別れと再会
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「あのね、カイ・・・・お別れなの」
シマチの別れの言葉を告げられた俺は、理由を聞くことができず視線を逸らされ俯くシマチの隣りに座るスミハへと視線を向けると、見つめていた金色の瞳に今にも溢れそうな涙が溢れポタリと落ちると、それをきっかけにとめどなく涙が溢れ俯かれ嗚咽が小さく漏れる。
「スミハ・・・・」
シマチの言葉が現実なんだと俺は心の中で受け入れ始め、フェンリル娘の銀色の瞳へとゆっくり視線を向けた俺は、彼女が流す涙を見て無意識に笑顔を見せていたようだ。
「ぅぐ・・カイ・・ごめんね」
「シマチ・・」
涙声のシマチへと視線を向けるも、俯いたままで俺の顔は見れていなかったようでジワリと俺の視界が滲みはじめる。
山小屋のリビングに重く苦しい空気に包まれてしまい、居心地が悪くなり彼女らに泣き顔が見られたくない俺は椅子から立ち部屋へと戻ろうとした時に、エルフ娘に呼び止められた。
「ちょっと、待ちなさい。どこへ行く気なの?」
「いや、ちょっと・・・・」
「座りなさい」
「で、でも・・」
「いいから、座りなさい」
「はい・・」
エルフ娘の圧に負けてしまい不甲斐なく自分の椅子に座ると、今まで黙っていた彼女が深く溜息をついた後にスッと立ち上がり、並んで座る3人のアタ、頭を叩いた。
「あなた達ね、ホントおバカね!? なんで泣くの? ってか、別れを告げる意味がわからないんだけど?」
「「「 イタッ 」」」
エルフ娘に頭を叩かれた3人は頭をさすりながら彼女の方を見て、俺は立ち上がりシマチ達を見下ろす彼女を見上げる。
「なにその違うのって、顔は? 長期クエストに行くだけなのよ? それで、別れるって伝えるシマチの思考はどうなってるの? 冗談は、額の広さだけにしなさい」
「んにゃ・・それは、どういう意味かにゃ? シマチの額は、狭くないにゃ!」
言い合いを始めるシマチとエルフ娘のやりとりを聞いていた俺は、ただ長期間のクエストに出掛けるだけに聞こえシマチよりもエルフ娘に聞いた方が正確だと思い口を開く。
「ちょっといいか? ただ、長期クエに行くだけなんだよな?」
「そうよ・・スミハが勝手に受けたマッピングのクエストに行くだけよ」
「そういうことか・・・・」
事情を理解した俺は、シマチを責めることなく解散となりそれぞれの部屋へと戻り眠ることにして部屋の明かりを消しベッドへと寝転ぶと、ドアがゆっくりと開かれ誰かが入ってきた。
「どうした?」
「カイ、一緒に寝ようよ」
僅かに緑色に瞳を光らせるシマチが部屋に入って来たようで、俺は布団を捲り受け入れようとするとベッドに乗った直後に彼女の身体は小さくなりネコサイズになった。
「シマチ?」
「んにゃっ」
ネコサイズになったシマチは鳴くだけで会話でやりとりをしてくれなくなるも、何を伝えてくれるのかはなんとなく読み取れることができている気がする。
「わかったよ」
どうやら今夜は甘えていたいようで一緒に眠ることになり、胸元でクルッと身体を丸め口元近くにシマチの呼吸を感じ取りながら背中を撫でていると、再び部屋のドアが開き視線を向けるとスミハが入って来たようだ。
「スミハ?」
「なんじゃ・・先客がおったのか・・だが、妾には関係ないのじゃ」
スミハは布団を捲りベッドに寝転ぶと壁際に寄るように身体を密着させて来たため仕方なく壁際へと避けると、ニシシと笑い腰に腕を回し密着する。
「スミハ・・」
「妾は、カイの温もりを感じて寝るのじゃ・・」
スミハが強引にベッドへと入り込み、身体を動かしたことでシマチは閉じていた目を開けるもそれ以上の反応はなく再び目を閉じて眠りについたようだ。
「はぁ・・仕方ないな」
2人の体温を感じながら眠りについた俺は、翌朝になって目を醒めると既に2人の姿はなくリビングへと向かいテーブルの上には置き手紙が置いてあるのを見つけ手に取る。
別れが寂しくなるから、カイの寝顔を見て出発するね・・・・シマチとスミハ
山小屋でポツンと1人で生活しいつ帰ってくるかわからないシマチ達を待つことになった俺は、彼女らが帰ってくるこの場所を守り生活を続けて行くことで、静かなこの場所でスローライフを楽しむことになった。
スローライフといえば家の周りを充実させることだと思いつき、沐浴で離れた場所にある池まで行くのが面倒なため小屋の裏に風呂を作ることに決めた。
騎士団養成学園時代に使っていた大浴場を思い出しながら、小屋の大きさのあった足を伸ばせるサイズの浴槽の材料となる木を数十日かけて山を歩き、偶然見つけた大木を風魔法で伐採し運んでから時間をかけて削り完成させた。
「とりあえず、特大の風呂桶が出来上がったな」
大人の男が2人余裕で座れるほどのサイズの風呂桶を眺め、一休みした俺は目隠しとなる壁をどうやって作るか考えていると、ふと背後に気配を感じ振り向いた視線の先にはボロボロのマントを羽織り顔がよく見えない人物が1人座り込み俺を見て視線が重なると小さく呟いた。
「・・す、すいません」
「な、なんでしょうか?」
声主からして女性だと気付きこの距離まで気配に気付くことができなかった現実に焦りつつ、動けるようゆっくりと立ち上がる俺は心を落ち着かせ、山小屋の周囲を囲むように設置している背の低い木製の側にいる人物を警戒する。
「あの・・この近くに街はありますか?」
「街・・ですか」
何度も行ったことのある街の方向へと指をさそうと腕を伸ばした瞬間に風が吹き抜け、フードが捲れ声をかけてきた人物の容姿が露わになる。
「黒髪黒目・・・・」
そう呟いた俺の言葉にビクリと反応した黒髪黒目の少女は、俺と視線を重ねてしまったことで目を見開き固まっているようだ。
「えっ・・・・」
「あの、どうかされましたか?」
俺を見て何か反応する態度の彼女に、過去の遠い記憶に見覚えがあるような気がするも思いだせず見つめていると、急に黒髪少女は嗚咽を漏らし始めた。
「うっ・・ぅぅ・・」
「だ、大丈夫かい? もしかして、仲間とはぐれたのか?」
彼女から脅威はないと本能的に感じた俺は、そのまま柵の前で座り込む彼女の元へと駆け寄ると右手をポケットに突っ込み何かを取り出して俺に見せた。
「あの、コレ・・コレに見覚えはありませんか?」
黒髪少女がポケットから取り出したのは、何かの包み紙のような物なのがわかった瞬間に強制的にその包み紙の正体が遠い記憶から蘇る。
「携行食の・・・・どうしてキミが騎士団の携行食を?」
「・・奇跡なの・・やっと会えたよ・・カイ、わたし・・、ミユキ」
「ミユキ!?」
「うん・・」
右手で見せた携行食の包み紙をギュッと握りしめたミユキと名乗る黒髪少女は、そのまま力尽きたように地面に倒れ動かなくなってしまったのだった・・・・。
感想&評価ありがとうございます。
離れたミユキとまた物語が動きます・・たぶん。




