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彼女は俺のことを憶えてないようですが、殿の役目は果たします

アクセスありがとうございます。


 帝国兵に追い詰められピンチに陥ったところで増援の騎士団に助けられた翌日に、逆襲作戦の報酬の良さに負けてミユキと参加することになり、早朝叩き起こされ眠たさ全開の中で騎士に集められ説明を待つ。


「ん? あの騎士は・・」



「冒険者諸君!! ここからは、時間との勝負であり速さを追求するため速やかに馬車に乗り移動する。詳細は、移動中に同乗する騎士から聞いてくれ! 以上、解散し直ちに出発!!」


 まだ俺の存在に気が付いていない副団長アリアからのザックリとした説明が終わると、まるで冒険者の俺達も騎士団の一員のような扱いで・・・・やはり、要職の連中は冒険者も駒扱いだなと感じながら指定された馬車へと乗り込み出発する。



 荷台には騎士と冒険者パーティーの混成で20人程が押し込まれるように座るも、ただ1人ゆったりと座る偉そうな男騎士がこれからの行動を口にした。


「いいか! 馬車が止まったら、何も考えず素早く降りて俺に続け! 冒険者は降りた後は俺の背中を見失うことなく必死に追うんだ! そして、俺より前に出るな! 俺より目立つな!!」


 その口ぶりに従順なのは部下の騎士だけで、冒険者達は一同舌打ちを浴びせていたところで馬車の速度は落ちて止まる。


「降りろ!!」


 指示を出す騎士は馬車が止まる直前に飛び降り、乗っている俺達を急かし走り出す。


「行くぞ!!」


 パーティー仲間を連れ出すようにそれぞれのリーダー達が気合を入れるように声を出し飛び出して行く姿を見送り出遅れた俺は、最後尾でゆっくり降りると周りの勢いに巻き込まれ先に降りていたミユキが俺を待っていた。


 先に走る冒険者パーティー達の背中を追いかけ、さらにその先では王国騎士の奇襲に対応が遅れ必死に抵抗するも数に押し切られ逃げ惑う帝国兵を逃さないよう騎兵隊が走り抜け小さくなっていく姿を見送りながら、帝国兵が野営していた場所に隠れ潜んでいる者がいないかミユキと探す。


 騎士達が敗走する帝国兵を追いかけ、俺達冒険者が残存兵を探している頃に後続の別働隊なのかわからないが新たに騎兵隊がやって来た。


「冒険者達は、ここに集まってくれ!」


 周囲に散らばっている冒険者に集まるよう呼びかけたのは、唯一俺の素性を知るニードルだった。彼は偶然遠すぎない距離にいた俺を見つけるとニヤリと見せる顔に苦笑いで応えながら近づくことなくこの場で見守ることにした。


「冒険者の皆さん、お集まりありがとうございます。ここは、すでに帝国領地だということをくれぐれもお忘れないよう忠告します。そして今、騎士団は仲間の無念を晴らすべく敗走する帝国兵を順調に殲滅しているところ・・・・」


 集まった冒険者を見渡しながら馬上で喋っていたニードルの口が止まり、あの柔らかい表情が一瞬で固まり険しくなった・・その彼のうごかない視線は何かを凝視しているようだ。


 ニードルの異変に集まっていた冒険者と俺は理解できず、ただ彼を見つめていると空気を震わせるほどの激しい衝撃に突然襲われ、隣りにいたミユキの悲鳴で俺は彼女を抱き寄せ身構えた直後に大爆発音が響き渡った。


 その衝撃に騎士団の馬はパニックになり騎士達は落馬し、周囲の騎士が暴れる馬を落ち着かせようと必死になっている状況に対して冒険者パーティーの対応は早く、迫り来る脅威に対応するため一ヶ所に集まっていた冒険者は分散し全滅を避けるよう行動していた。


「ね、ねぇ・・何が起きてるの?」


「知らん・・けど、王国側にとって良くない事が起きているな」


「に、逃げようよ・・」


「逃げる? ミユキは逃げない方が、帝国に帰れるぞ? あのふざけた威力の爆発は、きっと知り合いの子だろうし」


「・・・・・・」


 ミユキは何故か黙り込んだままで否定も肯定もしなかったため、それ以上俺は何も言わずにまだ固まっているニードルの元へと駆け寄った。


「ニードル! いつまでバグってんだ! 早く退くぞ!?」


「・・・・ま、待て。まだ攻め込んだ仲間が戻って来ていない」


「バカか!? あの爆発じゃ、誰も生き残ってねーよ!」


 爆発の威力が直視できなくても、空に舞い上がる黒煙の高さにあの衝撃を間近で直接受け生き残れる騎士はいないだろう。


 予備隊の俺のような騎士なら迷わず置き去りにするくせに、通常部隊の騎士はなんとしても連れ帰る気概に俺は鼻で笑いながらニードルの反応を待つ。


「ここで・・ここで、防衛布陣を取り後退する仲間と共に撤退! 冒険者は騎士の支援をしろ!」


(・・あぁ、コイツも根は騎士だったな)


 王国の民でもある冒険者パーティーを巻き込んで全滅ルートを選んだニードルに呆れ果て、何も言わないままミユキの元へと戻ると攻め込んで行った方向から、撤退命令を繰り返し告げる大声と悲鳴混じりの声が聞こえ始めた。


 直ちに撤退しろと叫ぶ声とボロボロの格好で歩き戻る騎士達に、数台の馬車が退却する騎士達の回収へと列をなして向かう。


 そんな騎士団の無謀で自殺行為の光景に呆気に取られている俺の前を横切る騎兵の姿に自然と視線が追うと、それは幼馴染で副団長アリアだった。


「アリア・・」


 副団長アリアは馬から華麗に飛び降りると、傷だらけの騎士を馬車の荷台に乗せる手伝いを続け3台目の馬車を見送り4台目の馬車に自力で乗れない騎士を部下と共に乗せている途中で追撃してきた帝国兵がアリア達を襲う。


 近くで帝国兵の襲撃を警戒していた騎士達が連携良く迎撃していくも、優勢だったのは最初だけで時間が経過していくほど数に押され始め劣勢となり防衛線が突破され乱戦状態となり、無防備で格好の的となる馬車は集中攻撃を受け乗っていた騎士達は全員殺され、救えなかった騎士達の名前を叫びながら副団長アリアは部下の女騎士と共に馬に乗り撤退する。


 そんな負け戦を他人事のように見ていた俺に早く逃げるよう冒険者の声が聞こえるも無反応でいると、ガシッと肩を掴まれたことで顔を向けるとニードルの真剣な表情で硬貨2枚を強引に手渡される。


「特別報酬白金貨だ! 予備隊の・・イービル隊生き残りのキミの力で助けてくれ! すまない!」


 そう言い残し、俺の返事を聞くことなくニードルは馬に乗り去って行った。


「はぁ・・・・仕方ないな。報酬もらっちまったし」


 そう呟きながら1人取り残されるような格好となる俺は、迫る帝国兵へと歩き向かうと最後尾で必死に逃げる騎士達と騎兵が俺に真っ直ぐ近づいて来たため、進路を譲るよう避けて顔を上げると馬に乗る副団長アリアと視線が重なる。


「何をしている!? 撤退だ! 急げ!!」


「・・悪いな、殿の仕事だ」


「なっ・・・・」


 すれ違いざまに小声で呟くも、アリアの瞳には逃げ遅れた冒険者の1人にしか見えていないだろうと察し、少し胸が痛かった・・久しぶりに交わした言葉が他人行儀・・・まぁ、そんなもんかと思いながら止めていた足を動かしながら吐き捨てるように呟いた。


「もう、俺は忘れられた存在だったか・・・・」


 騎士養成学園で彼女から別れを言われた言葉を思い出し、あの距離でも俺に気付いてくれなかった寂しさを感じ、もうアリアにとって俺は関係ないのだと心に想い背負う愛剣をゆっくり抜き刀身を右肩に乗せて余裕ぶる姿勢は、殿をする時にだけ見せる俺の決め事だ。


 そんな絶望的な数の帝国兵をたった1人で迎え撃つまでの僅かに時間に背後から感じている視線に気づくもきっとミユキだろうと思い振り返ることなく、予備隊の頃に殿として感じていた迫る死の恐怖が懐かしくニヤけていることに自覚は無く、若い帝国兵達が俺を囲んでいくのだった・・・・。


次回は、幕間を投稿します。

視点は、幼馴染達で時系列的に少し過去に遡ります。


感想&評価ありがとうございます。

ブクマ100目指し頑張ります。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 殿の際に余裕ぶる決め事があることにグッときた。 しかし公爵の長男坊なのにえらく泥臭く波乱万丈な事になってますな。
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