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第8話 陰のアイドル

彼女の名は渡辺麻友美。


秋葉原アニメーター学院中等部の3年生だ。


彼女は普段から自信がなくオドオドとしていて引っ込み思案な性格だ。


それが理由でなかなか積極的になれなかったが、そんな自分を変えるべくコスプレをはじめてからネットアイドルとして名を売り、そしてリスナーの紹介によってオーディションに参加した女の子である。


そんな彼女にもまた新たな仕事が訪れたのだ。


「えっ…?私が声優ですか…?」


「そうだ。あの虹ヶ丘エンターテイメントに所属している大山奈緒さんが主演である日常アニメ、この素晴らしい世界に感謝をというアニメの声優をやってほしいとオファーがあってね。君にはその主人公の幼なじみで自分に自信がないけれど信念が強いキャラをやってもらうよ。渡辺さんはアニメが好きだったから悪い話ではないと思う」


「えっと…私でよければやらせてください…」


「わかった。それじゃあ次の日曜にアフレコがあるからよろしく。スタジオのアクセスはもうわかるかな?」


「あそこですね…。秋葉原アニメーター学院の近くにあるとこだったと思います…」


「そうだね。君にとっては地元だから迷わなくて済むと思う。頑張ってね」


「はい…」


こうして麻友美は秋葉原のスタジオにて新しいアニメのアフレコ収録が決まる。


麻友美にとっては初の声優で、普段はコスプレイヤーとしての活動で撮られることには慣れているが声を撮られるのははじめてで緊張のあまりに眠れなかった。


日曜になり麻友美は慣れ親しんだ秋葉原を少しだけ散策して、大好きなあんドーナツをつまんでからスタジオに向かう。


スタジオに着くと大山奈緒がもう既に到着していて、麻友美は少しだけ気まずくなってしまう。


「あの…おはようございます…!遅れて申し訳ありません…!」


「あなたが渡辺麻友美ちゃんね。はじめまして、同じ主演の大山奈緒です。でも謝る事はないわ。あなたが2人目だもの。他はまだ来てないみたいよ」


「そうなんですか…?」


「この街はいつも通り活気で溢れているわね。あなたにとっては地元だって秋山さんから聞いたわ。オタクの街も今やこんなに一般の人も来るようになってどうかしら?」


「あの…アニメやゲームが皆さんに知られてとても嬉しく思います…。オタクも最初は誰だって何も知らないところから始まりますから…」


「なるほどね…自信がない子だと聞いたけれど、アニメの事になると芯が強いのね。これは期待できそうね。あ、他のみんなも来たわ。中に入りましょう」


「はい…」


麻友美はたくさんの先輩に囲まれて緊張のあまりに深呼吸を繰り返し、自分は出来ると何度も暗示をかける。


アフレコ本番が始まると麻友美は持ち前の想像力で役を演じる。


麻友美が演じる浅野優香は主人公である萩原こまちの幼なじみで感謝部というこの世の出来事に感謝して日常を過ごし雑談をするという日常的な部活に新入生として入り、日頃の嬉しい事を発表するようになる。


大山奈緒演じる部長の滝沢アスミによってスカウトされて部に入部するシーンで一話を終え、エンディングのレコーディングに入る。


「すごい…麻友美ちゃんって歌が上手いんだ」


「そんな…大したことないですよ…。私なんてまだ歌ってみたで100万再生にいったことないですし…」


「それでも声量が少ないなりの歌い方をして自分をよく知ってるんだって感心しちゃった。あなたは将来いい声優になりそうね」


「ありがとうございます…」


アフレコ収録は成功に収め麻友美にとって大きな一歩を踏み出した。


収録終了記念に麻友美は共演者のみんなと秋葉原のメイド喫茶で昼食を取る事になる。


大手メイド喫茶である今川メイドリーミング系列のアキバメイドリーミングに入り、麻友美はメイド喫茶のメイド衣装に興味があるのか楽しそうに見つめる。


しかし…


「何が文化の街だ。俺にとってこんな夢みたいな街なんざぶっ壊しの対象だぜ。さぁて…夢にきらめくクソ野郎はどいつだ…?ほう…?」


「最近メイド喫茶もオワコンだよねー」


「お客さんも全然来ないしねー。この仕事も潮時かなー。せっかく大学に入ってアニメ制作の勉強が出来ると思ってたのに奨学金で返済しないといけないのになー…」


「あーわかるー。私もイラストの勉強のためにメイド喫茶という高時給バイトやってるのにねー。このままだと夢がかなわないのかなー…」


「夢見るお姫さまってやつか…面白い!八つ当たりさせてやろう!ダークネスパワーよ…くだらない幻想を捨て、この世界を未来なき世界に変えよ!」


「うっ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


~メイド喫茶~


「そういえばビラ配りのバイト二人帰ってこないね」


「まさかナンパに遭ったんじゃあ…」


「ちょっと見てくるね…」


「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「何!?」


「ば…化け物が二体現れたぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「化け物…まさかあかりさんたちが言ってた…!皆さん…早く避難しましょう…!」


「ええ!麻友美ちゃんの言うとおりね!」


麻友美たちはダークネスパワーによって魔物にされたバイトのメイド二人の出現によって避難する事になる。


ところがあまりの人込みに麻友美はみんなとはぐれてしまい、逃げ惑う人々に流されて魔物のところへ流されてしまった。


「これって…!それよりあの制服って確か…助けなきゃ…!」


「ユメ…カナワナイ…!」


「オカネ…カエセナイ…!」


「あのっ…!大丈夫ですか…!?目を覚ましてください…!」


「目は覚めねぇよ。」


「え…?目が覚めないってどういうことですか…?」


「そいつらは自分の哀れな夢が叶わねぇかもしれないという感情が溢れ出してこの世の理不尽さに対抗するために暴れ回ってるのさ。俺はアクムーン帝国三銃士のディストラだ」


「アクムーン帝国って…最近現れるようになった夢を否定する異世界の…!」


「お前…随分俺にとって気に入らない目をしているな…。ネガティブなくせに夢に向かってまっすぐなムカつく目だ…。お前の夢も叶わなくなるようにぶっ壊してやるぜ。死ねぇっ!」


「きゃあぁっ!」


「なんとも弱いやつだな…。それでよく夢を叶えようと真っ直ぐな目をしているぜ。本当に人間って…くだらない感情を持っているようだな」


「どうして…?どうしてあなたは…人間の夢や感情を否定するのですか…?」


「あ?」


「どうしてあなたは…他人の夢を嘲笑い…苦しい感情を利用して暴力で解決させようとするのですか…?そんなに他人の夢がくだらないですか…?あなたにとって夢とは余計なものなのですか…?私はそうは思いません…。人には感情があるから前に進むことが出来ますし…自分の叶えたい夢のために…辛い事も乗り越える事も出来るんです…。あなたのような人の努力を否定する人に…私は負けません!」


弱いなりに強い気持ちで立ち向かうと美しいオルガンの音色と美しい混声合唱の声が聴こえる。


麻友美の手元にはバイオレットのサイリウムが現れ、後から駆けつけたあかりが麻友美に大声でこう叫んだ。


「麻友美ちゃん!そのサイリウムを3回振って変身して!呪文はもうインプットされているはずだから!」


「は、はい…!ミューズナイツ!レッツミュージック!」


「HEY!HEY!HEY!」


麻友美は言われた通りに呪文を唱えると、首元に白い布がつけられたバイオレットと前部だけロイヤルパープルの折襟軍服になり、肩には銀色のエポーレットがつけられていた。


スカートもバイオレット色になり、黒銀の大鎌が手元に現れて晴れてミューズの騎士となった。


麻友美はふと浮かんだフレーズで名乗り始める。


「支えるは心のベース!渡辺麻友美!あなたたちの夢を…守ります!」


つづく!

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