王都へと近付く不穏な存在
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「カイ殿、警戒は無用です」
近衛兵は立ち止まり振り返ると、俺の心情を読むスキルを持っているのか突然そう言ったことでさらに俺の警戒度は上がり半歩だけ下がると、後ろにいたシマチがスッと半身だけ俺の前に出て少し膨らんだシッポが俺の足に当たっている。
「でも、こないだ通った経路と違いますね?」
「はい、そうです。今から案内するルートは、我々近衛兵のみ使うことが許されている道でありまして、誰にも見られることなくご案内する部屋へと繋がっています」
「それは、何の目的で?」
「すべては、シエンナ近衛兵長の命令なのです」
「そうですか・・」
「では、少し狭いですが・・」
天井は高くも1人が横歩きをしないと進めないぐらい細い廊下を進んだ先には、壁のように見上げてしまう階段があり思わず目を疑った。
「もしかして、あの壁のような階段を?」
「はい、あの階段を上がります・・・・ここだけの話しですが、過去に下から上へと上がった近衛兵は存在しないようです」
「えっ?」
「あの、先に行かれますか? シエンナ近衛兵長は、我々には無理ですがカイ殿達であれば問題ないと言っていましたので・・」
先導してくれた近衛兵は、階段横にある壁を押すとズズッと隠し扉のような壁の一部が動き、できたスペースに入り込む。
「先に行くにゃ!」
「我もなのだ!」
「おい! シマチ、ユキナ!?」
不意に両肩に軽い重みを2回ほどトントンッと感じ見上げると、シマチとユキナの2人が頭上を飛び越え階段を簡単に上がって行く。
「カイ〜先に行ってるにゃ〜」
「シマチ、待つのだ! 我も行くぞ〜」
危なげなく2人は階段を素早く駆け上がって行き姿が見えなくなり、しばらく聞こえていた楽しげな声と足音は聞こえなくなった。
「カイ、あの2人は絶対に迷子になるわよ?」
「サーシャ、俺もそう思うよ。俺達が何処に行くかも知らずに先に行きやがって・・帰ってきたらお仕置きだな」
「そうね。その役目は、私に任せなさい。あと、しかたないから私が2人の気配を追っておくわ」
「あぁ」
先に行った2人の後を追うような形で壁のような階段をゆっくり上がって行くと、途中に分かれ道があり下で待っている近衛兵が右の方へ行くよう指示して来たためそのまま右の階段を上がって行くと、その先は壁で行き止まりだった。
「あれ? 兵士さん! 行き止まりなんですけどー!?」
「カイ殿! その壁は隠し扉となっています! 強く一気に押したら動きます! どうぞ、全力で思い切ってどうぞー!!」
「マジかよ・・」
行くてを阻む壁が隠し扉のようで、壁をじっくり見ていると人が通れそうな大きさの四角い切れ込みが薄らと見えたことで確信していると、後ろにいるサーシャが笑顔で急かしてくる。
「カイ、今よ! 早くしなさい・・思いっきり全力でやりなさい。下に落ちそうになっても、この私が支えてあげるわ」
「・・・・」
サーシャがなんか笑っているような気がするのが気になるけど、俺はそのまま膝を曲げ足場を決めて両手を押しやすい幅で壁に当てて全力で立ち上がるよう押し上げた。
「うぉりゃ!!」
「ぬぉっ!!」
それなりに重みを両腕に感じるも押し上げることに聖子した俺の頭上に近衛兵とは違う男の声が聞こえ、ガタンッと倒れる音が聞こえたような気がしたことより、目の前に誰かが座っている白く細い脚が見える。
「・・・・足? 何だここは」
「兄様。イタズラ好きなんですね?」
「シエンナ?」
目の前の足が気になっていた俺は、背後から不意に妹のシエンナの声が聞こえ振り向くと近衛兵長の装備を纏ったシエンナが笑顔で右手を差し伸べている姿があった。
「兄様、そんな驚いた顔をしたままでも良いので、私の手にお掴まりください」
「・・すまん」
シエンナの小さく柔らかい手を握るとスッと引き上げられた後に抱き締められる。
「シエンナ?」
「兄様、お待ちしておりました」
「どういうこと?」
部屋を見渡すとどうやらここは、国王陛下達と昨日話した部屋だということに気付くと、近くで何者かが立ち上がり耳障りな声を発する。
「誰だ! この俺を・・ってお前!、なぜカイがここにいる?」
急に騎士団長ジーニスが俺に詰め寄って来るも事情を掴めず動けない俺を庇うように、サッとシエンナが手を伸ばしジーニスを牽制する。
「騎士団長、静かに・・国王陛下の前です」
「くっ・・」
ジーニスはギロッと俺に向けていた視線をシエンナに向けた後に、小さく舌打ちをして俺を睨みながら息を吐き出し倒れたままの椅子の横にある椅子に不満そうな顔で座る。
「はっはっはっ! カイよ、そこは王族の避難経路の一つだぞ? なぜ知っておる?」
「はい?」
「陛下、兄様は特別です」
「へっ? シエンナ?」
「むむ? 近衛兵長、王族の秘匿経路を私用に使うのは、流石に罰を与えるべき案件なのだが・・・・」
「はっ! その重大なミスに罰を・・責任を取り私は喜んで近衛兵長の職を辞して、妹として兄様に付き添います。今までお世話になりました国王陛下・・」
「・・シエンナ近衛兵長、笑顔が滲み出ているぞ? 本気で罰を受ける覚悟があるのか? いや、待って・・お願いします。ここで鎧を脱がないでください」
国王陛下のさっきまで満ち溢れていた威厳が無惨にも無くなり、一兵卒でもある近衛兵長に今ここで辞職しないでと懇願する姿が情けなく見える。
そんな国王陛下の心が折れそうなところに隣りに座っていた、第1王女アンジェリカが席を立ちこの流れに乗ってきた。
「シエンナ近衛兵長、落ち着きなさい。お父様。彼女に王族の秘匿経路を教えたのは、この私です! その重大な情報漏洩の責任は第1王女のアンジェリカにあります。なので、この私から第1王女を剥奪し王族を永久追放をしてください! そのまま私は、流浪の民となり・・涙を飲んでカイの庇護下に入りますわ!」
「うむ、まぁなんだ・・待つのだ2人とも。その責任を取る者として反省する顔を微塵もしておらんぞ?」
「「 そんなことは、一切ありません陛下!! 」」
「えーどう見ても、喜んでる顔ではないか・・」
必死に否定する2人と困惑する国王陛下を眺めていると、ポツンと座るジーニスは顔を逸らしたまま存在感を消していた。
しばらく国王陛下とシエンナそして第1王女のアンの中身の無い話し合いが続いて行く中で、急に部屋のドアが強くノックされ開けられると、近衛兵の1人が緊張した面持ちで口を開く。
「緊急です! 第3監視壕からの報告で、王都に近付く帝国兵らしき集団を発見したとのことです!」
急な事態に皆が驚いていると、国王陛下だけは冷静に応える。
「落ち着きたまえ。まずは、集めた情報の詳細を話すがよい」
「はっ!」
落ち着きを取り戻した近衛兵にシエンナとガリア宰相が歩み寄り2人で彼の話を聞いていて、情報を精査しているようだ。
「陛下、やはり勇者が率いる帝国兵部隊のようですな」
近衛兵から聞いた内容をガリア宰相が伝えると、国王陛下は何か考えているようだ。
「規模は500程度・・前衛部隊と考えられますが、後方に主力部隊が見えないため、その前衛部隊が主力部隊なのでしょう」
「そうか・・思っていたより早く来たようだな」
「残念ながらそのようです・・陛下、ご命令を」
ガリア宰相の言葉を聞いた陛下は、方針が決まったようだ。
「・・騎士団長ジーニス。待機させている騎士団を率いて作戦通り行動を開始せよ」
「はっ! ただちに!」
空気と化していたジーニスは、存在感を取り戻し慌ただしく部屋を出て行く。
「シエンナ近衛兵長は、城内の警備レベルを厳戒態勢に移行せよ」
「御意・・」
シエンナも柔らかい表情からキリッとした近衛兵長らしい真剣な表情へと変わり颯爽と部屋を出ていく。
この部屋に残っている陛下とガリア宰相そして俺達残り、この後の動きは何だろうなと考えていると途中から何処かへ行っていたシマチとユキナの2人が戻って来たのだった・・・・。
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次話は、月曜朝に投稿します。




