幕間 サーシャ
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王国が帝国勇者に降伏と変わらない無血開城という愚策を決めた翌日に、カイと再び一緒に無駄に大きい城にきたのだけど、予想通りつまらない時間だけが流れていく。
そんなつまらない時間から逃げるように城を遊び回っていた、シマチとユキナが戻って来てくれた絶好の機会を逃さない私は誰よりも先に口を開いた。
「シマチ、眺めの良い場所に案内してくれる?」
「わかったにゃ」
今思えば、あの部屋に大人しく居れば良かったと私は自分を激しく責めるしかなかった。
「カイー!!」
ほんの一歩と少しだけ、いつもの距離感に離れた場所にいるカイが振り返り、いつもの優しい笑顔を見せる姿に私は油断していた。
できない
見下ろす街並みの遠く向こうにある丘陵地から突然伸びて来た白い光線が城の壁を下から上へと斬りあげるように走り、その軌跡の先にいたカイを巻き込んで・・。
私より先に異変に気付いたスミハの叫ぶような警告とカイを逃そうと手を伸ばすものの間に合わず、白い光線が上へと走り抜けた後にはカイの身体から力が抜け人形のように落ちていく。
不意打ちを受けたカイの身体が下へと落ちていく光景に私は必死に名前を呼び手を伸ばすも届かず、見送ることしかできない私の視界に、落ちていくカイを追いかけるように垂直の壁をシマチが全力で駆け降りる姿があった。
「シマチ、お願い」
シマチの長いシッポがピンッと立ち踏み込む脚の強さに壁が耐えきれず亀裂が入り砕けてしまうため、うまく加速できないみたい・・・・それでも何もできない私は祈ることだけ。
「なんということなのじゃ!」
シマチに僅かに遅れて隣にいたスミハが飛び降り急降下してカイを追いかけていく先には、張り出した軒先が無防備なカイを受け止めるも粉砕し、少し勢いが衰えただけで終わるけどシマチが追い付きカイを抱き締め自分の身体を緩衝材にするように体勢を下にする。
「スミハ! 早く!!」
唯一空を飛ぶことができるスミハがカイとシマチよりも速い速度で降下し、小さくなっていく2人が地面に叩きつけられる前に、スミハが抱き抱え無事に着地したことに私の心がこれ以上壊れることは回避されたようです。
「サーシャ! 早く主の所に行くのだ!」
「わ、わかってるわよ!」
ユキナはシマチと同じように壁を蹴りながら降りていくも、途中にある軒先で速度を殺しながら左右に移動しながら降りていく。
「・・私だって」
飛ぶことはできなくても森の木々を素早く移動する私は風精霊の加護持ちを使い、周囲の風を足元に集め木々を移動する手段を応用し、落下速度に注意しながら地面へと降りれた後に皆の気配がある茂みへと走った。
「カイ!」
夢中で茂みに入るとスミハに膝枕をされ横たわるカイを、シマチが舐めて傷口を治癒させている途中だった。
「スミハ、カイはどうなの?」
「わからぬのじゃ・・傷はもうシマチの治癒で治りかけておるのじゃが、目覚める気配はないのじゃ」
「そんな・・シマチ! 早く完治させなさい!?」
「・・やってるにゃ!」
この4人の中でシマチの治癒魔法が上のため、私はカイの回復をシマチに任せることしかできない歯痒さに、強くあたったことを後から申し訳なく思うも言えなかった。
「・・終わったにゃ。これからは、カイの体力次第にゃ」
「ありがとうシマチ。カイをどこか別の場所に移動させましょう」
「サーシャよ、我がちょうどいい場所をしっているのだ」
「ユキナ、それはどこなの?」
「多くの怪我人がベッドに寝ていた部屋なのだ」
「・・治癒院みたいな場所のようね? 他に策がないから、そこにするわ。案内してちょうだい」
「うむ、我についてくるのだ」
ここから誰がカイを背負うか揉めそうになるも、ユキナが案内役として私とスミハが警戒そしてシマチにカイを背をわせることに決着がついた。
先導するユキナは生い茂る草が邪魔に感じたようで草木を凍らせながら粉砕し進む姿に、怒りを発散させているようなため誰も何も言わず彼女の後をついて行くのです。
「・・ここなのだ」
鬱陶しい茂みを抜けて城内を走り中庭とは違う場所へと出ると、簡素な建物がありそのまま中に入るとポーションとは違う独特の匂いが漂っている建物だ。
「臭うわね・・」
ユキナは中を知っているようで迷わず廊下を歩き奥の部屋のドアを開き入ると、大人数が入れる程の大部屋でベッドに寝転ぶ人族は皆怪我をしており、治癒士のような男女が看護している様子ですが一つ問題がありました。
「どこもベッドが空いてないじゃないのよ」
「すまぬ・・そこまでは見ていなかったのだ」
「いいのよユキナ・・こんなことになるなんて、誰も予想してなかったもの」
「サーシャさん? みなさん、なぜこちらに?」
奥の方から姿を見せたのは、女治癒士に背負われたピンク色の髪と瞳を持つネルルがでした。
「あなたこそ・・ここで何をしているのネルル?」
「私は、このような身体になってしまったので余生をここで過ごすことにしています」
「そうなのね・・・・まだ若いのに」
「ははは・・まだ生きているだけマシですよ? っていうか、カイさんは寝ているのですか?」
「そんなわけないでしょ!? ネルル、カイを休ませるいい場所はないの?」
「あ、ありますよ。セリカさん、皆さんを2階の部屋に案内してくださいませんか?」
「わかりましたネルル様。皆様、2階の部屋へと案内します」
ネルルを背負う女治癒士はそのまま私達を部屋へと案内し、中に入るとベッドが四隅に置いてある部屋だった。
「サーシャさん、この部屋は部隊長クラスの騎士が使う部屋でしたが、負傷しても生きて帰る騎士が皆無の為常に空き部屋となっていますから、ご自由にお使いください」
「ありがとうネルル。しばらく使わせてもらうわね」
「はい」
部屋を出る女治癒士の表情は少し不満そうだけど、ネルルの考えに異論を唱えることなくそのままネルルと1階へと降りて行ったのを確認して、シマチはカイを右奥のベッドへと寝かします。
その隙にスミハが自分もとカイの布団に潜り込もうとしたところで、首根っこを掴み引きづり出すのがいつものことですが、そんな気分になれずスミハの好きなようにさせ、私は反対側のベッドに腰掛けました。
「スミハ、そのまま寝るの?」
「カイを妾の温もりで温めておるのじゃ」
「そう・・・・シマチ、ネコ化したら話せないから布団に潜り込むのもう少し待って」
「んにゃ?」
隣に座っていたシマチがカイの懐へとネコになり潜り込もうとしたところでやめさせて、私の横に戻らせてから話しを始める。
「時間がないから手短に言うけどあの帝国勇者の意味分からない魔法で、カイが傷付いたことにみんなは同じ意見でいいかしら?」
3人は私を見てコクリと頷き同意してくれる。
「ありがとう。それなら、アイツを殺すか消し炭にする・・それから存在自体をこの世界から消す。みんなは、どれを選ぶかしら? 私は、殺して消す済みにしてから存在を消したいの」
「サーシャと同じにゃ」
「我もなのだ」
「妾は、帝国をも消すことを追加するにじゃ」
「方向性はみんな同じね・・スミハの追加プランは、もう少し後で決めましょう。傷付いたカイを、この国に置いては行けないわ」
カイを傷付けられたことで暴れ出したい黒い感情をなんとか言葉で吐き出し、カラダの中で吹き荒れる感情を魔法と一緒に吐き出したいのを制御していると、スミハの頭の上にカイの右手乗っている事に気付いたのでした・・・・。
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