騎士団御用達の携行食の好き嫌いは、ハッキリ分かれるようです
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「寝るだけならこんなもんか?」
廃屋の一室で強引に広げた天幕を見ながら呟くと、一緒に作業をした2人にツッコまれる。
「カイ兄ちゃん、まさか本気でコレを広げるなんて思わなかったよ」
「シマチもそう思うにゃ・・変なカイにゃよ」
「そうか? 土砂降りの中で設営も嫌だろ? でもまぁ、部屋にこのサイズの天幕はナシか・・今夜は寝るだけだから我慢してくれ」
雨の中の天幕設営に良い思い出がない俺は、ぬかるんだ場所で設営すると自分達の足で荒らし、泥だらけの場所で寝る劣悪な環境よりはと思い、サーシャ達がいる隣りの部屋へと戻った。
「今日は、奥の部屋で一晩過ごそう」
降り止まない雨の中に再び出る気がない皆の意見が一致し、サーシャが勇者クンと共に王都へ向かう魔法士ちゃんの探知魔法圏外なのを確認して最終的にここで泊まることが決定した。
それぞれ何もすることがない時間を過ごし暗い夜を迎える前に、夕食の支度をしようとするも俺を含め誰もやる気がでないことを理由に、久しぶりにマジックポーチに長く眠っている騎士団御用達の携行食を笑顔で配った。
「カイ兄ちゃん、まだ持ってたの?」
「・・ルミナ、意外と役に立つぞ? この歯が折れそうな携行食は・・・・」
「私、もう二度と見ないと思っていました」
「幹部様が食べる食い物じゃないよな? 俺ら一般兵には普通に配布されている食い物だぞ?」
「「 ・・・・ 」」
ルミナとネルルの2人は、見上げ俺を見ていた視線を手に持つ携行食へと落とし複雑な表情のまま黙り込んでしまう。
「・・主よ、おかわりを所望する」
「ユキナ、まだあるぞ」
「はやく欲しいのだ」
パクッと一つを口にの中に放り込みゴリゴリと噛み砕く音を鳴らしながら食べるユキナが、おかわりを所望したため嬉しくなり最初に渡した数と同じ分を手渡すと、嬉しそうにモグモグしながら元の場所へと戻り座る。
「シマチもにゃ」
「あいよ」
シマチもユキナと同じ数の携行食を手渡し、座りながら犬歯を見せ食べる姿を俺は見ながら空腹を満たすため歯を折らないよう慎重に食べていると、1人不満を零す声が聞こえた。
「・・・・無理よ。バカみたいに固いじゃない。コレが本当に食べ物? 人族は血迷って石ころをたべているのかしら」
サーシャにとって騎士団の携行食はどうやら食べ物と認めたくないようで、何度か噛み砕こうと挑戦するも諦めパッと口を開けて包み紙に戻す。
「サーシャ、無理そう?」
「もう無理よ・・今夜は水だけにして先に寝るわ」
1人立ち上がり奥の部屋へと行くサーシャを見送った後に、彼女だけ携行食が食べれないことに少し微妙な空気になったため、俺は食べるのを途中でやめてサーシャの元へとむかう」
「・・・・サーシャ?」
天幕の入り口の幕を捲り中に入ると、サーシャは自分で持っているコップに水を入れてそれを飲んでいた。
「・・どうしたの?」
「ゴメンな・・こっちなら、食べれると思うから」
騎士団時代に数回だけ支給される貴重な携行食だったため、マジックポーチの中にある数少ない携行食の一つであるソレをサーシャに袋ごと手渡す。
「コレは何かしら?」
「携行食だよ」
「・・さっきのと違う袋だけど、コレも固いの?」
「コレは特別なやつ」
「いいのかしら? 私がもらっても」
「もちろんさ。サーシャだからこそだよ・・皆の前じゃ、ちょっとね?」
「私にだけ特別?」
「あぁ、特別だ」
「そう・・ふぅ〜ん・・特別なのね」
手に持つコップを足元に置いてから差し出した携行食を手にするサーシャは、少し嬉しそうな表情に戻り中身を見ると、眉間にシワが寄ってしまった。
「これは、なにかしら?」
「俺用の即応チャージ飯だよ」
「・・ねぇ、カイ」
「なんだ?」
「あなた、本気で言っているの? どう見ても、スライムよ?」
初見でスライムと間違われても仕方無いほど、スライムにしか見えないその食べ物を俺は知っているから否定はしない。
「まぁスライムに見えるよな? でもちゃんと植物から作ったやつらしいから、安心して食べてみてよ」
「カイ・・」
袋の中身と俺の顔を疑惑の感情を含んだ碧眼で何度も往復してみるサーシャの肩に触れ、笑顔で諭すも信じてくれなさそうなため右手の人差し指を袋の中に入れ、少し緑色のドロッとしたものを付けたのを見せてからパクッと咥えて見せた。
「うん、甘いな・・・・コレは、リンゴ味だ」
「ほ、本当に?」
「ホントだよ」
俺が先に食べたことに覚悟を決めたのか、サーシャは袋の開け口を大きく開き口に付けながら恐る恐る少量を口に含みコクリと飲んでくれた。
「どうだ? 不味くないだろ?」
予想外の味だったのか目を閉じると一気に喉へと流し込み、プハッと一息吐き出す。
「甘くて、美味しいわ」
「だろ? 俺のお気に入りの味だからな」
「カイが好きな味なのね・・・・私も一緒よ」
中身を全部飲み干したサーシャの横で寝転ぶ俺と、彼女はなぜか頭を無言で撫でてくれたあとにスッと優しく膝枕をしてくれる。
「カイ、みんなのところに戻らなくていいの?」
「ん? みんなも寝る時はここに来るから戻らないよ」
サーシャは笑顔で何も言わずただ頭を優しく撫でてくれる中で、ひんやりと冷たい彼女の足が心地良くいつの間にか俺は寝てしまっていたのだった・・・・。
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