油断大敵だったようです
アクセスありがとうございます。
まちがって、予約投稿をせずに投稿してしまいました。
話しの流れ的に、少し普段より文字数多いです。
「おぉ〜! 良い眺めだ」
「主よ、こっちなのだ!」
頭上からユキナの声が聞こえ見上げると、屋根からユキナが覗き込み長い銀髪を垂らしながら俺に両手を伸ばしていた。
「ユキナ?」
「我の手に掴まるのだ」
「わかった」
ユキナのひんやりとした手を掴むとグイッと身体を持ち上げられ屋根の上に足を付けると、横にある監視台のような場所にいる兵士の横にシマチの姿があった。
「カイ、こっちにゃ」
「シマチ・・あぁ、今行くよ」
手招きするシマチの方へ行き胸までの高さがある壁を越えてシマチの横に着くと、若い兵士の男に不思議そうな顔で見られていた。
「どうも・・お邪魔します」
「「 ・・・・ 」」
兵士の視線から逃れるように王都の街並みを眺めていると、サーシャとスミハも来たようで俺とシマチの狭い間をすり抜けるようにスミハが前に出て王都を眺め呟く。
「まるで空から見下ろす景色のようなのじゃ・・・・あそこか? カイよ、帝国勇者の姿が見えるのじゃ」
「勇者クンが? どこだスミハ?」
スミハが指差す方向を見つめ探すも丘陵地が広がるだけで何も見えないのは俺だけのようで、サーシャ達には普通に見えているらしい。
「・・なんだよ。俺だけ見えねーし」
どう頑張っても見えない俺は勇者クンの姿を見つけるのを諦め、見晴らしの良い王都を眺めていると勇者クン達が来ているだろう方向に一番近い王城の門から一台の馬車が出て行くのが見えた。
「なんだ? あの馬車・・」
「カイの母君の姿が見えたのじゃ」
「母様が? それなら、アンも一緒か」
スミハは偶然俺と同じ場所を見ていたのか、僅かな時間で馬車の小さな窓から見えた横顔で俺の母様が乗っていることを知ったようだ。
そのままアンと母様が乗る馬車は勇者クン達が来るだろう方向にある門の通りを走り街並みに消えていった。
「さてと・・俺達は、どうしようかな〜」
ただの冒険者の俺が王国と帝国の争いごとに無報酬で自ら巻き込まれる理由は無く、ただ騎士団のルミナとネルルを王都へと送ってきただけだからだ。
「ねぇ、カイ? このまま王国が勇者に平伏すのを見届けるのはどうかしら?」
「サーシャ、それは俺達にも被害があるぞ? 父様から譲り受ける辺境地が帝国に接収されて、のんびりスローライフができなくなる」
「それは許されないわ・・・・スミハ、今から貴方の業火で勇者を帝国兵諸共消し炭にしなさい」
「なんじゃと!? 妾の出番なのじゃな? じゃがしかし、あのミユキをも消し炭にしてしまうのじゃ」
「スミハ、もうミユキは帝国側の人間よ? もう私達には関係ないわ」
「・・仕方あるまい・・・・ミユキ自身が選んだ道なのじゃ」
スミハはゆっくりと浮遊し全身に纏っている魔力を高めていく姿に、本気で勇者クン達を消し炭にする気だとわかり焦る俺はスミハの足を抱き締め強引に引っ張り込む。
「あぅ・・カイよ、背後から妾を抱き締め押し倒すとは、やっと覚悟を決めたのじゃな?」
「ち、違うからマジで抱き締めるなスミハ・・くっくるしぃ・・・・勝手に勇者殺したら後々面倒なことになりそうだから、今はやめてくれ・・・・」
「なんと? 妾への求愛ではないのか?」
「んなわけねーよ! 時と場所は選ぶわ!ってか抱きつくな!」
抱き抱え下ろしたはずのスミハは、クルッと身を翻して俺を両手足で抱え込むように抱き着いたため身動きが取れずもがいているのに、サーシャはスミハを俺から引き離すことなく笑って見下ろし口を開く。
「カイ、このままだと勇者に蹂躙される未来しかないわよ? 王国が勝てる道は、どこにもないもの」
「サーシャ、そうだけどさ、もう少しだけ様子を見よう。勇者が調子乗って良い気になったところで叩き落とす方が楽しいだろ?」
「ふふっ・・とても魅力的なプランね。さすが私が選んだカイだわ」
「そりゃどうも・・スミハ、そろそろ離れて」
サーシャはスミハの攻撃を止めた俺に不満な顔をしていたけど、俺の話しを聞いて機嫌が良くなったのか含み笑いをしながら勇者クン達の方を眺めるその横顔を見つめながら、俺は彼女の金髪を撫でる。
「どうしたの?」
「いや、なんか綺麗だなと・・・・」
「なによ、急に」
プイッと恥ずかしそうに顔を背けるサーシャの金髪を撫で続けるも嫌がる素振りを見せず、身を委ねているようなのでそのまま撫で続けている途中に、丘陵地帯で爆発が起きた。
「誰か、魔法放った?」
彼女達から魔法を放つ感覚はなかったけど、とりあえず聞くも首を振り否定してくれたためそのまま爆発が起きた場所を注視していると再び爆発があった。
「魔法?」
見慣れた攻撃魔法とは違う感じで土砂が舞い上がり、遅れて衝撃波が伝わり全身を震わす。
「魔法のようで、何かが違うのじゃ」
「スミハ、なにが違うんだ?」
「勇者が振るう剣を迎え撃つ騎士の剣がぶつかった時の衝撃のようじゃ・・おぉ! あやつは、騎士団長じゃ。カイよ、あの騎士団長が張り切って勇者と戦っておるのじゃ」
「ジーニスが? でも、戦闘は避けるようにと陛下に・・・・スミハ、見えないから詳しく頼む!」
「おっ・・おぉ! おぉ〜! あっ・・・・」
「スミハ?」
自分だけ見てジーニスと勇者クンとの戦闘を楽しで満足していたスミハの頭を掴みゴリッと俺の方に顔を向かせる。
「カイ・・そんな瞳で見つめられたら、妾はもう・・・・」
「くらえ!」
自分だけ満足して教えてくれないスミハの顔を向かせると、今度は変な事を言い始めた途中で苛立ちが抑えきれず、金色の瞳に指先を躊躇わず突き刺してやった。
「ぬぁ! 今日の愛は特濃過ぎて目が開けられない程の痛みなのじゃ!」
「・・・・」
スミハへの攻撃は効果が無く俺は黙り込んでいると、遅れて効果があったらしく涙目で教えてくれる。
「あの騎士団長は、帝国勇者に正面から挑み散っておるのじゃ。今は満身創痍で、いつ倒れてもおかしくない状態なのじゃ」
「勇者クンとは戦わず、王都に迎え入れる作戦だったよな・・・・」
「また、あの男の暴走なのじゃ」
「ジーニスの暴走?」
「そうじゃ。どうやら勇者に捕らえられている女が原因なのじゃ」
「女・・あぁ、アリアか」
ジーニスは表面上は騎士団長として、陛下の方針に従う素振りをみせていたのだろう。だけど、あの時から腹の中ではアリアを救い出す機会を伺い、部隊を動かせる時期を待っていたのだ。
「バカな男ね・・無様を晒すだけなのに。その姿を見て、女が惚れる保証なんてどこにもないわよ」
「サーシャよ、意外とあの捕虜の女の瞳はまんざらではないようなのじゃ」
「嘘でしょ!? ありえないわ」
スミハとサーシャの会話でジーニスが捕虜のアリアを救い出すため勇者クンに挑みボロボロになっている光景が想像できるなと思っていると、シマチとユキナの2人が少し離れた場所にある屋根で仲良く並んで座っているため、俺もそこに行こうと手摺りの上に立ちバランスを取っている俺にサーシャが心配そうに声を掛けてきた。
「カイ、ちょっと・・落ちないでよ?」
「ん? 平気だよ、これぐらいなら・・・・」
「カイ!! すぐこっちに飛び降りるのじゃ!!」
急にスミハ慌て出し警告を発しながら引きずり下ろすため手を伸ばす姿を見て、そんなに心配性だったかと笑っていると、視界の隅から白い光が見えた気がして街の方に顔を向けた時だった。
「あっ・・眩しい・・」
まるで夜明けの陽射しが山の稜線を越えて、まだ暗い部屋に差し込む光の線のような光が見えた気がする。
反射的に瞬きした次の景色は、サーシャ達が何か叫ぶように見下ろし俺を見ていたことで俺は落ちていることを理解する。
ドンッ!!
背中に強い衝撃を感じ激痛と肺の空気を一気に吐き出す俺は歪む視界の中で、シマチが壁をヒビ割りながら駆け降り落ちる俺に追いつくと飛びつくように俺を抱き締めてくれる。
「シマチ・・」
シマチから感じる干したての布団のような落ち着く香りを感じながら、俺は真っ暗な世界へと沈み意識を手放したのだった・・・・。
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