分の席を空けて俺は荷台の右側最後尾に座り遠く離れていく野営をしていた場所を眺める。


 街から逸れた街道であっても、それなりに人の手のによって整備されていた道だったけど、王国と帝国の国境がある山へと近づいていくと少しづつ道は荒れていき、今では進行先にある障害物を避けるた右へ左へと避けながら進み続け、途中襲い掛かって来る群れを成している小型の魔物達をケネス達護衛冒険者パーティーが自分達の仕事だと言いながら飛び出し排除して行く姿を数回見届け、戻ってきたケネスを誉めるも苦笑いで返されるだけだった。


 ややあって・・・・


 遠くに見えていた目指している山の姿もかなり近い距離になってきたなと、ペースを上げて疲弊した馬を休ませるため長めの休憩時間ができてしまい、することがない俺は適当な場所の草地で寝転び出発の合図を待っている俺の周囲を、移動中に寝ることしかないシマチは猫の姿となり細く長いシッポをピンッと真っ直ぐ立てたまま全力で走り回り何かを追いかけ回している。


「カイ、シマチさん元気だね?」


「・・ネコだからな」


「あっ・・転んだよ」


 草地をヒラヒラと舞っている小さな生き物と戯れるように追いかけ回すシマチは、急旋回するもなぜかゴロゴロと転がり止まると、ゆっくりと立ち上がり頭をフルフルッと振ってからお気に入りのおもちゃを捉え再び駆け出し一気にトップスピードまで加速して行く。


「なぁ、ミユキ・・」


「なに? カイ」


「シマチは、何が楽しいんだろうな?」


「ネコだからね」


「・・そうだったな」


「2人して、なに同じことを初めてのように話しておるのじゃ?」


「なんとなくだよ、スミハ? お前は、シマチみたいに遊ばなくていいのか?」


 スミハは、左側に座っているミユキの反対側に座る。


「カイよ、妾がアヤツのように遊んでも良いのか?」


「・・・・ダメなやつだな」


「うむ。妾が同じように遊ぶと、国から大規模討伐隊がやってくるレベルなのじゃ」


「ドラゴンが暴れてる姿にしか見えないよな・・・まさに厄災だ」


「くっくっくっ・・その通りなのじゃ。妾が遠慮無しに戯れるのは、カイの上だけで十分であろうて・・・・ポッ」


「ちょっと、スミハさん?」


「なんじゃ? ミユキよ」


「私が知らないところで、カイに何をしているの?」


「ふっふっふっ・・妾達の秘め事なのじゃ。のう、カイよ?」


「バカか? 俺とスミハは、まだそんな関係になってねーだろ?」


「むむむ? カイよ、その言い方はいずれ雄と雌の関係に・・なるのじゃな?」


「・・・・」


「ス、スミハさん嘘をついたんですね? ってか、カイもそんな言い方しちゃダメだよ!」


「ミユキ、なぜお主は顔が紅いのじゃ? おかしいのぉ・・何か言うてみよ」


「ばっ・・知らない!!」


 ミユキがニヤつくスミハに問い詰められている光景を笑って見ていると、ふと小さくも力強い足音が真っ直ぐ近付いて来る音が聞こえた俺は何気なく顔を向ける。


「んにゃ!!」


「うぉっ!」


 胸元にシマチが全速力で飛び込んで来る姿を捉えた時には強くも軽い衝撃を受け、前足を伸ばしていたシマチの脇を両手で優しく掴みながら後方へ受身を取りながら回り勢いを殺し寝転ぶと、俺に抱き抱えられたシマチが緑色の瞳で見下ろしていた。


「おかえり、シマチ」


「にゃっ」


 小さく鳴くシマチをそのまま抱き寄せると、陽の下で干した布団の香りがして俺は癒されていく気持ちに満たされてしまう。


 トクンットクンと早く刻むシマチの胸の鼓動をしばらく聞いていたら、モゾモゾとシマチが動き始めたため両手を離し解放させると、ペロッと頬を舐められ胸から降りた後にミユキの傍でゴロンと寝転び毛繕いを始めていると新たな足音がやってきた。


「この辺に猫がいるなんて、初めて見たな」


「ケネスさん、ネコはどこにでもいますよ?」


「そうかい? 冒険者になっていろんな場所へ赴いたけど、街の外では一度も見かけたことない・・もちろん、猫に似た魔物は何度も見たし討伐もしてきたが」


「そうですか・・きっと開拓村逃げ出したんでしょうね」


「・・・・」


 俺の苦しい言い訳を黙ったままのケネスは、なぜか俺の肩をポンッと叩いてから立ち去って行く。


「バレたかな?」


「大丈夫にゃ」


 いつの間にか毛繕いをしていたシマチは、少女の姿へと戻り何気なく俺の横に座っていた。


「おぅ・・いつの間に」


「んにゃ?」


 のんびりと過ごす時間はあっという間に終わりを迎えたようで、御者の男の合図で集合がかかり馬車に乗り込む前に、御者から意外な言葉をかけられた。


「今日の日没までには、依頼された場所へと送り届けることができますよ!」


「本当に?」


「はい、ケネスさん達の魔物対処が短時間だったのと、天候に恵まれたことで予定より1日早く辿り着けます」


「そうなんだ・・わかったよ」


 馬車が出発してからも御者の男の言葉が信じられない俺は、隣りに座るスミハに聞くと彼女が肯定してくれたことで納得する。


 後もう少しだろうという場所に来た辺りから、襲撃してくる魔物達の回数は増えていくも脅威ではなかったため今夜の夕食の1品として確保していき、また魔物の襲撃かと思い止まった馬車から降りようとしたところで御者の男が後ろに回って来て降りるのをやめると、御者の言葉が理解できず聞き直す。


「えっ? どういう意味ですか?」


「私達は日没の時間までに、ここから離れた場所へと移動して野営するので、皆さんはここで降りてください」


「でも・・いきなりここで取り残されても困るんだけど?」


「そう言われましても、あの方との契約は山の麓まで運ぶことなので契約違反ではありません」


 御者の馬車屋と契約したシマチとスミハを見ると、何か問題でも?というような表情で見つめ返されてしまい俺は御者の男の主張は間違っていないことを理解し諦めた。


「わかりました・・・・契約は完了ということで。ここまでお世話になりました」


「では、これで・・」


 御者の男は営業スマイルで荷台から降りた俺達を確認すると、素早く御者台へと乗り込みそそくさと場所を走らせ来た道を戻って行く。そんな遠く小さくなって行く馬車の荷台からケネス達が憐れむような表情で見ていることが、なぜか悔しかったけど、何も吐き出す言葉は見つからない。


 もう日没まで残された時間は短いため、ここで立ち止まっている訳にもいかないため開けた場所で野営するよりも見通しの悪い山の斜面にある凹地を探し、なんとか暗くなる前に身を隠しながら野営ができる場所を見つけることができたのだった・・・・。

読者の皆さん、お付き合いありがとうございました。

来年も引き続きお付き合いをお願いします。

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