第94話 ひかりの未来
ひかりはアイドルを卒業してすぐ、アメリカへストリートダンスの武者修行に行く。
あかりたちとも連絡を取っていて、アメリカで加奈子の目撃情報があった時は真っ先に声をかけようとしたが見失ってしまう。
それでもまだ声をかけるには早いかなと自己判断したひかりはダンスの方に集中する。
そのひかりは今、大事なストリートダンスの大会に出ていた。
「ひかり、今日はもうそのくらいにしておいて。あんまり追い込むと本番でバテるよ?」
「うっす!」
「あの子、飛び入り入団なのに凄い努力家だね」
「さすがミューズナイツだよ。私がアイドル時代にあの子に負けたんだよね」
「努力家なのは昔からってとこかしら?」
「まぁおかげで…全米ストリートダンス大会に出れるんだけどね!」
「私、やっぱりもう少し残るよ。ストレッチを手伝うよ」
「私も残る!」
「ひかりに感化されちゃったね…。私も残ろうかな」
「お?お前らも残るのか?」
「まぁね。ひかりの頑張る姿にちょっとね」
「ひかりが入ってからこのグループも活気づいてきたからね」
「日本には戻らないの?」
「うーん、戻りたいとは思うけど…やっぱり戻るにはまだ早いかなって思うんだ。まだこのグループで全米トップになってねぇしな。トップになったら日本に戻るって決めてたからな。トップになれなかったら絶対に帰らねぇってな」
「おお…!」
「ならこのグループのGalaxy angelのエースとして引っ張ってね!」
「もちろんだ!」
「さぁストレッチはここまでよ!あんまり遅いと他のグループに迷惑だからね!」
「おう、もうこんな時間か!じゃあこのくらいにしとくか!」
「一緒にハンバーガー食べに行こうよ!」
「っしゃあ!レッスン後のハンバーガーは最高だぜ!」
ひかりはアメリカでいつも二位に落ち着いてしまっているGalaxy angelの起爆剤として飛び入り入団したが、そのメンバーの中には中学時代に武者修行を共にしたメンバーも何人かいた。
自慢のポニーテールも健在で、かつての仲間たちはひかりの入団を誰よりも喜んだ。
実際にひかりは過去にストリートダンスで全米ナンバーワンに輝いた実績もあり、今回も期待されている。
だが今回はあの時のようなソロと違ってグループとなる。
上手く協調していくのがポイントとなるだろう。
大会当日になり、ひかりは会場の懐かしさに興奮していた。
「うひょー!中学の時はジュニアだったけど、この景色はやっぱり変わんねぇなー!」
「ひかりにとっては懐かしいかな?」
「中学の時にここで優勝したんだもんね!」
「ああ。だが今回はお前らと一緒だし、オレもお前らの足を引っ張らないようにしないとな」
「ひかりの足を引っ張るかもしれないけど頑張るね」
「バカ野郎、このGalaxy angelに足手まといなんかオレは知らねぇぞ?ここにいる全員がエースなんだからよ」
「ひかり…!」
「あっ!優勝候補のBall girlsだ!」
「あいつらが十連覇のストリートダンスグループか…面白ぇ!」
このBall girlはアメフトボールとバスケットボールを自在に操るストリートダンスグループで、男子顔負けのパフォーマンスをしてくる。
しかも最近は野球ボールを自在に操る子が入団してきて、さらに戦力を強化してきた。
ひかりはあまりの興奮に念入りにストレッチしていた。
そして…
「さぁアメリカンガールズ!今回も始まりましたガールズストリートダンス選手権!今回の優勝候補はBall girlとGalaxy angelです!Galaxy angelが悲願の初優勝を飾るか!?それとも前代未聞のBall girlの十一連覇か!?いざ開幕です!」
「ヤバい、緊張してきたよ…!」
「ここまで来たのにプレッシャーが…!」
「何を怯えてんだよ。オレたちはあんなにキツいレッスンを乗り越えてここまで来たんじゃねぇか。後は自分を信じてやりきるだけなんだよ。ほら楽屋で衣装に着替えっぞ!」
「おお…!ひかりはやっぱり強いなぁ…!」
「そうだね。せっかく頑張ったんだから本番はしっかり頑張んないとね!でも肩の力を入れすぎたら逆に失敗するもんね!ありがとうひかり、楽屋で衣装に着替えて準備するね!」
「おう!オレはトイレに行くから先に行ってくれ!」
「うん!」
(大丈夫…大丈夫…!)
ひかりはアイドル時代は無鉄砲で何でも勢いに任せ、困難を突破してきた心の持ち主だ。
だが大人になって、たくさんの挫折もあり少しだけ心が大人になったひかりは、今まで感じなかったプレッシャーを感じるようになっていた。
ひかりは自分が引っ張っていかないと、というプレッシャーに呑まれてしまい、トイレで一人震えていた。
顔を洗って緊張をほぐそうとするも、まだ体の震えが止まらず声もブレていた。
強がってトイレに出ようとすると、グループの仲間全員がひかりを待っていた。
「ひかり!やっぱりここにいたよ」
「お前ら…先に着替えてろって言っただろ?」
「うーん…やっぱりひかりでも緊張するんだね」
「は?オレが…?そんなわけねぇだろ!」
「私たちはひかりの強さに引っ張られていると思ってた。でも違った…本当はひかりの強さに甘えて依存してたんだ」
「そんな中でひかりは一人で私たちを引っ張って頑張ってきた。でも前にトップになるまで戻らないって話をしていた時に声が震えてた。気付いていたのにひかりに頼りすぎて…私たちは何もしなかった」
「だから今度は…私たちもひかりのために頑張るよ!ひかりもさ、私たちを頼っていいんだよ!」
「ひかり!あなたはこのグループのエースであり、最高の仲間だから一緒にトップになろう!」
「お前ら…。バカ野郎…こんなに泣かせることを言いやがって…!これじゃあトップになっても日本に帰りづれぇじゃねぇか…!なぁ、約束してくれ!この大会でトップになったらさ、拠点を日本に…」
「いいの!?本当に!?やったー!」
「は…?」
「私たちは元から日本に住みたいって思ってたの!」
「着物を衣装ベースにしたダンス衣装を着てみたかったんだ!」
「よーし!ひかりと一緒に日本に凱旋するために優勝するよ!」
「Go! Galaxy!」
「お前ら…サンキュー!っしゃあ行くぞ!」
「Yes!」
Galaxy angelの番が訪れてひかりを先頭にステージに上がる。
今回のダンス曲のテーマは…日本の和楽器とアメリカのヒップホップを融合したミックスカルチャーだ。
日米の絆をここでアピールしてひかりを先頭にしながらアドリブで仲間たちも前に出て踊る。
するとBall girlのメンバーたちは、この子たちの絆には私たちじゃ勝てないと悟ったのか、次の番で珍しいミスを犯してしまった。
エースのベッキー・アリトリアがバスケットボールのドリブルをミスしてしまったのだ。
優勝候補の珍しいミスに会場はざわめき、審査員もあまりの出来事に驚いていた。
結果は…
「優勝は…Galaxy angelです!」
「やった…やったー!」
「ひかりー!あなたのおかげよー!」
「マジか…!うっ、うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
ひかりは大きな雄叫びを上げて盛大に喜び、メンバー全員と強く抱き合った。
あまりの嬉しさにキャプテンのエレン・マッケンジーは号泣していて、ひかりに背中を押されて表彰式に参加した。
大会終了後にいつものハンバーガー屋さんで食事をして優勝祝賀会を開いた。
そんな時だった…
「あ?急にメッセージとか誰だよ。えーっと…久しぶりだね。突然だけど今年の大晦日に渋谷駅のハチ公前に集まってほしいので、仕事をオフにして時間を空けておいてください。秋山加奈子より。って、はぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「どうしたの急に!?」
「いやこれ見てくれよ!」
「なーに?…えっ!?あの秋山加奈子が連絡!?」
「あの子って生存は確認されても行方不明だって聞いたけど本当に生きてたの!?」
「マジかよ!?」
「ひかり!日本の大晦日に集合場所には絶対に行くべきよ!」
「お、おう!でも一応プロデューサーに聞いてみるわ。本人かどうかも確信持てねぇしな…」
ひかりは秋山プロデューサーにこの連絡の相談をした結果、これは間違いなく本人のアドレスだっていう情報を得た。
親子間でちゃんと連絡を取っていたのだから間違いはないだろうとひかりは考えた。
メンバーのみんなもひかりが集合場所に行くことに賛成して大晦日はレッスンもライブもなしにしようってなった。
つづく!




