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激戦地へ向かう途中に出会った騎士は死亡フラグを立てて戦地に行きました

アクセスありがとうございます


 王国騎士団の編成されている部隊にはそれなりに由来する部隊名が登録されているけど、俺が所属する部隊名は予備隊だ。


 表舞台にいる正規部隊とは違い指揮権限を持つのは王国の国王様らしいが、その国王様が持病で倒れたらしく今では騎士団長様が権限を一任され代理指揮官として予備隊に命令を下しているらしい。


 まぁ指揮官が代わろうが予備隊の俺の役割は殿のみで、最悪の状況で撤退する時に敵兵の追撃を遅延または停滞させ味方部隊が安全な地域まで移動するのを支援することだ。


 その殿の役を死に物狂いでやっている俺の姿を見る人間は敵兵だけで、仲間の騎士達は遥かなたの後方で逃げているから、前線で戦う姿を見せない俺を蔑み自然と待遇は最悪で居心地が悪い。



「これで、俺の役目も終わりか・・」


 名前も知らない他部隊の騎士達が乗る馬車の隅で存在を消すように体を小さくして座り、切り傷跡だらけの両腕を眺めながら流れる景色を見ていると、俺に興味を持ったらしい学園を卒業し配属されたばかりの若い男騎士が声をかけてきた。


「ねぇねぇ、もしかして噂の予備隊の人?」


「あぁ、そうだよ・・どんな噂を聞いたのか知らんけど」


 揺れる馬車のタイミングをうまく利用し、狭い中をスルッと移動しながら俺の横に滑り込むように座り無垢な笑顔を見せる。


「ホントに予備隊? マジ?」


「そうだけど、なんだお前?」


「すげぇ・・予備隊の騎士が本当に存在するんだ」


 話しかける新人騎士が他の騎士とは違う視線を俺に向けていることに戸惑いを感じながらも、顔を拳で押しつけ嫌がらせを続ける。


「い、痛い・・少しお話を・・」


 パッと拳を引いて解放した俺は小さく聞いた。


「俺と、何が話したいんだ?」


「予備隊の人って、学園生時代から戦場に出るって本当ですか?」


「あぁ、他の科の同期が安全な魔物討伐を始める前から、戦場に駆り出され実戦経験を積ませる。初陣でたくさんの同期が死んだよ・・男女関係なく平等にな」


 たくさんの同期が死んでいった・・その言葉を聞いた新人騎士は信じられないような表情で俺を凝視している。


「事実だぜ。戦場は生きるか死ぬかの単純な世界だ・・ポンコツ指揮官の下につけば優秀な若い騎士も死ぬ運命なんだ。そんな同期を何人、何十人と見て来た・・今も生きている同期は、片手で数えれるほど。五体満足な奴は一人もいないけどな?」


 戦術もまともに理解していない頃に戦場に放り込まれ、抜刀する前に矢で頭を撃ち抜かれ即死したり攻撃魔法で吹っ飛んで体がバラバラに散っていく同期の姿が今も鮮明に思い出せる。


「・・・・あの、どうして貴方は生き延びているんですか?」


「俺か? そうだな、簡単に言うと信頼できない上官の命令は無視して自分で考え行動する・・そしたら何度も死にかけたけど、結果的に生き延びてこれたよ」


「そんな死線を何度も潜り抜けた貴方は、僕達と一緒に前線で・・」


「無理だな。俺は統制が取れた連携攻撃は向いていない。だから予備隊なんだよ騎士クン」


「そんな・・絶対にそこらへんの威張り散らす上級騎士より強いですよね?」


「ハハ・・そこは否定しないかな・・・・なぁ、お前の名前は?」


「ワイズマンです。ワイズマン=グロシアスです。チャーリー中隊のレミー小隊所属の」


「カッコいい名前だな。俺は、カイだ・・戦略的撤退になった時にすれ違い様に会えるかもな?」


「あはは・・できればその状況で会いたくないですね」


「そういうなって・・男なら覚悟を決めろ」


 少し表情が暗いワイズマンの右肩を叩き励ますと馬車が止まり周囲から下車の号令が響き渡った。


「カイさん、今日僕の初陣なんで行ってきます!」


「おう! 無駄に死ぬなよ少年!」


「はい! 帰ったら待っている幼馴染にプロポーズするんです! だから死ねません!!」


 心の中でワイズマンは死ぬなと思いつつ、俺は馬車から飛び降りる彼を見送った後に前線へと駆け出す騎士達の背中を見ながらこの部隊を指揮する指揮官の近くへと向かい命令を待つことにしたのだった・・・・。


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