3人娘が名前を教えてくれないけど、胃袋は掴んだぜ
アクセスありがとうございます
買い物だのなんだの終えて街から山小屋へと帰ってきたら、少女が3人増えていた・・ダイニングテーブルに並ぶ夕食は肉ばかりで俺が食べれそうな物は少ないため、シマチ達が勢いよく食べる姿で腹が満たされた気分になりハーブティーを飲んで心を落ち着かせ呟く。
「・・そろそろいいかな?」
テーブルからこぼれ落ちそうな程に山積みとなった肉達はその姿を消し彼女達のお腹を大きく膨らませ、幸せそうな顔をして天井を見上げる4人に反応はないけどそのまま続ける。
「では、改めて・・・・俺の名前は、カイ。シマチのことはそれなりに知っているつもりだけど、キミ達のことを教えてくれないかな?」
俺の問いに少し間を開けて、銀髪銀目の少女が口を開いてくれた。
「ふぅ・・我は、高貴なる銀狼族の長の娘だ。人族は、我らのことをフェンリルと呼ぶ」
フェンリル娘は、口の周りを肉のタレで汚したまま上から目線で呟くも高貴さのかけらも無い娘だ。
「わたしは、森の守護者の長の娘よ。人族は、エルフ族って言うけど私は希少なハイエルフです・・わかるかしら?」
金髪碧眼で一見すると大人しそうな彼女は、見た目通りエルフ族の上のハイエルフらしい・・初めて見たけどエルフ娘との違いが全然わからん。
「妾は、偉大なる竜人族の長の娘なのじゃ。地を這うだけのトカゲや低能ワイバーンと呼んだら、自慢のドラゴンブレスで消し炭なのじゃ」
黒髪で金色の瞳を持ち好戦的なアブナイ性格だろう彼女は竜人族のようだ。ドラゴンが人化するのは伝説の噂でしか聞いたことがないため信じられないけど、フェンリル娘と同様に信じたことにしよう。
「さいごに〜私はシマチだよ? 猫霊族の長の娘だけど、カイに名前を授けてもらったからお嫁さんでもあるにゃ!?」
1人だけ盛り上がるシマチは戦闘能力が高いだけのバカ猫のようで、自分を俺の嫁だと言いながら身体をクネクネして喜んでいるのを無視して、とりあえず3人に話しかける。
「えっと、3人のことはなんと呼べばいいのかな?」
「銀狼族の長の娘だ」
「森の守護者の長の娘よ」
「竜人族の長の娘なのじゃ」
「え〜それって、名前じゃ無いよね・・・」
名前を教えてくれない3人に戸惑っていると、隣りでご機嫌だったシマチが俺に寄り添いながら教えてくれる。
「カイ、3人のことは適当に読んで大丈夫だよ。犬っころちゃんに森の引きこもりちゃん・・それから、アツアツのトカゲちゃんで問題な〜し!」
シマチのバカにしたような呼び名に3人の魔力が爆発的に膨れ上がり、魔力をまともにくらった俺は喉元がギュッと締め付けられ意識が飛びそうなほどのプレッシャーに耐えていると、何も感じないのかシマチは普通にイスから立ち上がりリビングを歩き回る。
「こわ〜い! みんな怒っちゃダメだよ? 助けてくれたカイが苦しんでる」
歩き回っていたシマチをなんとか動かせる視線で追っていると、背後から俺をギュッと抱き締めてくれた直後に3人の放つ魔力プレッシャーが嘘のように消えて呼吸が楽になった。
「ありがとう、シマチ」
「うんうん。カイのお嫁さんだから、当然にゃ」
「ん? まぁ、それは置いといて」
「んにゃ? また愛が置いていかれたにゃ〜ちゃんと大事に持って行くにゃよー」
首筋にグリグリ顔を押し付けてくるシマチのネコ耳を撫でながら宥めていると、3人は呆れたのか中腰だった腰を下ろしイスに座り落ち着きを取り戻したような表情に戻ったみたいで安堵する。
「とりあえず、3人が名前について何も言わないなら俺はこれ以上は聞かないから。声をかけるときは、なんとなくで呼ぶからよろしく」
「「「 ・・・・ 」」」
3人からの返事はなかったものの無言の肯定と受け取った俺は、山小屋の部屋割りと日用品を配り終えた後はそれぞれの部屋に行くこととなり、俺も部屋へと向かうと後ろからシマチが笑顔でついて来る。
「シマチ? 部屋は隣りだろ?」
「隣りなら、同部屋も一緒にゃ」
「そうか・・って、一緒じゃねーし!」
シマチの主張を否定し部屋から追い出そうとするも猫霊族シマチの腕力に勝てるはずもなく、仕方なく受け入れた俺は、なぜかそのままズルズルと押されそのままベッドインする形となり一緒に寝る格好となっていた。
「シマチ、もう少し向こうに・・」
「ムリにゃ・・冷たい床に落ちるにゃ」
「ちっ・・」
「い、いま舌打ちしたにゃ?」
「してないしてない・・寒くないか? って聞いただけ」
「・・カイは、優しいにゃ」
ピコピコ動くシマチのネコ耳を弄りながら強引に誤魔化すと、俺の身体をギュッと抱き締めるシマチに抗うこともできずそのまま受け入れ、モゾモゾ動くシッポを掴み撫で回しながら目を閉じ眠りにつく。
眠りが浅くなったところで、腕に絡まっていたシッポがスルスルッと抜けていく感覚に僅かなら目が覚めるも、まだ部屋が暗いため完全に意識は覚醒しない・・その間に背中を見せるシマチが足音を立てないよう部屋を出て行く姿を見送りドアが閉まったタイミングで再び眠りに落ちたようだ・・・・。
「・・・・あっちぃ!!」
部屋が燃えているような暑さで目を開けると、目の前に烈火の炎が視界に覆っていたことに驚き反射的に身体が起きようとしたところを全力でベッドに背中を沈ませ消し炭になる運命から逃れることができた。
「なんじゃ・・あと少しで自ら消し炭になってくれるはずじゃったのに・・・・残念なのじゃ」
ベッドの横には金色の瞳で見下すまだ名も知らない竜人族の少女は、俺を偶然的に焼き殺そうと企んでいたようで、俺はこの娘には優しく接しないことを胸に誓った。
「それは残念だったな・・って次はどうするんだ?」
「・・ふん。興をそがれた・・何もせんのじゃ」
まるでおもちゃに興味を失くした子供のように立ち上がると、そのまま部屋のドアを開けたまま出て行く。
「ふぅ・・生き延びたぜ・・ってか、ドア閉めて行けよな」
ベッドから起き上がり部屋のドアを閉めてもう少し部屋にいようかと考えるも、あのドラゴン娘に馬鹿にされるのが癪に感じ部屋を出てリビングに向かうと、シマチ以外の3人が深刻そうな表情で窓の外を見ていた。
「3人揃って、何してんの?」
「「「 ・・・・ 」」」
3人同時に俺の顔を見るも、何も言わずそのまま窓の外を見て何かを待っているように動かない。
「まぁ、別にいいけどさ」
喋らない3人のことを放って置いて、腹が減っていた俺はキッチンにある揃えられたフライパンなどの調理器具を使わせてもらい、街で購入していた生肉やパンをマジックポーチから取り出し焼いていくと香ばしい香りが立ち込め早く食べさせろと腹の虫が鳴った。
「よし・・できたぞ。あとは、皿に盛り付けてと・・・・」
焼き上がった肉を乗せたフライパンを片手に振り返ると、すぐ後ろに口を半開きにしてヨダレがもう少しで溢れそうな3人娘が立って焼き立ての肉を凝視している。
「うぉっ・・な、なんだよ? コレは俺の飯だぞ」
銀目と碧眼そして金色の瞳が俺に食べさせてくれないのかという念を乗せた視線を向けてくることに怯みそうになるも気を確かに持ち屈しなかった。
「腹が減ったなら、自分らで作って食えよ?」
「「「 ムギギギギ・・・・ 」」」
そんな3人を無視しながらイスに座り食べようとナイフで分厚い肉を切り、焼いたパンと食べようとした時に視界の隅に3人の泣きそうな表情で見つめる姿に気付いた瞬間に、俺の負けが決まったのだった・・・・。
「・・はぁ、わかったよ。俺と同じので良いか?」
「「「 うん!!! 」」」
満面の笑みで頷く3人を見た俺は不甲斐なく笑ってしまい、何年も会っていない妹のレイシアにお菓子を親に内緒でコッソリ手渡した時に見せる笑顔と重なってしまい、長年押されていなかったお兄ちゃんスイッチがカチリと押され急いで3人分の朝飯を作り一緒に食べた時の3人の満足そうな表情に癒された気がしたのと、1つだけ3人娘に対し優位になったことを確信した。
「ふっ・・これで3人娘の胃袋は、確実に掴んだぜ」
3人娘は箱入りなので自立ができておらず、全てシマチ任せだったため
彼女がいないと食事の準備をできないようです。
でも、なぜ3人がこんな生活をしているのかは、そのうち・・です。
感想&評価ありがとうございます。




